J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2012年11月号

連載 金井壽宏の「人勢塾」に学ぶ。試す! 人と組織の元気づくり 第4 回 人と組織の元気づくり 第4 回「ドラム・サークル」

成熟社会。正解のないビジネス現場。社内のコミュニケーション不足――これらの課題に、即効性のある薬などないことは、誰もが感じているだろう。この状況に風穴を開ける術は、全くないのだろうか?その問いに挑むのが、神戸大学で金井壽宏先生が主催する第4期「人勢塾」。本誌では、「人勢塾」全10回の授業をレポート。施策1つで問題を解決するのではなく、組織全体へ多様なアプローチをする。そんな「組織開発」の手法を学び、ぜひ現場で試していただきたい。

金井壽宏
神戸大学社会科学系教育研究府長、大学院経営学研究科教授(兼務)
1954年生。78年京都大学教育学部卒業。80年神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程を修了。89年マサチューセッツ工科大学でPh.D(. マネジメント)を取得。92年神戸大学で博士(経営学)を取得。

「人勢塾」とは?
神戸大学大学院経営学研究科の社会連携活動機関でもあるNPO現代経営学研究所が主催の講座。2009年にスタートし(第1期の成果は、『人勢塾--ポジティブ心理学が人と組織を鍛える』(小学館、2010として出版)、2012年5月スタートの今回が第4 期となる。「産業社会の元気の原点は、働く人、一人ひとりの元気・勢いにある」という考えのもと、人材教育・組織づくりなどにかかわる多様なセッションを実施。今期は、ただ学ぶだけでなく、現場での実践につなげられるよう、原則1社から2名の参加を必須としている。毎回「その道の本物・達人」といわれるゲスト講師を招くのも魅力だ。「人事やラインマネジャーは働く人の応援団。そしてその応援団にも応援団が必要」と語る金井先生。我々人事を応援してくれるような「学び」と「場」が提供されている。

[取材・文・写真] = 渡辺清乃

「ノンバーバル」から学ぶ

「チーム力を上げる」ことは、組織開発には欠かせないものだ。第4回は、日本を代表するパーカッショニストであり、ドラムサークルファシリテーター協会理事長として学校や企業の研修現場に立つ、橋田“ペッカー”正人さんがゲスト講師。参加者が輪になって座り、ドラムでリズムを奏でるセッション「ドラム・サークル」を体験した。使うのは、打楽器と身体のみ。普段、言葉に頼っているビジネスマンにとって、ひと味違うグループ経験となった。

「古代人の智恵」に学ぶ

「今日は、古代人の智恵に学びます」とペッカーさん。

「5万年前、ホモサピエンスとネアンデルタール人、2 つの人類がいました。私たちの先祖は、ホモサピエンスです。ネアンデルタール人は体格が良いのに対して、ホモサピエンスは華奢。だから、グループをつくらないと生きていけなかったんですね。彼らは笛の音で癒し合い、仲間の絆をつくった。それで、ネアンデルタール人との種の保存競争に勝てたんです。現代社会におけるネアンデルタール人は……不景気かもしれない。祭りを行い、グループを強くして、楽しく乗り越えよう。古代人は、そう教えてくれます」

チーム形成のプロセスを体感

ドラム・サークルはチームビルディング研修によく使われる。なぜだろうか。理由の1つを「短時間でチーム形成のプロセスを体感できるから」と金井先生。たった数時間のセッション中に、チームが形成され始め、役割が発生し、混乱が起こり、行動規範が生まれ、一体感が湧く。ちょうど、タックマンのチーム形成から達成までのプロセス理論と重なる、というのだ。

「グループがグループらしくなるのには、たとえばプロジェクトチームなら結成されて数週間を要するかもしれません。今回のセッションでは、数時間で『我々はグループである』という実感が持てるはず。また、ペッカーさんからグループ活動のファシリテーションを学んだり、元気が出るとはどういうことかを味わってほしい」。

タックマン(B.W.Tuckman)のチーム形成プロセス理論

①Forming:チームが形成され始め、

②Storming:何かと目的、役割、責任に混乱が起こり、

③Norming:ともに行動する人の間で行動規範が生まれ、

④Performing:結束力や一体感が生まれ、チームで何かをともに成し遂げるようになり、

⑤Adjourning:目的達成、時間の制約、事態の急変から相互関係はお開きとなる。

※ドラム・サークルでは4段階目の「Performing」までを体感できる。

Live Report

全10回の四回目。14時から半日のセッションがスタートした。輪になったイスと、イス1つずつに置かれたドラムの数々。怪訝そうに入ってくる受講者。「全員が打ち解けた」とはまだいえないこの時期に、ぴったりのセッションだったかもしれない。

PickUp 1 実践①アイスブレイク~「ASAP」から全体演奏、ソロ演奏へ

リズムで足並みを揃える

会場に着くとすでに、ドラムの音が聞こえる。サブファシリテーターと先に着いた受講者が、思い思いに叩く音だ。打楽器の良さは「叩けば音が出る」こと。つまり、練習がいらない。受講者全員が席についたところで、ゆるやかにセッションが始まった。

「自分はリズム感がない、という人!」ペッカーさんの呼びかけに、手を挙げる人たち。ペッカーさんは笑う。

「よくここにたどり着けましたね。ナイスなリズム感を持っているから、時間通りにここへ着けるんですよ。それを『いいリズム』といいます」

リズム感とは音楽の世界に限らず、日常にある。特別なものではないので安心して――そんなメッセージに聞こえるし、セッション後、「リズム感の良い人は仕事を先まで見通して進めることができるのでは」という感想が受講者から挙がったように、ビジネスのベースに通ずる話にも受け取れる。

実践は、ドラムではなく手を叩くことから始まった。ペッカーさんの「ワン、ツー、スリー、フォー!」の掛け声に合わせて、全員でパチンと1回叩く。それを2 回、3 回と増やしていけば、音がバラバラになる。しかし、何度もやるうちに揃う。最後には、20回の手拍子がビシッと揃った。「これがドラム・サークルの面白さ。50人が足並みを揃えるプロジェクトなんて、社内にありますか?」ペッカーさんの言葉に、小さな達成感さえある。

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