J.H.倶楽部

無断転載ならびに複製を禁じます。なお内容は取材・掲載当時の情報です。

月刊 人材教育 2013年12月号

CASE.4 ベネッセコーポレーション 実務家が語る④ 試行錯誤を重ねた「攻め」の20年

「福武書店」から「ベネッセ」へ。
先を見続ける経営に合わせて、人事制度も大胆に変更してきた同社。
この20年は、大胆な変更とその調整の繰り返しだったといっても過言ではない。
同社の「攻め」の姿勢が表れた20年を振り返る。


村上久乃氏人財部 部長 兼 ベネッセホールディングス グループ人財開発部
流郷紀子氏人財部 人財開発課 課長

ベネッセコーポレーション
1955年に福武書店として創業。「教育」中心の会社から、「海外教育」「生活」「シニア・介護」「語学・グローバル人材」を含めた5領域に事業を展開、2009年10月より持株会社体制に移行した。ベネッセコーポレーションの名称は新設分割会社に引き継がれ、現在は、通信教育『こどもちゃれんじ』『進研ゼミ』など学校外教育を行う「教育」と、『たまごクラブ』『ひよこクラブ』や『サンキュ!』などの雑誌で、女性やその家族を応援する「生活」を主な事業とする。資本金:30億円、売上高:2,447億円、従業員数:3,378名(2013年4月現在)

[取材・文]=木村美幸 [写真]=本誌編集部

● ~ 1980年代創業者の求心力で大成長

ベネッセコーポレーションの前身である「福武書店」が岡山県で誕生したのは1955年(本社:岡山県岡山市、東京本部:東京都多摩市)。生徒手帳の発行や、高校生向け模擬試験の開催と徐々に事業内容を広げ、1969年には通信教育講座「進研ゼミ高校講座」を開講。その成功を受け、講座の対象は中学生、小学生、幼児と次々に拡大していき、通信教育は福武書店の基幹事業となった。

「この成功を牽引してきたのが、創業者の福武哲彦です。彼の言うことが福武書店のルールであり、彼の存在そのものが全社員の求心力でした」

そう語るのは、人財部 部長の村上久乃氏だ。

しかし1986 年、福武哲彦氏が急逝。経営のバトンが福武總一郎氏(現会長)に渡されたのを契機に、同社にとっての激動の90 年代が始まった。

● 1990年代個人の自主性に多くを委ねる

1990 年、同社はラテン語の「bene(よく)」と「esse(生きる)」を組み合わせた造語「Benesse」をフィロソフィー・ブランドに掲げ、新たな企業理念を導入する。

「社長のカリスマ性で社員のモチベーションを支えていた会社から、企業理念とそれをシンプルに言い表した『よく生きる』というフィロソフィーで社員の心を引っ張る会社へと、大きく転換したのです」(村上氏)

そして、より多くの人々の「よく生きる」の実現を支援するため、出産・育児に関する情報誌『たまごクラブ』『ひよこクラブ』の創刊や、介護事業への参入などに着手。さらにはベルリッツインターナショナル(現ベルリッツコーポレーション)のグループ化や、1989年に台湾を皮切りにスタートした海外進出など、事業の多角化を推し進めていった。

「フィロソフィー・ブランド『ベネッセ』の導入以降、『出版だけにとどまらない』と会長は常に口にし続けていましたので、事業の多角化は必然的なものとして受け止められました」(村上氏)

そして「ベネッセコーポレーション」へ社名を変更した1995 年、人事制度にも大きな改革が行われた。

「1991年入社の私は、1995 年人事制度改定の知らせを事業担当の一社員として聞きました。キーワードは、自由と自己責任。実力主義を徹底する、社員全員が自分自身で自分の人生を考え、選択し、会社に自由に貢献してほしいというメッセージに、とても驚いたのをはっきり覚えています。社員一人ひとりが『よく生きる』ということを考えて実践し、自立的に成長すれば、結果的に会社の業績が伸びるであろうというロジックですよね」(村上氏)

多くの改革の中から、ここでは2つの制度を紹介したい。・福利厚生カフェテリアプラン

「よく生きる」を社員自身が体現できるような人事制度とは何か、という問いから生まれた制度。従来の家族手当や住宅手当のような、属人的な手当は段階的に廃止された。

「コスト削減が目的ではないので、福利厚生を減らしたわけではありません。自分の人生の充実のために必要な福利厚生プランを自由に選べる仕組みにしたのです」(村上氏)

その具体例について、人財部の流郷紀子氏に聞いた。

「毎年全員一律のポイントが付与され、それをお子さんのベビーシッター代や人間ドックの費用、あるいは家賃や住宅購入の頭金などの補助に、自分で選んで使えるというシステムです。ファイナンシャルプランナーに相談をするための費用に行使するといった選択肢もあります」

勤務体系については、スーパーフレックスタイム制度を導入。

「会社に約束した成果にコミットできれば、多様な働き方を認める、ということです」(村上氏)

・能力開発ポイント制度

改革は研修にも及んだ。新入社員研修、入社3年目や昇格のタイミングの研修といった、ごく基本的な研修だけを残し、スキル系や語学など、各自の成長に必要だと思う能力開発に関しては、本人が自由に選んで行うことに。

「社内で開催する研修や講座だけでなく、社外の公開講座も選択の対象としました」(流郷氏)

会社側は、今後の事業展開の概要を示し、そうした事業を推し進めるような能力を各社員が自立的に開発していくことを期待したわけだが、そこに問題が発生した。

「もちろん、多くの社員は会社の方針を理解し、事業の方向性に沿った能力開発を実践していたのですが、『業務には関係ないけれどポルトガル語を学びたい』『自分への刺激になるから、美術の勉強をしてもいいか』といった社員も出てきました。そこで、全社員一律に全てを委ねてしまったことへの反省を踏まえ、事業に直結していて誰でも自由に受講できるものと、申し込む前に上司の許可が必要なものを分けるなど、運用面に少しずつ修正を加えていきました」(村上氏)

● 2000年代

こちらはJ.H.倶楽部会員限定記事です。
ご入会後、続きをお読みいただけます。

残り:2,469文字

/

全文:4,937文字

【入会・年会費無料】

J.H.倶楽部は人事の仕事に役立つ特典が満載です!

  1. 総数2000本以上の人事の実務に役立つ記事(※)が閲覧可能
    ※専門誌『Learning Design』(旧『人材教育』)の記事
  2. 新サービス・お役立ち情報(調査報告書・ホワイトペーパーなど)の先行案内
  3. 会員限定セミナーへのご招待/講演動画・配布資料の閲覧
  4. 興味関心に沿った必読記事を、メールマガジンでお知らせ!