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月刊 人材教育 2013年10月号

CASE.2 楽天技術研究所 研究者の事業的視野を広げる 研究所内外での人的交流を深め 多様で柔軟な思考力を身につける

多様性を持って日々変化し続けるネットビジネスの世界では、さまざまな分野の人とかかわり、スタッフの視野を広げられるかどうかが事業発展のカギとなる。楽天グループの技術戦略の中核を担う楽天技術研究所では、研究者が「深く考える」前提となる事業的視野を広げるためのさまざまな取り組みを行っている。

森 正弥 氏 楽天 執行役員/楽天技術研究所 所長

楽天技術研究所
楽天の研究開発部門として2005年に設立。今後大きく成長する技術のシーズから、インターネットを活用した人々の生活を豊かにする新しいサービス・事業の可能性を創出することをミッションとしている。東京・ニューヨークの2拠点があり(年内にパリにも開設予定)、約50名のスタッフが在籍。

[取材・文・写真]=増田 忠英

●背景インターネットビジネスに不可欠な多様な視点

国内最大級のインターネット・ショッピングモール「楽天市場」をはじめ、さまざまなネットビジネスを展開する楽天グループ。その技術戦略の中核を担うR&D部門が楽天技術研究所だ。所長の森正弥氏は「当研究所はコンピュータサイエンスの博士号を持った人材や現職の教授などアカデミックなメンバーを中心に構成されており、『読み・書き・考える』といったことは一通り身につけているといえます」と話す。しかし、学術の世界で身についた科学的アプローチだけでは、ネットビジネスにつながるような研究を行うには不十分であるため、ビジネスの発想も取り入れて研究をハイブリッドにしていくことが課題だという。

「特にインターネットビジネスには、他のビジネスにはない思考法が求められます。キーワードは『集合知』『ロングテール』『スケーラビリティ』。この3要素を無視して、インターネットの技術やサービスを考えることはできません。何かテーマを決めてロジカルシンキングのアプローチで分析を進めていっても、この3要素が入らなければ、研究内容が絵に描いた餅になりやすいのです」(森氏、以下同)

「集合知」とは、多くの人々から寄せられた情報の集まりのこと。インターネットコンテンツの多くがこれに当たり、人々がどう動くかに大きく左右される。「スケーラビリティ」とは“拡張性”であり、利用者が拡大しても柔軟に対応できるシステムが求められる。そして「ロングテール(現象)」とは、あまり売れていない大多数の商品の売り上げが、少数のヒット商品の売り上げを凌駕している状態。実はネット販売ではこうしたロングテールの売り上げが、全体の8割を占めるといわれる。「これらを踏まえると、インターネットは多様性の世界といえます。そのため、さまざまな分野の人とかかわり、視野を広げることが重要なのです」

●具体的な取り組み事業部内に席を置き視野を広げる

そのための仕掛けの1つが、3つの職種構成だ。研究所のメンバーは、アカデミックな理論を追求する「サイエンティスト」、サイエンティストの理論をシステムにつくり上げる「テクノロジスト」、研究内容を事業活動と結びつけて調整する「コーディネーター」の3つの職種に分かれている。各職種のメンバーがそれぞれの立場から議論することにより、互いの視野が広がる。また、楽天の各部門との人的交流も積極的に進めている。その1つに、カイゼン手法やソフトウェア開発の現代的手法であるアジャイル型開発手法の専門家との交流がある。研究所のメンバーが各手法のトレーニングを受けたり、あるいは研究プロジェクトへ各専門家に参加してもらうことで、効率的な業務の進め方を研究に取り入れられるようにしているのだ。さらに今後に向けて、クオリティアシュアランス(品質保証)やセキュリティの専門家との交流も検討している。

「IT業界に要求されるスキルレベルは年々高まっており、一人で全ての領域をカバーすることはほぼ不可能になってきています。そのため、社内の他分野の専門家と交流を持ってもらうことで、研究者の視野を広げていきたいと考えています」

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