J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年12月号

連載 人材教育最前線 プロフェッショナル編 現場経験が生み出す会社と日本を変えていく組織開発

人々と社会の課題を情報技術で解決する「課題解決エンジン」をビジョンに掲げるヤフー。そんな同社の人材開発を担っているのが、ピープル・デベロップメント本部 組織開発室 室長の吉田毅氏である。現場で多くの上司や部下と共に、いくつものプロジェクトに携わってきた吉田氏は、その経験と行動力で人事制度改革を牽引している。「インターネットが持つ可能性で、日本、そして世界をより良くしたい」と語る吉田氏。手がける組織・人材開発の取り組みが日本企業のモデルケースとなり、日本全体の活性化に貢献する日をめざしている。

吉田 毅 (Takeshi Yoshida)氏
2003年ヤフー入社。営業企画やウェブプロモーションなどの分野で13のチームの立ち上げと運営に携わり、さらに、インターネットのオープン化推進企画を通じて同社の事業拡大を推進する。2012年4月、人事本部に異動。同年7月より組織開発室室長を務め、現在に至る。

ヤフー
1996年設立。インターネット広告、イーコマース、検索エンジン、ポータルサービス等を提供。“課題解決エンジン”を企業理念に掲げ、インターネットを通じて、人々の生活を豊かにすることをめざす。
資本金:80億3,700万円、連結売上高:3,429億8, 900万円(2013年3月期)、連結従業員数:4,514名(2013年6月30日現在)

取材・文・写真/髙橋真弓

メンバー一人ひとりを理解して初めてチームがうまく回る

ピープル・デベロップメント本部 組織開発室 室長の吉田毅氏がヤフーに入社したのは2003 年1月。通信・インターネット産業に将来性を感じ、同社を選んだ。当時の社員数は500人程度で、まだまだベンチャー企業の色が強かったという。

入社後、オークション事業部に配属された吉田氏はeコマースの事業開発に携わったが、半年後の組織替えで営業企画や商品企画、ウェブのプロモーション企画を行うセクションへと異動した。

ヤフーが事業を拡張する真っただ中、吉田氏は4年間で13のチームの立ち上げとマネジメントを担当した。新しいタスクやプロジェクトが次々と生まれ、常に2~3のチームを兼務しながらチームビルドを行い、かかわった部下は延べ300 人。その中で、「どうしたら人が動きやすくなるか、どうしたら意欲を持てるか」と悩んだこともあったという。

「やる気のスイッチはマネジャーや周囲が押すものではなく、本人でなければ押せないと思っています。内的な動機づけで人は強く長く動くとすれば、本人がスイッチを入れやすい環境をつくることが重要で、実務の中でそれをきちんとつくりたいと考えました」

そんな吉田氏が、「完璧だ」と思ったチームがあったという。それは吉田氏が任された7つめのチーム。チーム全体の雰囲気も良く、自分の伝えたいことも伝わり、メンバーが考えていることもよくわかった。さらに、ぶつかるであろう障壁もある程度予見でき、一緒に解決できた。何より一人ひとりが主体的に取り組めていたという。

「マネジメントとはこういうものだ、チームビルドとはこういうものだと満足しました。しかし、次のチームでは思うようにうまく回らない……。それは当たり前で、集まっている人も違えば、取り組んでいるミッションも違う。前のシチュエーションで、前のメンバーだったから、その時のやり方が合っていただけであって、それが全てに通じるわけではないのです」

一人ひとりがどういう状況なのか、どういう状態なのかをしっかり理解するというステップを踏んで、チームを丁寧につくっていかなければうまくいかない――。

「そんな当たり前のことに、その時ようやく気づいたのです。そこから自分のマネジメントスタイルが変わっていった気がします」と吉田氏は振り返る。

オープン化戦略で迎えたヤフーと自身の転換点

現在、ヤフーのトップページを見ると、「食べログ」「クックパッド」など他社のサービスが並んでいる。これは「Only1戦略」と呼ばれ、ヤフーの成長戦略の一領域における取り組みである。この戦略のベースとなっているのがオープン化戦略である。

ヤフーは2007年の「Yahoo!ウォレット」(オンライン決済代行サービス)の外部企業への提供を皮切りに、広告やI D認証、メールサービスなど、ヤフーの有するプラットフォームを外部に開放し、企業や個人がそのプラットフォーム上にさまざまなサービスをつくることができるようにした。IDやサービスの仕様、インターフェースをディベロッパーに開放することで顧客との接点を増やし、新たなビジネスモデルの確立をめざしたのだ。

その際、吉田氏はオープン化推進企画セクションへ異動。当時、直属の上司が、現社長の宮坂学氏だった。

「それまで私が携わってきたのは、どちらかというと裏方の仕事でした。ですが、オープン化推進企画に移り、メディアや広告を長年やってきた宮坂たちと、どう広告をオープンネットワーク化するか、それに伴いメディアをどう出していくかといった仕事に取り組むと、以前とは異なる刺激があり、新しい仲間も広がりました。オープン化の推進はヤフーにとっても、私にとっても大きな転換期だったといえます」

大学院でマネジメントを学び100人の経営者と会う

オープン化推進企画の中で新たな刺激を受けた吉田氏は、マーケティングをより体系的に学ぼうと考え、明治大学の夜間大学院に通い始めた。

「ところが野田稔先生のマネジメントの授業が非常に面白く、マネジメントに興味を持つようになり、ゼミも野田先生を選びました」

現場でOJTの統括やチームのマネジメントに携わる中で、成功や失敗を経験してきた吉田氏は、ここで一度しっかり学び、形にしたいという気持ちもあったという。

そこで、リーダーシップが発揮される時の行動心理や、リーダーとフォロワーとの間にどのような関係性があるのかといった土壌形成などを研究し、現場のマネジメントの中で生かせる実学的な勉強に取り組んだ。

「教育に興味を持ったのはその頃からでした。今思えば、これが今のキャリアをつくっている直接的な因子の1つかもしれませんね」

こうして大学院で2年間学び、卒業を迎えた吉田氏だったが、ある疑問があったという。

「フィリップ・コトラーやドラッカーの理論をたくさん学びましたが、私の頭に残ったのは、“みんな、本当にその通りにやってるの?”という疑問でした」

そこで、この疑問を確認しようと、“1年で100人の経営者と会うプロジェクト”を一人で立ち上げた。最初は会社や大学院の仲間をつてに、知り合いの経営者を紹介してもらった。しかし、一人ひとりに手紙を書き、アポイントを取って会っているのでは、達成は至難の業である。

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