J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2012年08月号

企業事例2 東洋インキSCホールディングス QCサークルの復活・浸透で問題を共通言語で語れる職場をつくる

印刷インキの製造・販売を中心に、多彩な事業を展開している東洋インキグループ。同社では、生産現場のリーダー育成と問題発見力・解決力の強化をめざし、一度は廃止していたQC手法を学ぶためのカリキュラムを2010年から再開させた。生産現場の社員の問題発見感度を高める「QC手法実践プログラム」とはどのようなものか。同社の研修を紹介する。

関野 純二 氏
グループ人事部 人材開発グループ グループリーダー
高嶋 一彰 氏
グループ人事部 人材開発グループ
永田 秀俊 氏
グループ人事部(社内講師)

東洋インキSCホールディングス
1896年創業、1907年創立。主に、印刷・情報関連事業、パッケージ関連事業、ポリマー・塗加工関連事業、色材・機能材関連事業の4事業を軸に幅広く展開する。2007年に創立100周年を迎えた。
資本金:317億3349万6860円、売上高:2453億3370万円、従業員数:7155名(連結)、2149名(単独) (数値はいずれも2011年3月31日現在)

[取材・文・写真] = 髙橋美香

階層別・職種別に鍛える問題発見・解決力

1896 年に創業し、オフセットインキ、グラビアインキ、塗料、樹脂、粘接着剤、塗工材料、顔料、着色剤等多彩な事業を展開している東洋インキグループ。同社では、階層別教育の1つとして2006年から問題発見・問題解決に関するカリキュラムを導入し、全社的に問題発見・問題解決の能力向上をめざしている。

同グループを牽引する東洋インキSCホールディングスのグループ人事部人材開発グループ グループリーダーの関野純二氏はこう話す。

「当社では、階層別に全職種共通の問題発見・問題解決のプログラムを用意し、社員が自ら問題を発見し、それを解決していくための能力強化に力を入れています。また、営業・技術・生産・スタッフというように、職種別のカリキュラムも用意しています」(関野氏)

その中でも今回は、2010年から開始した、生産部門の20 代後半から30代後半のリーダークラスを対象とした実践型プログラム「QC手法実践プログラム」を取り上げる。同社では、2007年に創立100周年を迎えたのを機に、「東洋インキ専門学校」を設立。これは、会社全体のレベルアップを図るためのカリキュラムを複数用意した、同社独自の企業内学校のことであり、この「QC手法実践プログラム」もここで行われているものの1つだ。

このプログラムは約8カ月にわたり、職場単位でQC手法を実践しながら、問題発見・問題解決力を養っていくもので、講師は、高い専門的知見を有する社員が務める。具体的な内容と、プログラム実施の背景について、以下に見ていきたい。

モノづくり現場に復活させたQC手法

「当社では1996 年までQC手法に関する教育や表彰制度を用意し、全社的に取り組んできました。しかし、全社にQC手法が浸透していく一方で、問題解決や改善より、表彰が目的になっている風潮があるのではないかという疑問が浮上したのです。そうした迷いとともに、QC手法を学ぶ機会は次第になくなっていました」(関野氏)

QC手法自体が悪かったのではなかったが、同社だけではなく、日本の多くの製造業でQC サークル活動をやめる動きが起きた。このことは、のちに弊害を生む。

かつてQC手法の教育を受けていた最も若い20 代の社員も、今では40代。QCに関する教育を受けていた社員のほうが少数派という状況では、改善活動を行っていくうえで、全員が共通言語で語ることが難しくなっていくのだ。

そこで同社では、生産部門においてQC手法についてしっかりと学ぶ機会の必要性を再認識。「QC手法実践プログラム」として復活させるに至ったという。

「モノづくりには改善が欠かせません。しかも改善をするためには、情報(言語)の共有が大きなポイントになることは、現場の一人ひとりが実感していました。ですが、そうした改善活動を社員の自主的な判断だけに委ねることは、限られた人員で大量の仕事をこなすことが求められる今の時代には難しい。会社が教育制度としてきちんと環境を整備し、現場に根づかせていくことが必要ではないかと考えています」(永田氏)

同プログラムの講師を務める永田氏はこう話す。

QC手法を職場に今一度根づかせるに当たっては、「モノづくり現場のリーダーを育成する」というコンセプトを設定。さらに、

①小集団活動

②社内講師による講義

③プログラムの構成(フロー)の3つのポイントを重視した。

グループ人事部 人材開発グループ高嶋一彰氏は、同プログラムのコンセプトにリーダー育成を掲げた理由をこう説明する。

う説明する。「時間的な余裕がなくなっている今、自然発生的にQCサークル活動が行われることを待っているだけでは、継続的な改善活動は生まれにくいのです。小集団活動は、リーダー役がリーダーシップやマネジメント力を身につける絶好の機会。リーダーを訓練することを通して、自主的に小集団活動ができる力を強化する。そうした意図から、このコンセプトを決めました」(高嶋氏)

また、同社ではプログラムの策定に当たり、社内講師による研修にこだわった。長年同社の生産現場の第一線で活躍してきた、高い専門的知見を持つ人材を社内講師に登用したのだ。「理論を学ぶことだけを重視するのであれば、知識や他社の事例を豊富に持っている外部講師に依頼したほうが効率的です。しかし、学んだことをいかにして実際の生産現場で生かしていくかを考えると、当社の生産現場を熟知している社員に任せたほうが、具体的・実践的に指導することができます。そうした理由から、社内講師にこだわってカリキュラムを設定しています」(関野氏)

Off-JTとOJTで鍛え上げる「QC手法実践プログラム」

同社は、川越、埼玉、富士、守山(滋賀)に主要な製造所を持つ。「QC手法実践プログラム」の受講者は、各拠点の生産部門でリーダーとして活躍している人材から選抜される。

1回の研修で参加するリーダーは十数名ほどで、6月中旬から翌年の2月にかけて行われるプログラムに参加する。他職場見学、講義、職場でのテーマ検討を繰り返し、最後に成果を発表するという流れだ(図表、2011年度は震災の影響で時期が異なる)。

● QC実践テーマの選定

各リーダーは、まず現在自分の職場で改善すべき課題を設定。研修で課題と解決方法の案を組み立てることになる。

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