J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年09月号

TOPIC 女性の活躍推進とマネジメント改革のあり方 ―キャリア観の多様化から考える人材戦略―

ライフ・ポートフォリオとアクシアの共催により、「女性の活躍推進から見えてくるこれからのマネジメント」と題するセミナーが2013年6月27日に開催された。このセミナーは、「女性活躍」の枠組みにとどまらず、そこから見えてくる働き手のキャリア観の変化や組織運営のあり方を考える「マネジメント改革」も視野に入れたもの。育児休暇制度の延長等が検討され、女性の働き方や活かし方にますます注目が集まる中、何が女性活躍推進のカギとなるのか。同セミナーの模様をレポートする。

前原 はづき(まえはら はづき)氏
ライフ・ポートフォリオ 代表
リクルートを経て、企業向け研修会社に転職。多くの企業の人財育成計画・研修の企画・提案を通じて、企業と人事の視点・個人の視点双方からキャリアとライフデザインのあり方を考察。2009年ライフ・ポートフォリオ設立。

岩野 敬一郎(いわの けいいちろう)氏
株式会社アクシア 代表取締役社長
リクルート採用支援事業部門において営業スキル研修事業の立ち上げに参画。研修プログラム開発、営業マネジャー兼研修トレーナーを歴任。現場重視と顧客視点のトレーニング手法を信条とし、旅行代理店、自動車販売、製薬メーカー、通信業界など担当した業界は多岐にわたる。2008年株式会社アクシア設立。


取材・文・写真/菊池 壯太、浦上 毅郎

本セミナーの参加者は、企業の人事担当者で自らも管理職という30~40代の男女約15名。座講だけではなく、参加者が意見を出し合うワークの時間もあり、議論がしやすいよう、5~6名のグループに分けられていた。本稿ではその中から、ライフ・ポートフォリオ代表の前原はづき氏と、アクシア代表取締役社長岩野敬一郎氏による講演部分を紹介する。

「女性活躍推進」については、現在、会社と働き手の間に明らかなギャップが存在している。ギャップとは、会社側は「女性社員のキャリア意識が低い」「会社の制度を利用して甘えている」と考える一方、女性たちは「時短でも精いっぱい、頑張って仕事をしているのに、意識が低い、やる気がないと言われる」「会社に応じて家庭を犠牲にしないといけないのか」といった不信感を抱いているということだ。このギャップを埋めずに、女性活躍推進という言葉だけをお題目のように語るなら、会社と働き手の言い分は平行線をたどり、互いの不信感は大きくなるばかりである。そうした相互不信を解消し信頼関係を築くためには、本音で対話をし、新しい成長・貢献のあり方を描く作業が必要だ。そこで、こうした機会を通じ、会社と働き手双方の本音や利害をすり合わせ、相互の信頼関係構築をサポートしたいと考えている。本音や利害のすり合わせとは、「時間のポートフォリオ変動」を理解し、長期的な成長・貢献によって会社と働き手がWin-Winの関係をめざすことである。

「時間」こそ最大の財産

キャリア、経験、人脈、家族―我々の人生を豊かにする要素を形づくるための元手は「時間」だ。それゆえ、人生設計において、何にどのくらい時間を割き、そしてその配分をどう変更していくのか―働き手がそうした「時間のポートフォリオ変動」を考えることが重要になる。特に女性が出産すると、「仕事」に割ける時間は物理的に制約され、「家庭」のボリュームが増大する。育児のために時短で働けば、その期間はさらに長くなる。「仕事」の時間配分が制約されるこの時期に、会社側は、期待含みとはいえ、仕事に割ける時間以上のパフォーマンスや、さらなる飛躍を求めがちだ。一方、働き手である女性側には、「勤務時間以上のパフォーマンスを求められても……」「管理職に任命されても、今の状態では責任を全うできないかも……」と感じる人も少なくない。そして、会社の期待には応えきれないと感じた女性が、キャリア構築そのものを断念してしまうこともある。会社も働き手も成長と貢献を望んでいるにもかかわらず、こうしたすれ違いが起きていることは大きな損失だ。女性の活躍を実現できるかどうかは、会社と働き手双方が従来の働き方から視点を転換し、長期的な成長・貢献のイメージを描けるかにかかっている。

40代・50代の成長・貢献を示す

女性活躍推進を考えるうえでは、1.女性本人、2.会社方針、3.管理職、4.職場環境、5.プライベート環境という5つのファクターが相互に密接にかかわる(図表1)。女性本人の意識はもちろんのことだが、会社方針・管理職が大きな影響力を持っていることに注目してほしい。前述のように、女性は出産・育児により、男性に比べて仕事に割ける時間が減ってしまうことが多いのが現状だ。しかし会社側は、「今すぐ」の成長・貢献を求めてしまい、育児が落ち着いた40代・50代に仕事のウエイトが回復することに、なかなか目を向けない。ただでさえ負荷の高い社員に過度なプレッシャーを与えて潰してしまうのではなく、雇用期間全体を見据えた長いスパンで考え、40代・50代に活躍するにはどうすればいいのかを並行して考えるべきである。また、働き手の側も、ライフイベントを織り込んだ長期的なキャリア構築の意識を持ち、40代・50代のキャリアもイメージしながら自身のチャレンジや能力開発のタイミングを考えなくてはいけないのである。

多様なキャリア観の理解

もう1つ重要なことは、管理職が「人それぞれ、多様なキャリア観がある」ということを理解することだ。ワークライフバランスのバランス点は人によって違うが、大きくは図表2の3つのタイプに分けられる。

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