J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年08月号

覆面座談会ベテラン中堅のホンネ ベテラン中堅社員こそ組織を変えるドライバー

若手と管理職の間に位置し、仕事では最前線を張る「ベテラン中堅層」。彼らはいかに仕事のモチベーションを見出し、会社に対してどのようなことを考えているのか。業種も経験も異なる3人のベテラン中堅の“ホンネ”から浮かび上がってきたのは、自ら役割を認識し、自らやりがいを生み出しながら、現場第一線で励む姿だった。


A氏(44歳、男性)
昇降設備等メーカー技術部門主任。現場業務を経て、現在は採用・研修企画を担当。


B氏(35歳、男性)
大手スーパーの本部で、バイヤーの後方支援としてマーケティング、企画などを行う。


C氏(35歳、男性)
中堅印刷会社の営業部門勤務。最近昇格試験を受け、主任に昇格。
司会:加藤宏未(36歳)
日本能率協会マネジメントセンター研修ラーニング事業本部
研修コンサルティング部
シニアHRMコンサルタント

取材・文・写真/石原野恵

大震災で再認識した自分の仕事の意味

―普段皆さんは何にモチベーションを感じて仕事をしていますか?

A氏

3月11日の東日本大震災発生以降、何にやりがいを感じるか、つまり“成果”の捉え方が変わってきているように感じます。震災の時に、ある高層ホテルに入れている自社製品のエレベーターが止まってしまって、夜中に復旧したのですが、その時、宿泊客の方から拍手が上がったんです。その光景を見て感動した。普段当たり前に思っていた仕事が、こんなにも必要とされているんだと、疲れも一気に吹っ飛びました。改めて仕事への誇りを感じました。

B氏

私も震災前は、売上向上にやりがいを感じるというか、営業的な感覚が強かった。でも震災後、当社の運営する店舗に十分な商品があるという「当たり前」を維持し、生活している方に必要な物資を妥当な価格で届けるということが私たちの使命なんだと強く意識しました。

―会社だから、市場で勝つことは大前提。でもそれ以外の社会的な役割があったのだと震災で改めて気づいたということですね。

A氏

当社はインフラにかかわる業種なので、目に見える成果は突出しにくいと思います。でも震災が起きて、「当たり前」を保つことがいかに難しいのかとつくづく感じました。日常業務こそ、もっと成果として認められるべきなのではないかと感じています。

B氏

震災は、普段意識していなかった他部署や協力会社さんとのつながりを再認識する機会でもありました。一心同体になってライフラインを支えているという実感が強まった。全然関係ないと思っていた人と、共通の目標に向かって動いている感覚は、モチベーションになりますね。

C氏

私の場合、営業としてチームではなく個人で動くことのほうが多いですが、だからこそスタッフや関係者とネットワークをつくることが肝心。人や情報をうまく“使う”方法を自分で考えて、仕事を動かす時が快感です。だから後輩にも、関係者にはメールではなくてできるだけ足を運んで顔を出してこいといっています。特に相手が年配の上司だと、立ち話を1分するだけでも仕事の流れが変わることがありますから。

―部下指導の機会は多いですか?

C氏

そうですね。先日、初めて昇格試験を受けて「主任」という肩書がついて、教える機会は多少増えたという印象を持っています。

ただ、昇格以前から自分は後輩にはいろいろ教えてやりたいと思って接してきました。教えるというと偉そうですけど、積極的に話しかけてコミュニケーションをとる。教えることで自分が気づくこともありますし、将来的には、後輩とのネットワークが自分の仕事に活きるはず。打算的にやっているわけではないですけど、後輩指導も自分の役割だと思っています。―地震が起きた時には、社会に役立ちたいと思う。後輩ができれば指導する。こうしたそれぞれの役割認識から生じるモチベーションは大切ですね。

自分で動機づけをするベテラン中堅たち

A氏

ただ、自分がやりがいを感じていることに対して会社側からあまり評価してもらえず、歯がゆい思いをすることもしばしばあります。

私は5年前から技術系新入社員の採用と教育の「支援」をしています。前任者がたまたま異動になり希望しましたがこれが大変。「支援」という立場ですが、広報の作成から説明会実施など、これって絶対に「メイン」じゃないかと(笑)。でもあくまでも「支援」なので、注力し過ぎても評価されません。もともと採用は数値評価が難しい仕事。実際、私自身の査定評価は最近下がりました。それでモチベーションもガクっと下がってしまった。自分にとっては大きな気づきもあり、克服したいとは思っているのですが、会社としては、評価基準をもっと考えるべきとも思います。

B氏

私もバックヤード的な立場なので、数値での評価はあまり重視されません。どうしても相対評価になってしまうので、難しいところですね。仲間の評価が下がればいいと思っているわけではありませんし。

C氏

その点、営業は数字でしか判断されないので、ある意味評価基準は明確です。早く帰っても数字が良ければ評価されますし、いくら頑張っても数字なしには評価されない。

主任の査定項目には、後輩指導や他部署との連携といった項目もありますけど、評価指標としてのウエイトは低いのではないでしょうか。後輩が優秀になったからといって、自分の評価は上がらないですし。

―管理職ポストの数が抑制される中で、管理者が1人で把握できる部下の人数は限られますから、ベテラン中堅層がフォロワーシップを発揮して、一人ひとり部下育成を頑張る必要がありますよね。だけど、それは評価の対象にならないというジレンマがある。

C氏

個人的には、後輩指導は趣味みたいものですからいいんですけど(笑)。会社に評価してもらえなくても、将来後輩たちが評価してくれるものだと思っているので。

―その「教えよう」というモチベーションの源泉は何でしょう?

C氏

自分が新人の時にOJTで指導してくれた上司の影響が大きいですね。自分は新卒で大して勉強もしていないし、失礼なこともいっぱいあったと思うのですが、ちゃんと指導してくれた。その経験が今の仕事に活きているので、後輩にも教えてやりたいという気持ちがあります。

危機感が薄い上司とITが当たり前の新人

C氏

今の会社には若手を育てる能力がないんじゃないかとさえ思っているんです。私が入社した頃はいろいろ教えてくれる人がいましたが、その下の世代の人たちが管理職になった今、積極的に若手にかかわろうという人が少ないように感じています。この層はバブル崩壊前の好景気に、黙っていても業績が上がる状態を経験しているので、自分だけでも仕事が完結してしまうと考えているのかもしれません。

研修もうまく機能していないように感じます。当社では入社後1カ月間の新入社員研修があるんですが、育成のビジョンが、現場までは伝わってきていないんですよ。なので、自己流にやっているのが現状です。

―では、研修や人事施策ではどのようなものが有効だと思いますか?

A氏

対話会をやろうと提案したこともありましたが、実現しませんでしたね。目に見えて組織が荒れているというわけではありませんが、管理職の危機感は薄いと思います。

C氏

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