J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年07月号

TOPIC② ダイヤモンド社創立100周年記念講演会 レポート 教育と人材育成でイノベーションを起こせ! ― 世界標準のリーダーシップの育て方―

2013年4月17日、ダイヤモンド社創立100周年記念講演会が開催された。基調講演には、アジアとアフリカ10カ国で780万人以上の子どもたちに、読み書き能力と読書習慣を育成するための活動を続ける
「ルーム・トゥ・リード(Room to Read)」創設者兼共同理事長のジョン・ウッド氏が登壇。続くパネルディスカッションでは、次代の日本を支える人材を育成するリーダーたちによる、活発な議論が交わされた。

ジョン・ウッド(John Wood)氏
「ルーム・トゥ・リード」創設者兼共同理事長。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院でMBAを取得後、数年の銀行勤務を経て、1991 年マイクロソフトに入社。1999 年にマーケティング部門の重役の座を捨て、ルーム・トゥ・リードを設立。アジアとアフリカ10 カ国で活動を続けている。
石倉 洋子 氏
(慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 教授)
松田 悠介 氏
(Teach For Japan 創設代表者)
小林 りん 氏
(公益財団法人インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢設立準備財団 代表理事)
小沼 大地 氏
(NPO 法人 クロスフィールズ 代表理事)

取材/菊池壯太 文/中村博昭 写真/宇佐見利明

【基調講演】「教育で世界を変える」

ジョン・ウッド氏(ルーム・トゥ・リード 創設者兼共同理事長)

子どもたちに絵本が読める学校を

全ての子どもたちに教育の機会を与えたい―この信念のもと、アジア・アフリカの10カ国で学校や図書館を建て、絵本を届ける活動を続けるのが、ジョン・ウッド氏率いるNGO「ルーム・トゥ・リード」だ。氏が活動を行うきっかけとなる原体験は、1998年にネパールをトレッキングした際に訪れた。

「ある学校を訪ねたのですが、ここには450人も児童がいるのに、驚くことに子ども向けの本が1冊もない。子どもたちには本が必要なのに、どうしてかと校長に尋ねました。その時校長が話したことが、私の人生を完全に変えてしまったのです」

校長は、「ネパールでは貧しくて教育を受けることができない子どもが大勢いる。彼らが教育を受けることができなければ、ネパールという国はこれからもずっと貧しい国のままだろう」と言うのだ。

自らも子どもの頃は大の絵本好きで、絵本を読んで育ったというジョン・ウッド氏。貧しい国々や地域の人たちに読み書きができない人が多いのは、絵本のような、私たちが当たり前のように手にできるものにアクセスできないだけだということに気づかされたのだ。

その話を聞いてから約1年後に彼は、ヤクの背に3,000冊の児童書を積み、ヒマラヤへ向かった。こうしてルーム・トゥ・リードの活動がスタートした。

「私たちは過去5年間に1,650の学校を建設しました。これは1日1校に迫る、驚異的なペースで建てたことになります」

そして、建設した学校や図書館の運営を円滑に行うために、2万人以上の教師・図書館司書をも育成しているという。

地域の人々と協働でコミュニティの自立をめざす

ルーム・トゥ・リードの活動の特徴は、支援する国の地域コミュニティと密接にコラボレートしている点だ。

「私たちは、コミュニティのために何かをするのではなく、“コミュニティと一緒につくり上げる”という方針で活動しています」

「チャレンジ・グラント」と呼ばれるこのモデルは、学校や図書館を建設するための経費の何割かを労働力や資金という形で、支援する地域社会にも負担してもらうというもの。地域社会の協力体制が整っているコミュニティでは、子どもたちの親や地域住民が強い熱意を持って労働力を提供し、学校や図書館の建設に参加してくれているという。

コミュニティの人々の参加を得ることで、単なる施しや支援ではなく、自立を促しているのである。

スターバックス並のスピードで成長を続ける

ルーム・トゥ・リードには、「GSD(Get Stuff Done)」という信念がある。日本語には訳しにくいが、「つべこべ言わずにやるべきことをやれ!」といったニュアンスであり、あれこれ言い訳せず、まずは積極的に行動に移すという考え方だ。

実際、この信念に基づいてさまざまなことが成し遂げられてきた。ボランティア活動の現場で直面する課題や困難を乗り越えるうえでも重要になるが、より大きな目標達成のためにもこの精神が遺憾なく発揮されている。「たとえばスターバックスは、拡大という意味では王者でしょう。そこで私たちは当初から、スターバックスが世界中に出店するカフェよりも速いペースで図書館や図書室をオープンしたいと考えました。周囲からは無理だろうと言われましたが。

でも、ここに1つのデータがあります。スターバックスの12年間とルーム・トゥ・リードの12年間とを比較したグラフです。最初の数年こそ負けていましたが、その後、私たちが逆転しました。子どもたちにはもっと多くの学校や図書館が必要ですから、このスピードで活動を続けなければなりません」

ビジネスと違い、NPOなどの活動では事業規模を小さく考えがちだ。しかし、ルーム・トゥ・リードは、小さく考えることを良しとせず、企業と同じようなスピードで成長していくことが重要だと考えている。

チームスポーツの精神で参加を

マイクロソフトでの勤務経験を持つジョン・ウッド氏。よく「マイクロソフトでの生活が懐かしくないか」と聞かれるという。しかし、自身の選択に後悔は「全くない」。「今、自分がしていることの幸せ、そして皆さんのような素晴らしい人たちに出会う機会を得られたことに満足しています。今は株主のためではなく、子どもたちのために働いているのです。ルーム・トゥ・リードはチームスポーツのようなもの。ですから、日本の皆さんにも、より多くのご参加をいただき、ぜひ力をお借りしたいと思っています」

2015年までに、1,000万人の子どもたちに教育の機会を与えたい―この高い志を持って、世界中の仲間とともにルーム・トゥ・リードは活動を続けていく。

【パネルディスカッション】「教育と人材育成でわたしたちが目指すもの」

ジョン・ウッド氏の基調講演では、ルーム・トゥ・リードの活動を通じ、貧しい国々や地域の子どもたちに教育の機会を与えることの意義が語られた。第2幕のパネルディスカッションでは、舞台を日本に移し、これまでの日本の教育の問題点や、学生や若手社会人が持つべき志やリーダーシップのあり方について議論が行われた。ここではその一部を紹介する。

なぜ日本の教育は変わらないのか

石倉

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