J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年12月号

連載 人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第15 回 『リンカーン』

「リンカーン」
2012年 米国 監督:スティーブン・スピルバーグ

川西 玲子(かわにし れいこ)氏
1954年生まれ、メディア・エンタメ時評。中央大学大学院法学研究科修士課程修了(政治学修士)。シンクタンク勤務後、企業や自治体などで研修講師を務めつつ、コメンテーターとして活動。著書に『歴史を知ればもっと面白い韓国映画』『映画が語る昭和史』(旧・ランダムハウス講談社)等がある。
『リンカーン』
DVD発売中 ¥3,490( 税込)
20世紀フォックス ホームエンターテイメント ジャパン
南北戦争の最中の米国。リンカーン大統領は奴隷制度に別れを告げるため、戦争終結と同時に合衆国憲法修正第13 条を下院議会で批准することをめざすが――。リンカーン役のダニエル・デイ=ルイスが2013 年アカデミー賞主演男優賞受賞。

スピルバーグが監督して、2012年末から公開された『リンカーン』は、批評家から高い評価を受け、特に北米で大ヒットした。だが日本では、興行的にも話題性という点からも今一つで、残念だった。主な理由は観る前に、退屈な伝記映画だという印象を持たれたことではないだろうか。

だが実際は、リンカーンが粘り強く奴隷解放へ向けて環境を整えていく、その政治的過程を描いた異色作だった。あらゆる政治的駆け引きが繰り返され、最後は手に汗握る展開になる。1つの主張を貫き実現させるということは、これほどまでに大変なことなのかと、改めて痛感させられる。

現実と理想との間には、常に大きな溝がある。周囲を説得し、環境を整えながら粘り強く理想に近づいていくためには、強い意志と知性と知恵が必要だ。時には後退にならないぎりぎりの線で、妥協も必要となるだろう。現代を生きる、特に組織に生きる人間にとって、大きな示唆と勇気を与えてくれる映画である。

○解放をめざす28日間の攻防

リンカーンは1862年に、有名な奴隷解放宣言を行った。これで奴隷解放が実現したと思われがちだが、これは南部連合の支配地域における奴隷の解放を命じたものである。戦時中の一時的な措置だったから、戦争が終われば効力が失われてしまう。そこで、1865年1月に再選されたリンカーンは、合衆国憲法第13条の修正によって、奴隷の完全解放を実現しようとする。

この映画は、その4カ月にわたる攻防を描いたものだ。野党の民主党は反対で、共和党内部にも反対者がいる。一方、もっと先をいく人種間の完全解放を主張する議員もいる。それが、反対陣営から「過激」だとして批判され、かえって修正案可決の足枷になっているのだ。悩めるリンカーンは、側近たちと細かく票読みをして、可決に必要な残り20票の獲得に全力を挙げる。

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