J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年09月号

人材教育最前線 プロフェッショナル編 教え合う風土と当事者意識がつくる 「300年成長する企業」の礎

トップセールスマンとして、営業現場の第一線で活躍していた源田泰之氏。同氏の人事の道は、予想もしていなかった突然の異動から始まった。だが、常に自分が果たすべき役割と向き合い、どんな時も目の前の課題に全力で取り組んできた。販売スタッフ研修をつくるために、自ら店頭に立ち接客を体験。経営者育成をめざし、他社の有能な経営者たちを次々と訪問――。強い当事者意識があるからこそ、自ら行動せずにはいられない。そんな源田氏が見つめているのは30年、300年先のソフトバンクの姿だった。

人事本部 人材開発部 部長
源田 泰之(Yasuyuki Genda)氏
1997年デジタルツーカー九州入社、営業を担当。2006年ソフトバンクモバイル、チャネル研修課長に就任。2009年人材開発部長となり、2010年からはソフトバンク社長室を兼務、孫正義社長の後継者を育成するソフトバンクアカデミアを担当。

ソフトバンク
1981年設立。インターネットを事業基盤に、ソフトバンクモバイル、ソフトバンクBB、ソフトバンクテレコム、ヤフーをはじめ約1,300社のグループ企業がある純粋持株会社。経営理念である「情報革命で人々を幸せに」をもとに事業を進め、2010年に発表した“新30年ビジョン”では、“300年成長する企業”をスローガンに掲げた。資本金2,387億7,200万円、連結売上高:3兆3,783億円(2013年3月期)、社員数:187名、連結2万4,598名(2013年3月末現在)

取材・文・写真/髙橋 真弓

販売員研修をつくるため自ら店頭に立ち接客する

人事本部 人材開発部長として現在、東京の本社でソフトバンクグループの人材開発と教育の指揮を執る源田泰之氏。福岡で育ち、1997年にデジタルツーカー九州(のちのボーダフォン)に入社した同氏が、販売研修部門の研修課長として東京転勤の辞令を受けたのが2006 年。ソフトバンクモバイルによるボーダフォンの買収がきっかけだった。入社以来、営業の道一筋。デジタルツーカーショップから地元の有力な量販店の本部・店舗、さらには商社や法人営業を経験し、営業担当者の中でも成績上位だった源田氏にとって、東京行きは寝耳に水だった。「私自身、人事・教育に足を踏み入れることは全く希望していませんでした。『どうして私なんですか』と上司に(異動の再考を)直談判したほどです」当時ソフトバンクモバイルでは、全国の販売店を強化する計画があった。そのスタッフ教育のために、各地域の営業職社員が集められたのだ。だが、異動先の研修部門は新設されたばかり。座る席すらも決まっていない混沌とした状態でのスタートだった。「研修といっても何をすればいいのか全くわからず、もちろんマニュアルや教育ツールも何一つありません。手元にあるのは携帯電話の契約申込書くらい(笑)。それでも『明日、100人の研修よろしく』といったオーダーがどんどん来ましたから、メンバー全員、必死でした」営業を担当していた源田氏だが、長く法人営業や店舗のマーケティングコントロールに携わっていたため、店頭での販売経験は豊富ではなかった。そこで、販売スタッフに必要なスキルや知識を把握するために、直営店の店頭に立たせてもらい、自ら接客をして勉強した。その後、どうにか研修の形ができ、実際にスタートしてからもメンバーたちに息つく暇はなかった。研修は新規のスタッフだけでなく既存スタッフ、アルバイトから正社員まで、あらゆる販売員が対象だった。チャネル研修課のメンバーは最大で17人いたが、フル稼働で全国を飛び回り、1年で1万人以上を教育したという。さらに、商品知識や接客といった基礎研修だけでなく、顧客満足度やアフターサービスに特化した研修など、ラインナップも次々と増やしていった。「とにかく毎日が楽しかったですね。自分が思い描いていたキャリアとは違う道に進みましたが、何もないところから1つのものをつくり上げたという経験は結果的に私自身の成長と自信につながりましたし、仲間とのつながりも強くなりました」

社内認定講師制度で教え合う風土を醸成

2009年、人事の人材部門と源田氏が所属していた販売研修部門が統合し、源田氏は人材開発部長に就任した。そこでまず着手したのが、社員が研修講師を務める“社内認定講師制度”だった。「外部から講師をお招きするスタイルの研修にもメリットはたくさんありますが、たとえばリーダーシップ研修などいくつかのテーマについては、ソフトバンク色の強い本質的なプログラムが作りたいと考えを巡らせていました」当時、ボーダフォンがソフトバンクに買収され、ソフトバンクモバイルとなると業績はV字回復し、利益も急激に伸びていた。移行前、契約数が伸び悩み、負け癖がついていた旧ボーダフォンの社員たち。だが、孫正義社長を筆頭にソフトバンクの経営陣は、真剣に業界ナンバーワンになることを考え実行した。そして、実際にそれが数字として表れる中で、「やればできるんだ」という意識へと社員たちが変わっていくのを源田氏は体感したという。「リーダーシップってこういうことなんだと思いました。ビジネスの中で活躍するリーダーを育てるための“本当の研修”を考えた時、ビジネスをやっている現場にその答えがあると確信しました。それがきっかけで、最前線で活躍している社員が講師として登壇する、社内認定講師制度が生まれたのです」今年で5年目を迎えるが、講師には毎年60~70名の応募がある。その中から優秀な人材を選考し、真に役立つ研修を提供し続けている。さらに、源田氏は今年7月、誰もが研修講師や講演の主催者になれる「知恵マルシェ」もスタートさせた。社員から開催申請があると、人材開発部門は場所を提供し、社員への告知をサポートする。「もっと社員同士の顔が見えて、もっと気軽にいろいろなことを教え合える風土にしたい」知恵マルシェから得た知識で業務に貢献してもらうこと以上に、参加を通じて人と人のつながりが生まれるネットワーキングの一助にしたいと源田氏は考えている。「2010年にソフトバンクが発表した“新30年ビジョン”の中で、“300年成長し続ける企業”を掲げています。それを実現するには、お互いに教え合う風土や、事業を継承していく仕組みづくりが必要なのです」

グローバルを意識しない状態こそが真のグローバル

ソフトバンクは新30年ビジョンの中で、30年後、時価総額200兆円、5,000社のグループ会社を持つ世界トップの企業になることを宣言。2013年7月には、米携帯電話会社3位のスプリント・ネクステルを子会社化し、着実にそのビジョンを現実へと引き寄せている。だが、源田氏にはグローバル化に対する特別な構えはなく、「ソフトバンクが進むべき延長線上にグローバルでやらなければならないことがあるだけ」だと言う。ソフトバンクではTOEIC900点以上で100万円の報奨金を支給する制度があるが、源田氏自身は、社員が英語を話せることがグローバル化であるとは考えていない。「語学はそれはそれで大事ですが、グローバル化という全体像から見れば小さな1パーツに過ぎません。TOEICの報奨金制度により、日常の会話の中で『最近、英語どう?』と自然と話題に出るような状態をつくり出す。そうすることで、グローバルに対する意識を抵抗感なく浸透させていければよいと思います」

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