J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年04月号

JMAM通信教育優秀企業賞 受賞企業事例報告 富士通 幹部社員の育成から始まる現場ベースの組織改革

日本能率協会では、産業界に有効な能力開発のあり方を普及させることを目的に、
1988年「能力開発優秀企業賞」を創設。
第23回となる今回は、あいおいニッセイ同和損害保険が本賞を、エイチシーエル・ジャパン、
富士通が特別賞を受賞した。そこで、3号にわたり、その取り組みを紹介する。
富士通では、現場(フィールド)から企業革新を担う人材を育成するため、
管理職以上の社員に対して1年間の育成プログラムを実施している。



山本 広志氏 常務理事 フィールド・イノベーション本部長
加藤 真氏 フィールド・イノベーション本部長代理

富士通
1935年設立。情報システムおよびハード
ウェアを主力商品とする電機メーカー。
企業理念として「常に変革に挑戦し続け
る」ことを掲げ、ICTを通じてさまざま
な分野におけるビジネスソリューション
を提供する。
資本金:3246億2507万円、売上高:2兆
1489億8200万円(単独)、4兆6795億1900
万円(連結)、従業員数:2万5134名(単独)、
17万2438名(連結)(いずれも2010年3月
末現在)

取材・文・写真/石原野恵

現場で改革を推進するフィールド・イノベータ

現在富士通には、「フィールド・イノベータ(以下FIer)」という肩書を持った社員が約400名働いている。その平均年齢は47歳前後。同社で2007年より行われている「フィールド・イノベータ育成プログラム」を受講した、フィールド・イノベーションを専任で行う社員である。

フィールド・イノベーションとは、仕事が実際に行われている現場、つまり“フィールド”において、事実を正しく捉えて課題を見出し、人々の知恵を引き出して改善を重ねて変革を起こすこと(図表)。これまで顧客に対して多様なICT(情報通信テクノロジー)ソリューションを提供してきた富士通が、単にシステムによってのみではなく、より顧客の現場視点でのビジネスソリューションを提供するために、2007年より開始した取り組みである。

この考えに基づき、FIerは顧客先の現場または自社内の現場で、改善活動を推し進める。フィールド・イノベーションのコンセプトづくりから携わってきた山本広志氏は、その背景を次のように語る。「これまで、どちらかというと人やプロセスについてはお客様の領域で、それに必要なシステムを当社から提供するという形でした。しかし、ビジネスをより良くするには、お客様のプロセスや人の問題にまで踏み込まなくてはならないと実感することが多々あったんです」(山本氏)

たとえばある企業のコールセンターから、システムを導入したのにも関わらず、思ったような効果が上がらないという相談があった。そこで、オペレータの通話記録や、人材配置などを徹底的に調査・分析したところ、システム以前にオペレータの教育や育成担当の設置といった課題があることが判明。その解決に向けて約2年間取り組んだ結果、業務に対する評価が大幅に向上したのだ。「人やプロセスの問題を飛び越してシステムだけを変えても、大きな改善は見られない。課題解決の知恵は現場にあるはずですが、現場の従業員は課題に対する意識はあっても、日々の忙しさや、さまざまな理由で、実際にはなかなか動けないのが現実です。そうした時に、当社がシステムや人、プロセスにまつわる事実を“見える化”して、現場の知恵を引き出し、お客様と一緒になって現場を改善していくというのが、フィールド・イノベーションの考え方です」(山本氏)

現場の知恵を引き出す人材の育成

このフィールド・イノベーションを実現するためには、現場の事実を見える化し、知恵を引き出すことができる人材の育成が必要となる。そこで同社では、富士通グループ内の各ビジネスユニットから幹部社員150人を選抜し、1年間かけて集合研修を行う「フィールド・イノベータ育成プログラム」を開始した。「FIerのスキルとして重要なのは、いかに“事実”を見出すかということ。人の知恵を引き出して解決に結びつけるのに、いくら『知恵を出せ』といっても仕方ない。そうではなく、“事実”を突きつけると、人は考え出すんです。そのために、データ分析やインタビュー調査等を行って、事実をどんどん引き出すのがFIerの役目。1つの課題領域に対してある事実が明らかになると、当然関連する領域の問題も見えてくる。そうして人の育成やプロセスの変化がある程度進んだ段階で、システムを提供すればよいわけです」(山本氏)

では、どのように現場発の改革を実現する人材を育てるのか、育成の具体的なカリキュラムを見てみたい。

育成プログラムは合計1年間、4カ月ごとにカリキュラムが編成されている。最初の4カ月は座学を中心に、富士通の持つ技法やノウハウなどの基本を学ぶ。その中で最も重要なのが、研修最初の1週間に行うFIerとしてのマインドの醸成だと、この育成プログラムの立ち上げに携わった加藤真氏は話す。「研修の最初、候補者に自分の提供できる価値は何かを問いかけ、書いてもらうんです。そうすると、大半の人は所属歴なら書けるのですが、自分がどのようなノウハウを持っていて、それが顧客にとってどのような価値を持つのか、といった問いへと落とし込んでいくと、なかなか書くことができない。これまで幹部社員として活躍してきた人たちですから、書けないことに対してショックを受ける人もいます。ですが、現場に気づきを与える役目を持つイノベータの育成においては、こうしてマインドに揺さぶりをかけるところから始めることが重要です」(加藤氏)

次の4カ月では、座学から社内実践に移る。社内の各部署から課題となるテーマを挙げてもらい、そこからFIer候補社員が自分でテーマを選択し、解決のために取り組む。

そして最後の4カ月は、社外の現場に赴き、フィールド・イノベーション活動の実践を行う。こうした1年間の育成プログラムを経て、「FIer」の肩書がつき、フィールド・イノベーション本部専任の社員として社内外で活動することになる。

2007年は第1期生として150人がFIerとなった。2011年現在、研修の方法を修正しながら、第4期生の育成プログラムが実施されている。

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