J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年09月号

CASE.1 アクセンチュア リーダーがリーダーから学ぶ 経営トップからマネジャーへ 「私塾」でつなぐ力

「DNAが薄まる」業務拡大に伴い人員が倍増したコンサルティング企業が鋭敏に感じ取った危機。DNAを核に人と人のつながりを取り戻すには――。
 「私塾」という場で、リーダーが次のリーダーと語り合うことで縦・横・斜めのコミュニケーション力を培い、アクセンチュアらしさをつないでいく。同社の取り組みを追った。

田中 聡史 氏 人事部 ケイパビリティ・デベロップメント シニア・マネジャー

岩下 千草 氏 人事部

アクセンチュア(日本法人)
1989年創業、1995年設立。経営コンサルティング、テクノロジー・サービス、アウトソーシング・サービスを行う。グローバルでは、世界54カ国200都市以上に拠点を持ち、26万名以上の従業員がいる。
資本金:3億5,000万円、従業員:約5,000名(2013年5月31日現在)





[取材・文]=西川 敦子 [写真]=編集部

●背景社長の危機意識

経営コンサルティングをはじめ、テクノロジー・サービスやアウトソーシング・サービスでグローバル展開するアクセンチュア。

同社では4年前から新任マネジャーを対象とする「私塾」が設けられている。ユニークなことに、塾長は社長・副社長および執行役員が中心となって務めている。現在、14名が塾を運営しており、内容も開催頻度も塾長次第──文字通りの「私塾」だ。

部署や階層を超えたつながりを通じ、同社のカルチャーを再認識しながら次世代リーダーが育っていくことがそもそもの狙い。もともと持っている良きカルチャーを継承していくのはもちろん、現場の課題を吸い上げ、より進化させようという意図もある。同時に、現場から離れて学びと成長のきっかけを得る場として参加者のエンゲージメントが高まることにもつながる、との思いから実現に至った。

「背景にあったのは、社員の増加です。10年ほどで約2.5倍に達し、新任マネジャーのおよそ半分は、中途入社の社員が占めるようになりました。人材の多様性が増す一方で、DNAが薄れてしまうという危機感がトップ層にありました。

1962年に当社の前々身、アーサー・アンダーセンが東京事務所を設立して、ちょうど50周年を迎えるタイミングでもありました」。人事部ケイパビリティ・デベロップメントシニア・マネジャーの田中聡史氏はこう語る。

きっかけは程近智代表取締役社長の問題提起だった。「マネジャーは、アクセンチュアの成長エンジンとしてしっかり育っているのか」「会社のカルチャーやDNAは維持されているのか」「経営トップとマネジャー層の距離が遠ざかっているのでは」などの危機意識があったという。

「問題提起を受け、我々が考えたのは『そもそも当社の強み、DNAとは?』『その強みを今後50年間でどう継承し、進化させるか』の2点でした」

私塾の立ち上げは、この2つの命題に向けたアクションだった。従来のトレーニング型の研修では、課題を乗り越えることはできない。階層や部署を超え、新任マネジャーとトップ層が直接、現場を離れて語り合う場が必要だ――。

そんな確信から、2009年、パイロット版「私塾」がスタートした。塾長になったのは、程代表取締役社長自身、それに関戸亮司副社長、江川昌史執行役員である。トップ3名が率いる私塾は社内の関心を集め、試運転的に始まったこのプログラムからさまざまな効果が生まれ、翌年度から、ボードメンバーを巻き込んだ「第1期」が本格スタートしたのである。

●具体的な取り組みアクセンチュアらしい対話の場

「私塾」の対象は、新任マネジャー全員。昇格したての若手マネジャーはもちろん、中途採用マネジャーも含む。昨年度は約200 名が、今年度は140 名が受講しているという。ユニークなのは塾長と塾生のマッチング法だ。

「偶然の出会いを大切にしてほしい」という思いから、各私塾の塾生は人事部がほぼアットランダムに選んでいる。ただし、ダイバーシティに配慮し、性別のバランスはとったうえで、だ。私塾のコンセプトは塾長によってさまざまだ。

「経営マインドを高める」「自分の中の“壁”を取り払う」「グローバルにおけるリーダーシップとは」

全て英語で行われる塾もあります、と田中氏。塾長の個性を活かし、「それぞれが大切にしていることを伝える」方針を貫いてはいるものの、カリキュラムの基盤には全塾共通のコンセプトがある。

それを体現するのが、受講にあたり、塾生に配付される「DNA Book」。各塾長のインタビュー記事や、アクセンチュアのDNAにかかわるキーワードの説明などが掲載されている。事前に読んでもらい、初回の自己紹介では必ずDNAについて語ることになっている。

「たとえば、当社のDNAとして大切にされているキーワードに『クライアント・ファースト』というものがありますが、どんな場合でも顧客の言う通りに動けばよいというものではない。本当に顧客のためになるのか自問自答することこそが、アクセンチュアの存在意義。短い言葉ですが、自分はどう解釈するか、考える場になっています」(岩下氏)

塾長たちを支えるのが、私塾PMO(プログラムマネジメント担当)。人事部メンバーが一人ずつ各私塾をバックアップする。ファシリテーターを務めたり、現場組織からのフィードバックを行うなどし、塾長のモチベーションに火をつける。

「塾長が前のめりになるとその私塾は大成功するんです。多忙な方が多いこともあり、人事部としては火が消えないよう見守ってきました」(岩下氏)

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