J.H.倶楽部

無断転載ならびに複製を禁じます。なお内容は取材・掲載当時の情報です。

月刊 人材教育 2013年10月号

人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第13回 『蝉しぐれ』

川西 玲子(かわにし れいこ)氏
1954年生まれ、メディア・エンタメ時評。中央大学大学院法学研究科修士課程修了(政治学修士)。シンクタンク勤務後、企業や自治体などで研修講師を務めつつ、コメンテーターとして活動。著書に『歴史を知ればもっと面白い韓国映画』『映画が語る昭和史』(旧・ランダムハウス講談社)等がある。

『蝉しぐれ プレミアム・エディション』
DVD発売中 ¥4,935(税込)
発売元:電通/ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
販売元:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント
市井の人々の強さと優しさを描き続けた作家・藤沢周平の同名小説を、鬼才・黒土三男が15年の歳月をかけて映画化。劇場ロングラン大ヒットを記録した、藤沢文学の最高傑作。

藤沢周平の代表作の1つである『蝉しぐれ』。今回、この小説について改めて調べてみて、意外なことがわかった。この小説は80年代の、バブル好景気真っ盛りの頃に新聞に連載されたのである。内容からして、もっと前に書かれたものだと思っていた。この小説が支持されて、その後テレビドラマにも映画にもなったことを思うと、少なくともある世代以上の日本人には、「蝉しぐれ」に胸を打たれる感性が残っているということか。物語は、海坂藩という架空の藩を舞台に進む。牧文四郎は、父親がお家騒動に巻き込まれて切腹。家禄を減らされて母親と二人、雨漏りのする長屋で暮らすことになる。家が隣同士だった娘ふくとは相思相愛だが、お互い言葉に出して想いを伝えたことはない。そして、ふくは江戸の上屋敷に勤めることとなり、やがて藩主の子を身ごもる。それから20数年。藩主が亡くなり、一周忌を機に仏門に入る決意をしたふくは、「今生の未練」で文四郎に会いにくる。そこで二人は、抑えに抑えてきた互いの気持ちを、初めて口にするのである。私はたまたまテレビドラマの初回を観て、「何と辛い話だ」とあっけにとられながらも目が釘づけになり、最後まで観てしまった。このドラマは多くのファンを得て、繰り返し再放送された。

世界が認める日本人の姿

映画版はドラマ版と同じ監督が、また違う演出をしている。映画版のテーマは、強い日本人でも世界で勝てる日本人でもなく、美しい日本人である。感情をあまり表現せず、肝心なことは口に出さない。運命に真っ向から立ち向かうことはないが、秩序を尊重し、自分の仕事に黙々と励んで悔いがない、そういう日本人だ。

こちらはJ.H.倶楽部会員限定記事です。
ご入会後、続きをお読みいただけます。

残り:714文字

/

全文:1,427文字

【入会・年会費無料】

J.H.倶楽部は人事の仕事に役立つ特典が満載です!

  1. 総数2000本以上の人事の実務に役立つ記事(※)が閲覧可能
    ※専門誌『Learning Design』(旧『人材教育』)の記事
  2. 新サービス・お役立ち情報(調査報告書・ホワイトペーパーなど)の先行案内
  3. 会員限定セミナーへのご招待/講演動画・配布資料の閲覧
  4. 興味関心に沿った必読記事を、メールマガジンでお知らせ!