J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年12月号

CASE.1 イオン 実務家が語る① 「教育は最大の福祉」を貫いた20年

国内最大規模の小売グループであるイオン。創業以来、積極的な社員教育の伝統が脈々と受け継がれ、グループの成長を支えてきた。次なる目標は2020年の小売業アジアナンバーワン。そのための人材戦略キーワードは「多様性」だ。

石塚 幸男 氏 グループ人事最高責任者

イオン
1969年、前身となるジャスコが誕生。その後、社名をイオンへと変更し、現在はイオングループとしてGMS(総合スーパー)事業を核にディベロッパー、金融、専門店、サービスなど12の事業を展開。売上高に当たる営業収益は2期連続で国内小売首位。
資本金:1,990 億5,400万円 グループ営業収益:5兆6,853億円、グループ企業数:約250社、グループ従業員数:約41万人

[取材・文]=熊谷 満 [写真]=イオン提供、本誌編集部

● 背景(国内からアジア市場へ)成長を支えた人材力

景気に敏感な小売業にとって、この20年は間違いなく試練の連続だった。バブル崩壊と消費の低迷、薄日が差したところでのリーマンショック……環境の激変は業界再編を促し、市場からの撤退を余儀なくされた企業も多い。

しかし、そうした逆風の中で順調に業容を拡大してきたのがイオングループだ(イオン本社:千葉市美浜区)。2012年度の営業収益は約5兆7,000億円。2期連続で国内小売首位の座を守った。2013 年度中間決算でも過去最高の営業収益を記録。プライベートブランドの「トップバリュ」の好調、さらに小売業のみならずディベロッパー、金融、eコマースと幅広いビジネス展開がその業績を後押ししている。

現在、グループ従業員はおよそ41万人。地方中核都市並みの規模の人材がイオンの旗のもとに集い、その隆盛を支える。グローバル展開も順調に進み、中国、東南アジアを中心にGMS(総合スーパー)、SM(スーパー)、コンビニ(ミニストップ)などを多数出店。イオンでは2020 年までにアジアナンバーワンの小売グループとなる目標を掲げる。

「イオンを支えてきたのは何といっても人材の力でした」。グループ人事最高責任者の石塚幸男氏はこの20 年を振り返り、そう力を込める。

岡田屋、フタギ、シロの3社の共同出資によりジャスコが誕生したのが1969 年。その人材育成の礎を築いたといえるのが、初代ジャスコ社長の岡田卓也氏(現名誉会長)の実姉であり、人事を統括していた小嶋千鶴子氏(現名誉顧問)である。

「教育こそ最大の福祉」──賃金や福利厚生といった目に見えるものだけが重要ではない。個々の能力を開花、体内化させる企業内教育こそ社員への最大の福祉である──小嶋氏のこの理念を抜きにイオンの人づくりを語ることはできない。その思想はバブル崩壊後の荒波を乗り越えさせ、グローバル企業として躍進する大きな原動力ともなった。

ジャスコは創業後まもなく、当時としては珍しい企業内大学「ジャスコ大学」を設置し、社員たちが将来、自らがめざすポジションに就くための知識やノウハウを学ぶ場をつくった。これは現在も「イオンビジネススクール」として引き継がれ、社員のキャリアアップに活用されている。

また、当時は国内ローカルチェーンであったジャスコだが、「IN(インターナショナル)社員コース」を設置し、将来の海外出店や外国での合弁事業を担うグローバル人材の育成にも早々と着手していた。ジャスコが初めて海外に事業を展開したのが、マレーシアで1984 年のこと。IN 社員コースを設置したのが1975 年。「海外からの仕入れ業務などは商社に委託していた」(石塚氏)という時代にあって、将来の海外進出を視野に入れた先見性、戦略性に驚かされる。実際、マレーシアの初出店時に派遣されたのは、IN 社員コースを修了した社員たちだった。

「彼らの活躍によってアジア市場でのいいスタートダッシュが切れ、その後の成功につなげることができました。たとえ順風満帆でない時も、先を見すえた教育投資だけは必ず維持する。そうした小嶋の考え方が人材の成長、イオンの成長を支えてきたことは間違いありません」(石塚氏、以下同)

● 次世代経営者育成への課題と施策2020年までに350名の経営者が必要に

事業の多角化戦略はイオングループの大きな特徴といえる。現在、主力のGMS 事業の他、SM事業、総合金融事業、ディベロッパー事業、eコマース事業、サービス事業など事業分野は12におよび、グループ企業は約250社を数える。

「かつては1つの事業や職種を支える専門人材の育成が主眼でしたが、この20 年でグループが拡大したことで、各社の経営を担う人材の育成が急務となりました。2020 年までのグループビジョンの実現に向けて、およそ350名ほどの経営者が必要になると試算しています」

350人の経営者を育てるには、少なくともその3倍に当たる1,000人の経営人材候補が必要だと石塚氏。それだけの規模の人材を定期的に発掘・育成するのは、たとえ41万人を擁する巨大グループといえども容易ではない。しかし、それが企業の持続的な成長に欠かせないこともまた確かだ。

この20 年のうち、特に大きな転機といえるのは2001年。ジャスコがイオンへと社名変更した年だ。その前後から事業規模を急拡大させ、グループ内の企業数も増えていった。そうした状況を受け、イオングループは、次の3つの経営人材育成の発掘・育成施策を採った。

1つには「経営人材開発委員会」を発足させ、事業会社ごとに幹部候補を発掘する取り組みを始めている。

2つめは、経営人材候補を年代ごとに選抜・育成する「経営人材育成プログラム(マネジメントコース)」の開始である。20 代の若手から中高年の現職経営者まで年代ごとに4つのコースに分け、マネジメントに必要な知識・技能を習得させている。

2012 年からはさらに踏み込んだ施策もスタートさせた。それが3つめの策、岡田元也CEO直轄の「イオンDNA伝承大学」だ。同大学は、40 代前半までの幹部候補を月2回集め、イオンの歴史の中で「その時どのような経営判断をしたか」を振り返り、CEOを含め参加者全員でディスカッションを行うもの。実際のケーススタディを用いることで、イオンのDNAを体内化させるのが狙いである。

さらに、経営人材の人事情報はデータベース化されており、これを活用し、効率的な発掘・育成に役立てていく。

● グローバルな取り組み(1975年~)3本社体制で人材教育も現地化

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