J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2012年08月号

TOPIC 1 経営学習研究所キックオフイベントレポート 組織力を高めるための“学習”その新たな可能性を考える

2012年6月4日、内田洋行 ユビキタス協創広場CANVAS(東京都・中央区新川)で経営学習研究所設立キックオフイベントが開催された。テーマは、「これからの新人教育の話をしよう!」。本稿では、先鋭的な2社の事例を学ぶ第一部と、経営学習研究所の理事8人によるイーゼルトークの第二部で構成された当イベントの様子をレポートする。

石井 達也 氏
電源開発 人事労務部 人財開発室 総括マネージャー
村 浩二 氏
内田洋行 マーケティング本部 事業開発センター センター長

取材・文・写真/今駒菜摘

経営学習研究所(通称MALL)は、人事、人材開発に従事する実務家と、大学等で活躍する研究者により立ち上げられた非営利型一般社団法人だ。「経営・組織」「デザイン・創造」「学習」の3つのフィールドで研究を進めるMALLのコンセプトは、“働く大人の学びを活性化する”こと。組織内の学習に新しい風を吹き込み、組織外でも個人の知識や専門性を追究する仕掛けをしていく。

この日行われたキックオフイベント第一部のテーマは、新人教育。経営を取り巻く環境が厳しさを増し、育成にかけるコスト削減を余儀なくされる企業は数多い。そうした状況にありながら、新人育成に新たな付加価値を見出している電源開発、内田洋行の事例が紹介された。プログラムには、講義だけでなく、参加者同士で意見を交換するインプレッションシェアリングを組み込むなど、気づきを得る学びの場が設けられた。

第二部は、「MALLと一緒に面白いことをしよう!」というテーマのもと、MALLの理事8人による「学び」のイーゼルトークを通して、参加者との交流が図られた。

考えて、対話する本質的な学びの場

冒頭、MALL代表理事で東京大学大学総合教育研究センター准教授中原淳氏から以下のような趣旨説明があった。 「産業構造の変化により、バイオマスや情報などの新産業を生業にする人が増える労働移動社会が訪れます。このことが意味しているのは、変化に対応した“学び直し”が多くの人に必要になるということ。そうした中で、新しい“学び”を考えるMALLという組織を設立することになりました。

イベントの第一部では、『新人教育を通じた組織開発』『新人を通じたイノベーション創発』について考えていきます。前者に関しては、新人教育を通じて組織のさまざまな人をつなぎ、組織を活性化しようという試みです。後者はフレッシュな新人のマインドを通じて、イノベーションを生み出そうという試みです。

人は、1つの仕事に長く従事し、同じ人とつき合っていると、自然と組織の色に染まっていきます。組織の考え方、ものの見方が染みついてしまう能動的な惰性が、新たな発想の邪魔になるのです。これを新人で打ち破ります。

第一部では、このように高度な付加価値を生み出す新人教育のあり方を模索します。講演の後は、参加者同士で意見交換をしてください。聞いて、考えて、対話して、気づく。このイベントが本当の“学び”の場になるよう願っています」

第一部【企業事例講演】若手社員による新人教育プロジェクト

石井達也氏

電源開発 人事労務部 人財開発室 総括マネージャー

講演は、電源開発 人事労務部 人財開発室 総括マネージャーの石井達也氏による人財ビジョンの説明から始まった。

「当社の人財ビジョンは“プロフェッショナル人財”の育成です。スペシャリストであり、ゼネラリストでもある。両方の視点と経験を持つ仕事のプロをめざしています」

電源開発は、2004年に特殊法人から民営化。その際、専門性に特化した育成を行うも、専門的知識ばかりに目がいってしまい、組織としての意識が低下していったためにビジョンを見直したという。

同社では、入社から10年間を基礎知識・技術の習得期と位置づけ、社会性、チームワーク・コンセプチュアルスキル、専門性というカテゴリーで組み立てている。

ステージに合わせた1、2、5、10年目の研修の他、1年目社員にはOJTトレーナーをつけ、年間の育成計画を立てる。2年目からは職場外の先輩社員によるメンター制度も始まり、職場の枠を超えた斜めの関係が醸成されていく。そして3年目から始まるのが、新しい新人育成法「タテ・ヨコプロジェクト」だ。

新人育成を通じて組織の結束を強める

「タテ・ヨコプロジェクト」は、入社3年目に翌年の新入社員研修の丸1日の企画立案から当日の実施まで任せるというもの。

「導入の背景は、組織のフラット化やITの進展によって仕事が属人化していたことと、一時的な採用抑制により年齢構成が歪み、組織全体のコミュニケーションチェーンが断絶してしまったこと。10歳離れると話が通じないという人もいた。このプロジェクトは、新人教育を通して組織内のつながりを回復する試みなのです」

同プロジェクトの目的の1つに、タテとヨコのつながりをつくることがある。先輩にアドバイスをもらったり、新入社員に教えたりしながらタテのつながりをつくる。その一方で同期と同じ課題を共有することにより、全国に散らばり、弱くなったヨコのつながりを再構築していく。

「年齢の近い社員が少ない職場ではコミュニケーションが希薄になり、いわれたことだけをこなす若手が増えます。何のため、誰のためにという目的意識を持たせるためにも、同プロジェクトが有効なのです」

プロジェクトのルールは「全て自分たちで行う」「全員が参加する」という、たったこれだけ。全員が役割を持ち、業務との調整も組織的に行う。

同プロジェクトの成果として、これまで、配属現場の雰囲気や社員の生活を紹介する「現場ガイドブック」の制作、発電所建設時のプロセスをテーマにしたロールプレイングゲームの制作など、若手ならではのアイデアが形になった。プロジェクトの感触について、石井氏はこう話す。

「仕事以外の課題に対する抵抗があるのは最初だけ。新入社員に対して先輩風を吹かせなくては、と皆必死に取り組みますし、終わる頃には成長実感・達成感を味わってくれているようです」

【企業事例講演】新人だけの部署によるイノベーション創発

村浩二氏

内田洋行 マーケティング本部 事業開発センター センター長

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