J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年07月号

CASE.1 大阪ガス 根づき始めたグローバルマインド 仕事力・突破力・語学力を備えた人材を育てる

関西地域のガス供給会社というドメスティック企業のイメージが強い大阪ガスだが、2009年に策定した長期経営ビジョン・中期経営計画「Field of Dreams 2020」を契機に、海外ビジネスのウエイトを拡大する方針を打ち出している。グローバルカンパニーへ脱皮するために必要となるグローバルマインドの育成について、同社の取り組みを取材した。

臣 健太郎 氏
資源・海外事業部 計画部 総務チーム

片岡 聖美 氏
人事部 人材開発チーム

大阪ガス
ガスの製造、供給および販売、LPGの供給および販売、電力の発電、供給および販売、ガス機器の販売、ガス工事の受注を主に行う。現在、近畿2府4県の79市30町にガスを供給。資本金:1,321億6,666万円、売上高:1兆1,091億7,500万円(2012年度)、従業員:5,867名(執行役員・理事・嘱託含む。出向者除く。2013年3月31日現在)

[取材・文]=赤堀たか子 [写真]=大阪ガス提供、編集部

●背景 脱国内事業依存。海外事業を拡大

大阪ガスといえば、関西エリアでのガス製造・供給やガス機器の販売、メンテナンス、電力事業を中心とした「国内エネルギーサービス事業」(以下、「国内事業」)で知られているが、この他に、有機材料・炭素材料開発やITサービスなどの「環境・非エネルギー事業」(以下、「環境関連事業」)に加えて、海外での資源開発や調達などの「海外エネルギーバリューチェーン事業」(以下、「海外事業」)も展開している。

以前は「国内事業」の割合が大きかった。たとえば、2007年3月期から2009年3月期の「国内事業」「環境関連事業」「海外事業」の平均事業規模の比率を見ると、5対2対1で「国内事業」が全体の6割以上を占めている。

今後は、関西地域の人口減少に伴い、ガス需要の縮小が予想されることから、さらなる成長のためには、「国内事業」だけでなく、「環境関連事業」「海外事業」への注力も必要である。

そこで「Field of Dreams 2020」では、2020 年までに「環境関連事業」と「海外事業」の割合を拡大していく方針を打ち出した(図表)。

既存事業の深化と新規事業分野の拡大によるビジネスフィールドの拡大をめざすとともに、3つの事業領域をバランスよく成長させることで、シナジーの発揮とリスクの分散を図り、強靭な事業構造の確立もめざしている。「海外事業」は、これまで油田・ガス田の権益やLNG 船の保有などが中心だったが、こうした事業の拡大に加え、昨今では北米でのシェールガス輸出プロジェクトなどにも積極的に参画。さらに、発電事業でも海外案件への投資を増やしている。また、国内事業で培ったノウハウを生かし、シンガポールでの産業ガス販売を決定した。

このように、エネルギー供給の上流(生産)から下流(供給)までの全てにおいて、国内だけでなく、海外でも事業を展開していく方針で、これにより同社は、“関西のガス会社”から“グローバルエネルギーカンパニー”への飛躍をめざしている。

● 求める人材像 仕事力とコミュニケーション力

国内事業中心の会社からグローバルカンパニーへと成長するためには、世界を舞台に活躍できるグローバル人材の育成が欠かせない。現在、同社の海外事業部門の人員数は約100名だが、2020 年までに、これを現地法人の正社員も含めて1,200 名まで増やす予定だ。

グローバル人材として同社が求める要件は、まず、「自分で課題を設定し解決できる、あるいは、周囲と連携して新たなビジネスを構築できるといった“仕事力”を備えていること」と、人事部人材開発チームの片岡聖美氏は説明する。この大前提に英語力と“突破力”を加えたのが、同社が理想とするグローバル人材像だ。

ここでいう“突破力”とは、「新しい環境をストレスと感じるのではなく、それを楽しむことができる良い意味での鈍感力」を意味する。

資源・海外事業部計画部総務チームの臣健太郎氏は、こう続ける。「日本人ばかりの中で以心伝心が当たり前だった環境から、異文化で育った外国人と意見を交わしながら働く環境に変わっても、それを面白いと思える神経の太さを持っている人材が求められています」

仕事力に加え、語学力や精神的なタフさが求められるグローバル人材だが、同社では、対象者を限定して集中的に育成するつもりはない。「グローバル人材に求める仕事力は、実は、海外事業に限らず、どんな事業においても必要な能力で、全ての社員に求められる要素です。また、これまで国内だけで展開していた事業でも海外展開する機会が出てきており、全ての社員が海外ビジネスにかかわる可能性があるわけです。したがって、人材育成においても、誰が海外の現場に派遣されても慌てることがないように、全社員をグローバル人材として育成する必要があるのです」(片岡氏)

● 具体的な取り組み 海外留学や現地での“丁稚奉公”

グローバル人材を育成する仕組みとして、同社では、海外留学制度とトレーニー制度を設けている。

1963 年に開始されたという海外留学制度は、留学希望者が留学先を選び、その費用を会社が負担する。知識修得のみならず、多様な人材とのディスカッションを通じた成長や人脈形成を通じた異文化理解力・対応力の向上も狙いとしている。したがって、MBAをはじめ、MOTや法科大学院など広く募集を行っているが、結果としてMBA留学を選択する人が多いという。片岡氏によれば、「MBAはビジネスパーソンにとって一つの確立された指標であり、経営学の知識を修得するとともに、視野を広げることができます。したがってMBAを取得することは、当社グループの発展につながります」とのこと。

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