J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年08月号

Column① 生き生き働く社員と元気をなくす社員の違い ― ベテラン中堅社員のキモチ ―

後輩を指導しつつ、自分の仕事を抱え、管理職の上司を支えながら毎日の仕事に励む「ベテラン中堅社員」。結婚、出産、育児、親の介護といったライフイベントが多い世代でもある。ベテラン中堅社員を取り巻く状況や悩みについて、企業・組織内で彼らの多くをカウンセリングしてきたメンタルヘルスの専門家、産業医の


吉野 聡(よしの・さとし)氏
1978年、神奈川県生まれ、2007年筑波大学大学院博士課程修了。博士(医学)、精神保健指定医。東京都庁の産業医として休業労働者の職場復帰支援に携わった後、民間病院でうつ病患者の職場復帰支援プログラムを創設。現在、筑波大学附属学校教育局の産業医を務める傍ら、各企業・団体でも予防的メンタルヘルス活動を行っている。

取材・文・写真/石原野恵

ベテラン中堅の働きぶりを左右する「SOC」

「ベテラン中堅」といわれる30代後半から40代前半の世代の特徴を一言で表すと、非常に個人差が激しい世代だということができます。

たとえば若手や新人は、程度の差はあれど皆それなりにやる気がある。しかしベテラン中堅世代ともなると、生き生きと仕事をしている人とそうでない人の差が激しいのです。

ベテラン中堅は、仕事を任されることも多く、その分責任も増えます。後輩を指導する傍ら、自分の仕事を抱え、さらに部下として立ち回ることも求められます。それゆえにプレッシャーも大きく、メンタル不全(心の病)になってしまう人も少なくありません。「管理職にはなりたくない」「仕事量が多すぎる」……こういった声を聞くことも多々あります。

その一方で、どんなに仕事が多くても、生き生き働いているベテラン中堅社員もいます。彼らにとっては次々と責任ある仕事を任されることが、むしろやりがいなのです。

この差はいったいどこにあるのでしょうか? それには、「SOC(senseof coherence:首尾一貫感覚)」と呼ばれる能力が関係しています。

SOCは、ユダヤ系アメリカ人の医療社会学者、A・アントノフスキーが提唱した概念です。彼は、ナチスのユダヤ人強制収容所に収容された人々の追跡健康調査を行い、多くの収容経験者は長生きできなかったのに、約3割の人が心身ともに健康で長生きしたという事実を明らかにしました。

一般的に、人はストレスに長期間さらされると健康を保ちにくいといわれています。ところがこのように、過酷な状況下でも健康でいられる人が存在します。SOCはその人たちが共通して持つ感覚で、次の3要素からなります。

①有意味感:どんなささいな仕事でも、意味や楽しさを見出せる感覚

②把握可能感:事態をきちんと把握し、論理立てて段取りできる感覚

③処理可能感:これまでの経験から、困難な状況下でも、「なんとかなる」と思える感覚

この3つの感覚が優れていると、ストレス対処能力が高く、厳しい状況下でも仕事に楽しみを見出し、生き生き働くことができるといえます。

仕事と家庭の板挟みになる世代

しかし、せっかく働きがいを持って活躍している人でも、仕事と家庭の板挟みになりがちであるのもこの世代の特徴。実際、仕事で生き生き働いている人ほど、プライベートに「足を引っ張られる」感覚を持つ人が多いのではないでしょうか。

現代のベテラン中堅世代は、男女問わず、育児や家族との時間、私的な時間を大切にする価値観を持つ人が多い。とはいえ当然、仕事をおろそかにしたいわけではありません。「働きたい」という気持ちと「家庭を大事にしたい」という気持ちの狭間で、葛藤を抱える人が多いのです。

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