J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2014年08月号

CASE.1 NEC 海外事業拡大を見据えた育成策 入社1、2年目社員を海外派遣し社内にグローバル化への変革意識を醸成する

モノづくり企業から社会ソリューション事業で世界に挑戦する企業に変貌するNEC。その事業を遂行していくにはグローバルで戦う意識の醸成だ。入社1、2年目社員から海外研修を実施するなど、急速に進むグローバル化に対応する同社の人材育成策を担当者に聞いた。


籔本 潤 氏 人事部 シニアエキスパート
栗城 武志 氏 人事部(国際人事企画担当)

NEC
1899年創立。ICT(情報通信技術)を活用した高度な社会インフラを提供する社会ソリューション事業を通じて、安全・安心・効率的・公平で、豊かな社会の実現への貢献をめざす。資本金:3972億円、連結売上高:3兆431億円(2014年3月期)、連結従業員数:10万914名(2014年3月末現在)

[取材・文]=大下 明文 [写真]=編集部

●事業構造の変化モノづくり企業からの変革

NECは2013年度から「2015中期経営計画」をスタートさせ、事業構造の大きな転換とグローバル展開の中でもアジアに力を置く戦略を進めている。まず事業構造だが、従来はパソコン、携帯電話といったコンシューマ製品のイメージが強かった。今注力しているのは「社会ソリューション事業」である。NECが保有する情報通信技術を活用して社会インフラをより高度化し、安全安心で効率的、公平な社会の実現をめざす事業だ。もちろん日本や欧米にも社会ソリューション事業のマーケットはあるが、世界の中で最も社会インフラ整備の必要性が高いのはアジア諸国であるとNECは考える。それがアジアマーケットの注力につながっていく。「多くの技術の種が日本のNECにあります。それをどのように組み合わせてアジア各国のニーズを満たすビジネスモデルを構築していくかがカギになります」と人事部シニアエキスパートの籔本潤氏は説明する。具体的に社会ソリューション事業は「パブリック」「テレコムキャリア」「エンタープライズ」「スマートエネルギー」の4分野で構成される。

パブリックは官公庁向けビジネスだ。日本で展開してきた防災システムや、NECが世界トップの精度を有する指紋や顔による生体認証の技術を活かしたセキュリティシステムなどを世界に売り込んでいく。テレコムキャリアは、通信事業者向けに通信ネットワークを構成する機器やソフトウェア、さらに通信事業を効率的に行うためのさまざまなサービスをグローバルに提供する事業だ。エンタープライズは民間向けビジネスで、流通や物流、交通の利便化、効率化を図る。スマートエネルギーはNECの蓄電池技術などを使い、エネルギーの自立・分散・多様化を支えるソリューションを提供する。他の3分野に比べると、日本や欧米も含めてこれから市場が拡大する事業だといえる。

●求めるグローバル人材像育成上の2つのポイント

社会ソリューション事業を柱に、マーケットとしてはアジアを重視するNECにとってグローバル人材の育成を考えるうえで2つのポイントがあると籔本氏は指摘する。「1つはNECの技術を活用して社会問題を解決する新しいビジネスモデルを組み立てられる人材の育成です」今までは日本で開発・生産した製品を海外に輸出し販売するビジネスを行ってきたが、社会ソリューション事業になると課題は現地にあるので、日本が持つ技術の種を現地のニーズに応じて形にしていかなければならない。しかもその顧客や国でしか通用しないカスタマイズ型のビジネスではなく、それが他の顧客や国にも適用できる「Oneto Many」のビジネスモデルに仕上げる必要がある。

そういう新しいビジネスモデルをつくれる人材の育成がグローバル人材育成の最初のポイントとなる。「もう1つはグローバル事業を引っ張るグローバルリーダーの育成です」社会ソリューション事業は現地で開発する必要があり、自ずと現地を熟知するナショナルスタッフが事業をリードすることになる。NECのグローバル体制はAPAC(アジア、豪州、ニュージーランド)、中華圏(中国、香港、台湾)、EMEA(ヨーロッパ、中東、アフリカ)、北米、中南米の5極体制を敷いている。以前は本社を中心にグローバル事業が運営されていたが、近年は各極のヘッドクォーター(リージョナルヘッドクォーター)を中心に事業の開発と推進を行う体制になっている。グローバル展開上、重要なポジションも今は半分強がナショナルスタッフで占められている。

ナショナルスタッフの人材育成の責任は基本的にリージョナルヘッドクォーターにある。しかし、グローバル事業拡大に重要な役割を果たすポジションについては、その後継者も含めて、日本の本社が人材育成のイニシアティブをとっている。グローバルリーダーに国籍は無関係であり、前述の通り、ナショナルスタッフが重要なポジションに就くケースは増えている。そうした中では日本の本社の人材についても今まで以上にグローバル化を推進していかなければならない。そのための施策の1つが、キャリアの早い段階での海外派遣である。

●若手への研修制度白紙で海外に出すGTI

早い段階で海外経験を積ませることは、本社のグローバル化、また将来のグローバルリーダーの育成に有効であるが、それに関して注目したい研修がある。入社2年目社員を海外に派遣し、現地でOJTを受けさせる「GTI(Global Track to Innovator)」だ(図1)。まだ即戦力とは言えない2年生を海外に出す狙いを籔本氏はこう説明する。

「新卒で入った社員がNEC文化、日本企業の文化に染まる前に、グローバルな働き方はどういうものかを身につけてほしいのです。文化や考え方が特殊な日本の環境になじんでしまうと、それが海外で働くことの障害になってしまうことがある。入社してまだ真っ白なうちにNECの絵を描くのではなく、グローバルな絵を描いてほしいと思っています」日本やNECの見方、考え方ではなく、現地の事情やナショナルスタッフの気持ちを素直に受け止め、日本に帰ってグローバル戦略を進める時には、本社の立場だけでなく、ナショナルスタッフの視点でもモノが言える人材に育ってもらいたいとの思いである。当然、国籍を問わずグローバル事業にかかわる人材を引っ張るグローバルリーダーに育ってほしいという期待もある。「海外事業でナショナルスタッフが本社の人材と同じように主役になっていく一方で、本社自体もグローバル化する必要があります」

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