J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2012年10月号

人材教育最前線 プロフェッショナル編 現場に赴き、みんなの知恵を活かしながら、課題を解決

通信カラオケ「JOYSOUND」をはじめ、カラオケ・ソーシャルメディア「うたスキ」や、携帯電話向けサービス「着うたフル」などの音楽コンテンツを提供するエクシング。同社は1992年の設立から急成長し、2010年にはカラオケ「UGA」ブランドのBMBと合併。新生エクシングとして再スタートを切る。池畠英治氏は同社の変革期に規程や制度統合などの人事業務を経験。社内の現場に自ら足を踏み入れ、課題を設定し解決策を生み出す手法で、数々の社内活性化やパフォーマンス向上に取り組んでいる。想いや苦心点について話を聞いた。

池畠 英治(Ikehata Eiji)氏
1996年4月エクシング入社。ジョイサウンド事業部中部営業所で営業担当。1998年3月業務部に異動。1999年9月中部営業所にて再び営業職に。2005年10月本社統括部人事グループ(名古屋本社)に異動。2007年10月東京事業所で常駐となる。2010年4月人事グループの改変で新設されたキャリア開発グループ責任者に就任。

エクシング
1992年にブラザーグループなどによって設立。通信カラオケ「JOYSOUND」をリリース。現在は「UGA」ブランドを加え、さらにモバイル向けアプリやコンテンツ、カラオケ・ソーシャルメディア「うたスキ」などのサービスを展開。
資本金:71億2264万8000円、売上高:411億8900万円(2011年3月期)、社員数:1200名(2011年6月現在)

文/中村博昭、取材・写真/高橋美香

職場の沈滞ムードに活性化策を提案

エクシングのキャリア開発グループグループ長である池畠英治氏。2005年から人事を担当する池畠氏には、人事として自信を持てた出来事がある。それは東京事業所内のコミュニケーションを活性化し、沈滞ムードからポジティブな風土へと転換させたスマイルプロジェクトだ。「2000 年頃から携帯向けのモバイル事業が急成長し、東京事業所の人員も増え、2007年当時は200 名ほどになりました。私は名古屋本社から出張で東京事業所に何度か行くうちに、社内の雰囲気に違和感を抱きました。周囲に関心がなく、一人ひとりがひたすら静かに仕事をしている感じがしたのです」

これは良くないと感じた池畠氏は、東京事業所での風土活性化プロジェクトの実施を提案。採用されると、一人で人事担当として東京事業所に赴任することとなった。そこで立ち上げたのが、部署ごとに選抜するコアメンバーが中心となって行うスマイルプロジェクトだ。「メンバーは部署ごとに、職種も年齢も職歴もできるだけバラバラになるように人選し、スモールカンパニーを再現。そのメンバーと風土活性化のための方策を話し合い、検討を重ねました」

お互いを認め合うセッションを実施

池畠氏はあくまでもプロジェクト会議の事務局であり、話し合って結論を出したのはコアメンバーだ。そこで決定した施策は、お互いの強みを認め合うことで関係の質を高めるセッションの実施だった。「 正社員から契約社員、アルバイトも含めて東京事業所の従業員が一堂に会し、セッションを行いました。当日は大変盛り上がりました。以前は同じフロア同士でもあまり言葉を交わさなかったのですが、その後は声をかけ合うようになり事業所内の雰囲気が変わったのです。これには手応えを感じました」

その半年後には新事業創造セッションを行い、そのまた1年後には、職場体験会を実施。これは、東京事業所にある20グループほどの仕事を1日かけて30 分間ずつ擬似体験するもの。そうして、自分と周囲の仕事のつながりを理解し、他のグループを支援するために何ができるか、テーマを設定するというのが狙いだ。この体験会の半年後には成果報告会を開いている。「スマイルプロジェクトを担当したのは、人事に異動して1年半ほど経った頃。その前は営業職でした。営業職で身につけた仕事に対するスタンスが人事になっても活きています。何が問題なのかを考えるため、現場に足を運んで仮説を立て、有効な手段を考える。やり方は同じです」

カラオケ店の一室を1カ月借り切り、無料で学生に提供

池畠氏がエクシングに入社したのは1996年。就職活動中に「JOYSOUND」という名前を目にする。カラオケにもよく行っていたし、その名前も知っていた。当時会社は設立4年目で、会う社員から勢いを感じた。「とても元気な会社と好印象を持ちました。内定をいただくことになったのですが、実はすぐには入社する決意ができていませんでした」

迷う池畠氏は人事に「先輩社員と話をさせてほしい」とお願いする。「営業1年目の社員に会わせてもらいました。熱心に会社や仕事について説明してくれ、質問にも丁寧に答えてくれたのです。その姿からこの会社で働きたいと思いました」

入社した池畠氏は、カラオケのジョイサウンド事業部の中部営業所で営業職となる。だが、会社の業績低迷から、1998 年に業務部に転属となってしまう。「営業職から管理部門に異動となりましたが、営業職を離れたくなかったので、一時はこの先どうしようかと悩みました。ただ、異動先の部門に、入社を決意させてくれた先輩が在籍していたのです。入社時の気持ちを思い出し、がんばって続けることにしました」

全社の努力が実り、会社の業績が改善に向かっていた1999 年、再び池畠氏に声がかかり、中部営業所に営業職で戻る。この当時、カラオケ市場が飽和状態だったこともあり、どうやって競合に勝つか、どうやって盛り返すかが課題となっていた。そのため、池畠氏は既存の販売代理店だけではなく、新規チャネルの開拓ができないかと模索していた。「どうしたら担当地区のシェアアップができるだろうかと、いつも考えていました。そこでお客様の認知度を上げ、お店にJOYSOUNDを入れてほしいとお客様からいってもらえれば、お店側にもJOYSOUNDの魅力が伝わりやすいのではないかと考えました」

そこで池畠氏は、カラオケ店の一室を1カ月借り切る。そこに自社の新製品のカラオケを設置して、駅前やカラオケ店の近くでチラシを配った。「 学生の皆さんに“、今なら1時間無料でカラオケができます”と宣伝したのです。すると学生たちに人気になり、これまで取り引きのなかった販売店からも新規受注が決まっていきました。他では、人が大勢集まるイベントにブース参画し、来場者に歌ってもらったり。お客様に直接製品に触れてもらう機会をできるだけ増やしていきました」

相手の期待を察する点は人事も営業も変わらない

また、つき合いのない販売店を攻略するために、池畠氏は現場担当者との関係構築を積極的に行った。契約店舗での集金や機器メンテナンスに同行。こうして営業活動を支援することで信頼してもらえるようになり、新規受注につながった。「営業時代に学んだのは、売れる仕組みをつくるために、まず売れない真の原因を見つけること。そのために、現場で何が起きているのか、お客様が今何を求めているか、自分で事実を確認しました。それから手を打つと、成果が出るのです。

現場で何が起こっているのか、現場が何を望んでいるかを考えることは、組織パフォーマンスを向上させる人事の仕事でも同じだと思います」

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