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月刊 人材教育 2014年05月号

OPINION 2 心を整え、ご機嫌カンパニーになろう 一流選手も取り組むパフォーマンスを高める方法
楽しいかどうかは、自分の心の状態次第。その心を整えるプロが、スポーツドクターの辻秀一氏だ。数々のスポーツ選手のメンタルトレーニングを行ってきた辻氏は、人のパフォーマンスを左右するのは、2つ――行動の「内容」と「質」、すなわち、どのような心の状態で、それを行うかだという。どうしたら一流アスリートのように心を整えてハイパフォーマンスを出し続けられるのかを聞いた。
ご機嫌だと仕事もはかどる
──仕事は辛いもので、楽しいものではないという考えが、日本企業では根強いように思います。
辻
そうですね。ストレスがかかって、それに耐えているのが仕事だと思っている方が多いですね。ですが、それはそもそも「楽しい」を勘違いしているのだと思います。例えば、何をしている時が楽しいですか。
──おいしいものを食べている時、楽しいです(笑)。
辻
いいですね。例えば、「おいしいものを食べている時」に「楽しい」。それはそうですよね。ですが、「楽しい」とは、「おいしいご飯を食べること」だと捉えていたら、仕事を楽しくするわけにはいかなくなります。仕事の時に、ご飯を食べられないし、どうするんだ、と。
──怒られますね。
辻
ほとんどの人は、心の状態は自分でつくれると思っていません。だから、自分にとって楽しい出来事があった時に、楽しいと思うわけです。「おいしいご飯を食べる」という出来事と、「楽しい」という心の状態がしっかり紐づいているんです。ところが、その出来事と心の状態を分けて考えて、自分の心を整える力を養うことで、いつでも質の高いパフォーマンスを上げられるようになるんです。もちろん、練習は必要ですが、一流のスポーツ選手なら、身につけている人が少なくありません。
──どのような心なら、パフォーマンスが上がるのでしょうか。
辻
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プロフィール

慶應義塾大学病院内科、同スポーツ医学研究センター勤務後、株式会社エミネクロスを創立。応用スポーツ心理学とフロー理論を基盤としたメンタルトレーニングを通じたパフォーマンスの向上を専門としている。企業向けのセミナーや講演は年間200回以上にのぼり、ワークショップには経営者、Jリーガー、プロゴルファー、音楽家などが参加している。ベストセラーの『スラムダンク勝利学』(集英社インターナショナル)、『フローカンパニー』(ビジネス社)など著書も多数。www.doctor-tsuji.com/
[取材・文]=道添 進 [写真]=エミネクロス提供