J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年10月号

人材教育最前線 プロフェッショナル編 一流企業創りの原点は“人” 経営理念の浸透で育てる人材

「夢ある未来を、共に創る」を経営理念に掲げるSCSK。経営トップは「グループ全社員が夢を持ち、それを実現できる一流の会社になる」と社員にメッセージを送る。これに深く共感し、人材開発施策で会社を未来へと牽引しているのが、SCSK人事グループ人材開発部人材開発課長の中藤崇芳氏だ。「人材マネジメントは会社経営の基本。企業の理念と方向性を社員に浸透させ、その理念を実現できる人材を育てたい――」。会社の転機を身近に経験してきた中藤氏だからこそ成し得る人材開発・育成の形がそこにはあった。

人事グループ 人材開発部 人材開発課長
中藤 崇芳(Takayoshi Nakatou)氏
1997年CSK(現SCSK)入社。西日本事業本部から経営管理部門、再生本部経営企画部などを経て、2011年人事部人材開発課長に就任。住商情報システムとの合併後、教育を通じて融合を推進。2012年人材開発部人材開発課長。

SCSK
ソフトウェアやシステムの開発・販売をはじめITインフラの構築、ITマネジメントなど、ITに関連するあらゆるサービスを提供。2011年住商情報システム(SCS)とCSKの合併によりSCSKに。
資本金211億5,200万円、連結売上高:2,786億3,400万円(2013年3月期)、社員数(連結):1万1,797名(2013年3月末現在)

取材・文・写真/髙橋 真弓

人間力と仕事力を備えたリーダー人材の育成をめざす

人材開発の仕事が「楽しくてしかたがない」と語るのは、人材開発部 人材開発課長の中藤 崇芳 氏だ。中藤氏は2011年に人材開発課長に就任して以来、同社の人材育成に新たな風を吹き込んできた。勝ち残れる一流企業創りの原点は“人”であると信じ、“人間力”と“仕事力”を兼ね備えたリーダー人材の育成に邁進する中藤氏。その中で重視しているのが、信頼関係の構築とコミュニケーションの醸成だ。この教育観は教育現場だけでなく、それ以前の他部門で積み重ねてきた経験がつくり出した。そして、そこには中藤氏を人材開発の道へと導く、大きな転換点があった。

プロジェクトリーダーを務め信頼関係の大切さを実感

中藤氏の第1のターニングポイントは、経営管理部門時代に携わった「工事進行基準対応プロジェクト」だった。中藤氏は大学で経済学を専攻していたが、モノづくりを希望し、技術職でCSK(現SCSK)に入社した。コンピュータグラフィックスや3次元・2次元動画などを研究・開発する研究所を主な顧客として8年間、映像技術の開発に従事。クライアントと共同でデジタル放送関連の特許を取得するなど、プロの技術者として大きな成果も残していた。だが、立場が上がるにつれ、自らのリーダーシップ力やマネジメント力不足を感じ、価値観や視野を広げるために他部門への異動を希望した。そこで配属されたのが経営管理部門だった。異動の半年後、会社は持ち株会社制に移行。中藤氏は事業会社側の経営管理部門へ入り、事業会社間を連携させるための中期計画書づくりなど経営に近い場所で業務に携わっていた。そんな中で声がかかったのが、「工事進行基準対応プロジェクト」だった。「工事進行基準」とは長期の請負案件において、その進捗度合いに応じて売り上げを複数回に分けて計上する会計制度で、2009年4月より受注ソフトウェア開発業にも適用された。ソフトウェアの開発終了後、売り上げや経費をまとめて計上するそれまでの「工事完成基準」から「工事進行基準」への変更は、経理部門だけでなく、各部署が連携し、業務に落とし込む必要があったため大がかりな対応が迫られた。当初ホールディングスの経理部門が旗振り役を務めていたが、他部署との連携がうまくいかず、プロジェクトは幾度となく頓挫していた。適用開始まで半年を切り、切羽詰まった状況下で中藤氏に白羽の矢が立ったのだ。「経営管理部門に異動し3年ほど経っていましたが、これといった成果が上げられず悩んでいた時期でした。経営補佐業務にも苦労していたため、上司がチャンスをくれたのです」プロジェクトの遂行に全力で臨むことを決めた中藤氏は、まず原因を把握するために、関係者全員から直接話を聞いた。すると、誰もが業務を遂行する能力が十分あるにもかかわらず、リーダー不在のため、他責にしている現状が見えてきたという。全員が自分のことだと思ってやらなければ物事は進まない――。それを示すために中藤氏は、まず自分がプロジェクトリーダーとしての覚悟を持ち、絶対にやり遂げるという気概を行動で示し続けることが大事だと考えた。「役員への報告は全て私がやり、判断を仰ぎ、決めて帰ってくる。課題も私が解決するとプロジェクトメンバーに約束しました。その代わり、判断する材料を用意し、人がいないとか、忙しいを理由にせず、決定したことはきちんとやってほしいと頼みました」中藤氏の強い気持ちと行動力で周囲にも変化が現れ、プロジェクトは順調に進み始めた。だが1月に入り、問題が起こった。同業他社と自社との制度適用範囲に差があることがわかったのだ。全ての請負契約案件を適用範囲としていた同社に対し、他社では範囲をある程度限定し、それが妥当な判断として認められつつあった。「実際、範囲を狭めなければ現場にかなりの負荷がかかることはわかっていました。そこで他社と同様に適用範囲を狭めることを提案したのですが、上役からメンバーまで全員に反対されました。改訂の目的は単なる会計上の改善ではなく、改訂を通じて品質や生産性、行動を変えていくということ。適用範囲を狭めたら、その目的が果たせないと考えていたのです」適用範囲を狭めてもよいという選択肢ができ、現実的に見て理に適っているならば選ばない理由はない。生産性を高めるなら別のアプローチも考えればよい、と中藤氏は関係者全員を説得して回った。「当時の私は事業会社の経営管理部門の一社員に過ぎません。にもかかわらず徐々に話を聞いてもらえるようになり、最後は変更を実現しました。日頃の仕事を通じて信頼関係を積み重ねることの大切さを実感したのはこの時です。信頼関係があれば、いざという時に話を聞いてくれる。リーダー人材を育成するなら、周囲との信頼関係を築けるようなフィールドをつくることが大切だと思いました」

課題解決を通して生まれた人材育成への興味と決意

中藤氏が人材育成に対する興味を持つきっかけとなった第2のターニングポイントが「新人研修」だ。工事進行基準対応プロジェクトの目処が立つと、今度は新人研修のテコ入れを命じられた。当時、人材開発部門が現場から集めてきた若手中堅社員を育成し、その社員が講師役として新人研修を行っていた。中堅社員が実際に新人を育てることでマネジメントを学ぶ場として30年以上続いていたが、肝心の新人に教育が行き届かず、配属先のニーズとも合っていないことが課題となっていた。採用に問題があるのか、教育がおかしいのか、原因を調べ解決するのが中藤氏のミッションだった。中藤氏は現状を内側から把握するために、350人の新人を担当する13人の講師のうちの一人として、あえて現場に身を置いた。「原因の1つは新人研修の目的の混乱でした。現場から集めた社員を鍛える場なのか、それとも新人を一人前にする場なのか、曖昧だったのです。

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