J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年12月号

グローバル調査レポート 第4回 今こそ求められる人事機能の大転換 ~2013 Towers Watson HR Service Delivery Surveyから~

今回は、「2013 Towers Watson HR Service Delivery Survey」からである。HR Service Deliveryとは、「人事のサービス・機能の提供のあり方」を意味する。この調査は、人事部門の役割・機能・サービス内容・生産性や人事部門が直面する課題、人事情報テクノロジー等に関し、タワーズワトソンが過去16年にわたり毎年実施しているものである。そこからわかった、今後の人事部門がめざすべき方向性と具体策とは。
実施:2013年1月~2月有効回答:グローバル企業1,025社

鈴木 康司(すずき こうじ)氏
タワーズワトソン HRトランスフォーメーション・HRテクノロジータレント・リワード セグメント データ・サーベイ・テクノロジー部門 ディレクター
中国・アジアをはじめとしてグローバルに展開する日系企業の組織・人材面でのコンサルティングに従事。主に、海外拠点の可視化、グローバル人事の構築・導入支援、次世代リーダーの育成、サクセッションプラン等のコンサルティングをメインで担当。

1 今、人事組織に求められる改革

従来、日本企業だけでなく、欧米企業の人事の多くの組織は「採用」「教育」「給与」「福利厚生」「労務」等、人事のプロセス・タスクによって分けられていた(本社人事だけでなく、部門人事等も同様のことがいえる)。これは、「人事」にとっての効率性を追求した組織モデルであり、内部論理に基づくものといえる。

しかし、現在のように日本国内あるいは欧米での構造改革を進める一方で、新興国での事業拡大を図るような状況において、従来型の人事組織では、事業が抱える人の課題に対して的確な対応ができない。事業から依頼された事項を「後追い」でフォローするケースも散見される。M&A・事業の統廃合はその典型例だ。事業の統廃合のプランや交渉についてかなり内容が固まった段階でようやく、人事部にデューデリジェンス(人材や組織に関する調査)や人員削減の依頼が来る、という話をよく耳にする。これでは人事は「事業の後追い」「オペレーション中心」などと言われても仕方ないだろう。そして、事業部門の抱えるニーズは、人事の仕事としてよく挙げられる「採用」「給与」等だけで対応できるものではない。

たとえば「事業戦略を実現するための人員計画」があるとする。これは事業戦略に沿って○年後に何人必要なのかを考える、という単純な話ではない。事業戦略を実現するためには、どのようなスキル・知識・経験を持った人材が、どの地域・事業において何人必要になるのか。そしてそのマーケットには、そもそもそういう人材がいるのか。いるとすれば福利厚生を含めた人件費はいくらなのか。もし、マーケットにいないとすれば、これから経験の浅い人材を採用して教育することで対応できるのか。それでは間に合わないなら、他の地域から異動・転勤させるのか等を調査・検討するということなのである。

こうした人員計画1つとっても、それを考えるためには、従来の「採用」担当、「給与」担当、という括りで対応しきれないのは自明である。

欧米企業の場合、1990 年代より人事組織・機能の再編に着手してきた。当時の欧米企業の人事は「オペレーション」中心で、「企画・戦略」機能が弱かったのだ。そこで、当初は人事機能の生産性を高め、コスト削減を目的に人事組織の再編が行われた。

そして2010 年代になり、欧米企業はさらなる人事機能の再編に取り組んでいる。喫緊の課題は、ビジネスに対する貢献を高めるためのコンサルテーションや戦略機能の強化だ。中でも、ビジネスパートナーの強化が求められている。

2 人事組織・体制の改革内容

本調査で、2013~2014年にかけて人事部門の組織体制の変更・改革を検討しているかを聞いたところ、検討している企業は全体の約4割という結果であった(図1)。

その主な目的・理由は、「さらなる効率性の実現」(74%)や「品質の改善」(53%)であり、「コスト削減」は37%にとどまっている。単なるコスト削減ではなく、人事が提供するサービスの質・内容そのものを見直そうとする企業が多いことを示している。

図2は過去18カ月に実施した人事改革を示している。47%の企業は人事プロセスの見直しを実施し、39%の企業は、ラインマネジャーによるマネジメント能力の強化に取り組んだ。そして35%の企業が、事業に対し直接貢献するHRビジネスパートナーの再強化に取り組んでいる。

図3は、2013 ~ 2014 年にかけて実施予定の人事課題を訊いたものだが、人事部門の組織体制を従来型の「役割・機能型組織」から、「HRビジネスパートナー」「COE」(センターオブエクスパティーズ:知の集積地)、「シェアードサービス」の3つの役割を持つ組織に変革しようとする企業が約5割であった(図4・5)。

この3つの組織のうち、「HRビジネスパートナー」とは決して「御用聞き」ではなく、ビジネスリーダーの人事面での参謀としての役割を担う。

COE とは、特定領域の専門性を蓄積し、プログラム・制度・ポリシーの立案・実行を行う組織。そして「シェアードサービス」(以下SS)は、ITテクノロジーを駆使し、よりシンプルなプロセスを構築。ラインマネジャーの自己責任で権限委譲を図り、人事のオペレーションを減らしつつも品質を維持したまま、効率化をめざす組織である。

中でもとりわけ、「HRビジネスパートナー」の役割は重要だ。この第一義的役割は具体的には、ビジネスラインが事業戦略実現に向けて、人に関する最適な決断・課題解決ができるように、戦略的なコンサルテーション・ソリューションを提供することである。そのためには、以下が期待される。

○事業戦略に合致した人事・人材戦略の策定と実施

○人事に関する専門性に加えて、ビジネスに関する深い知識・理解に基づき、事業戦略を実行するうえで、人に関する課題に対して解決策・ソリューションを提案し、実行する

つまり、人に関する課題解決、人事戦略の策定・実行を通して、事業に対する直接的貢献が求められているのである。また、ワンストップ(1カ所で全てのサービスを提供すること)で人事に関するサービスを提供することも求められる。

当然のことながら、前記全てをHRビジネスパートナーが対応するのではなく、COEやSS等の人事部内の他部門との連携も欠かせない。

3 ビジネスパートナー育成のカギとは

この3つの組織の観点から見た、現在の多くの組織はどうか。図6は、人事部門のスタッフの内訳を示したものだが、興味深いことに、企業規模にかかわらず、HRビジネスパートナーの比率は一定である(15%程度)。これは2012年の調査と同様の結果であった。HRビジネスパートナーの重要性は以前より叫ばれていたが、その育成にはどの企業も試行錯誤をしているのが実態なのだ。

ではHRビジネスパートナーは、どのように育成すべきか。必要とされるスキルとはどんなものなのか。人事部の実務経験が長いからといって、そのままHRビジネスパートナーになれるわけではない。また、組織名称やポジションを「HRビジネスパートナー」に変えたとしても、その役割・機能が進化しなければ、結局は「御用聞き」や従来型の部門人事業務(日常の問題解決)に終始してしまい、ビジネスリーダーからの信頼は得られない。

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