J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年11月号

連載 人材教育最前線 プロフェッショナル編 真のグローバル企業へと導く人材力の形成

アジアを中心に世界18カ国に製造および営業拠点と5万3,000人の従業員を持つミネベア。海外従業員は5万人を超え、海外生産・販売比率は8~9割を占める。だが、人事総務部門 人材開発部 部長の小田原達郎氏は、「日本的な企業色が強く、真のグローバル企業としての成長はこれからだ」と語る。ダイバーシティが拡大する中で、技術力・製品力といった従来のビジネスの勝ちパターンだけでは通用しなくなるという。「これまで培った経験をつぎ込み、集大成にしたい」。めざすのは、「人材力」という新たな強みの確立だった。

小田原 達郎 (Tatsuro Odawara)氏
1986年安田信託銀行入行。1991年ミシガン大学ビジネススクール留学、MBAを取得。1999年同行を退職後、アーサー・D・リトルジャパン、日本ゼネラル・エレクトリック、AIGなどを経て、2012年ミネベア入社。人材開発部 部長として教育の刷新に取り組む。

資本金682 億5,800万円、連結売上高:2,824億900万円(2013 年3月期)、連結従業員数:5万3,327名(2013 年3月末現在)

社員全員が意欲を持ち楽しく働く状態が理想

「社員全員がハッピーに働くことができる状態が理想です」と語るのは人材開発部 部長の小田原達郎氏だ。

小田原氏は大学卒業後、安田信託銀行に入行。その後、外資系企業を歩み、人事や組織改革などに携わってきた。それらの豊富な経験と知識を買われ、2012 年7月、ミネベアに入社した。

小田原氏の理想の源流をたどると、銀行員時代に遡る。

安田信託銀行には13 年間勤めた。業務開発部や営業、経営企画部などさまざまな部署に携わったが、中でも長く席を置いたのが人事企画部だった。その業務において、新人採用には特別な思いがあったという。

「自分が採用した人間が会社に入ってハッピーにやっているか、どう過ごしているかは常に気になっていました。まして、うまくいっていないという話を聞けば、自分のことのように心配しました」

そんな中で1997年、山一證券の倒産をはじめとする金融危機が起こった。小田原氏は人事企画部と経営企画部を兼務しながら経営改革に携わった。人事制度の変更や組合との交渉をはじめ、当時まだ使いこなせる社員が少なかったパソコンを駆使し、全社員の給与の変更が経営全体にどう響くかを試算し、一晩で会議に必要なデータを揃えるというような日々が続いた。

「ネガティブな業務でしたが、仕事への意欲は高かったのです。自分が採用した後輩たちや同僚のためにも頑張るという気持ち、そして周囲からの期待に応えたいという気持ちがありました。経営レベルでいろいろなことをやり、良い会社にしていくことが、自分にとって働くうえでのモチベーションの根幹になったのはこの時です」

その後、小田原氏は経営改革で得た経験を生かし、外資系の経営コンサルティング会社であるアーサー・D・リトル ジャパンに転職。「社員が目標や、やりがいを持って楽しく働くこと」へのこだわりを持ち続けていた小田原氏は、顧客に対しても社員のやる気やモチベーションの育成を分析的に組み込んだ提案を行ったという。

「社員が働くことと企業が利益を出すことは相対する概念ではないと考えていました。社員が楽しく働いていれば能力が伸び、業績も上がる。常にそう信じていました」

物事は構図で考え俯瞰的視点で見る

小田原氏は、アーサー・D・リトル ジャパンの後、日本ゼネラル・エレクトリック、サン・マイクロシステムズなど大手外資系企業を経て、2003 年、AIGに入社した。当初はヒューマンリソースマネジメント部に配属されていたが、同社が組織開発に着手すると、人事トップの推薦を受け、OrganizationDevelopment Officeのチームリーダーに就いた。そこで、まず小田原氏が着目したのがモチベーションの向上だった。

外資系企業は国籍が多様で、女性も多く活躍している。日本企業と比べ、ダイバーシティは格段に広い。モチベーションの保ち方も、ある人はお金であったり、時間の自由度であったり、次のキャリアに向けての経験であったりとさまざまだ。だが、小田原氏は「時間や資金が限られたリソースの中では、物事を構図で考えることを忘れてはいけない」と話す。

実は小田原氏は、銀行員時代、MBAを取得するため米ミシガン大学のビジネススクールに留学している。顧客の不動産や都市開発案件を扱う中で、企業戦略やマーケティングといったセオリー、スキルを学ぶために社内の派遣制度を利用して渡米した。そこで一気に視野が広がったという。

「それまで地面だけを見て歩いていたような視点が、空に飛び上がって鳥瞰するような視点に変わりました。たとえば、一生懸命に営業しているのにうまくいかない、売っても売っても赤字から抜け出せない。そういった状況も、視点を変え、俯瞰すると全体の構造が見え、原因が見えてくる。すると『もっと頑張ろう』というレベルにとどまらず、より具体的で発展的な解決策が展開できるようになる。モチベーションの向上も同様です」

“モチベーションの向上”という一視点ではなく、会社がどう将来をめざし、社員がどのように働いていくことがベストなのか──。その中で小田原氏がこだわったのが、「社員全員がハッピーになる」という原点だった。

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