J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2014年08月号

巻頭インタビュー 私の人材教育論 世界への挑戦で試される会社と上司の度量

同社は、通貨処理機──金融機関の出納業務を効率化するシステムや、スーパーのレジの自動釣銭機等の国内トップメーカーだ。
日本一から世界一への飛躍をめざし、海外へ事業の拡大を進めている。
2018年には創業100周年を迎える同社の尾上広和社長に、事業戦略の実現に必要な人財と、その育成について聞いた。

尾上 広和(Hirokazu Onoe)氏
生年月日 1948年3月19日
出身校 関西学院大学商学部
主な経歴
1970年 9月 国栄機械製作所(現グローリー)入社
2000年 4月 自販機・遊技システム事業部長
2001年 6月 取締役
2004年 6月 常務取締役
2005年 4月 自販機・遊技・メディア事業部長
2006年 6月 取締役常務執行役員
10月 自販機・遊技カンパニー長
2007年 6月 常務執行役員
2008年 6月 取締役常務執行役員
6月 経営企画室長、情報システム部担当
2009年 4月 経営戦略統括部長、情報システム部担当
2010年 6月 取締役執行役員副社長
2011年 4月 代表取締役社長 

グローリー
1918年3月創業(1944年11月設立)。国栄機械製作所の名で、電球製造装置の修理工場として事業開始。1950年に国産初の硬貨計数機を大蔵省造幣局に納めたのを機に通貨処理機事業に参入。以来、自動販売機や両替機などさまざまな国産第一号製品を開発。現在、世界100カ国以上で製品を販売。資本金:128億9294万7600円、売上高:2186億3200万円、従業員数:3349名(グループ総数9002名)(いずれも2014年3月31日現在)

インタビュー・文/赤堀 たか子 写真/直江 竜也

通貨処理機で国内トップ

──2018年には100周年を迎えられるそうですが、これまでの歩みを教えてください。

尾上

当社はもともと電球製造装置の修理工場という下請け的な仕事をしていましたが、経営の安定のためには自社製品の開発が必要だと、修理業の傍ら、石油発動機や白墨(チョーク)製造機など、さまざまな自社製品を開発してきましたが、成功には至りませんでした。しかし、1950年に造幣局の依頼を受け、硬貨の計数機を開発したことをきっかけに、通貨処理機メーカーとして歩み始めました。以来、自動販売機や両替機などさまざまな国産第一号製品を開発して事業の幅を拡げ、現在では金融機関や流通業、交通機関、遊技場向け通貨処理機類の製造・販売事業で、高いシェアを確立しています。

──近年、キャッシュレス化やビジネスのグローバル化などが進んでいますが、こうした経営環境の変化についてはどう見ていますか。

尾上

短期的な経営環境については、よくなってきていると思います。アベノミクス効果で景気も上向いており、金融機関の設備投資も増加が見込まれます。

長期的に見ると、電子マネーの普及により硬貨の流通量が減っているという課題はありますが、紙幣の流通量はむしろ増加傾向にあります。これは日本に限った話ではなく、カード社会といわれる米国においても同様です。したがって、当社製品の市場が直ちになくなるわけではないと考えています。ただし、絶えず先を読むことは必要ですから、マーケティングを強化し、将来の市場の変化に備えています。

ちなみに電子マネーに関しては当社でも1986年から市場参入しており、プリペイドカードからICカードまで対応した製品をラインアップしています。

ビジネスのグローバル化に関しては、1964年に米国に製品を輸出したのを皮切りに、世界中に展開しています。また、1982年に米国に進出して以来、ヨーロッパやアジアなど、世界各地に現地法人を設立して、直販・直メンテナンスの体制を整備してきました。新興国の経済成長もあり、海外市場は今後もさらに需要が拡大すると見ており、積極的に経営資源を投入していく方針です。

世界のトップブランドに!

──そうした事業展開の指針となっているのが「長期ビジョン2018」でしょうか。

尾上

はい。当社は、これまでも3年ごとに中期経営計画を定めてきましたが、それだけですとなかなか、もっと大きな視点で“夢を描く”のは難しい。そこで創業100周年を迎えるのを機に、みんなで夢を描こうと、2012年に「長期ビジョン2018」を策定しました。

これは、次世代の経営を引き継ぐ部長層が中心となって策定したもので、「GLORYを世界のトップブランドに!」をグループビジョンとして、2018年度に連結売上高2600 億円、連結営業利益率12%をめざすことを謳っています。

──事業展開の具体的な内容は、どんなものですか。

尾上

1つは、国内市場の深耕です。通貨処理の分野では一通り機械化を達成している金融機関の市場でも、現金処理以外の分野では、まだお客さまが満足していない部分も少なくありません。そうしたニーズを先取りして製品を開発し提供することで、既存市場で新しい需要の掘り起こしを狙います。

もう1つは、海外市場の開拓です。当社は2012年に、イギリスの通貨処理機の製造・販売会社であるタラリス社を買収しました。世界中の金融機関向けの通貨処理機を扱い、世界規模で販売・保守のネットワークを持つ同社を子会社化することにより、一気にビジネスの裾野が広がりました。海外での事業拡大を急ピッチで進めていきます。

実体験する時間と機会

──そうした戦略の展開には、どのような人財が必要でしょうか。

尾上

「長期ビジョン2018」の「長期基本戦略」に、「強固なグループ経営基盤確立」と共に「グローバル人財の育成」を掲げています。

もちろん、「グローバル人財」と言っても、英語ができさえすればいいというわけではありません。

当社では、『私たちは「求める心とみんなの力」を結集し、セキュア(安心・確実)な社会の発展に貢献します』という企業理念を掲げています。

創業以来、未知な分野に挑戦し、いくつもの“国産第一号”を生み出そうとするチャレンジ精神が、当社の「求める心」であり、それを実現するために「みんなの力」を結集することで、「セキュア」な社会の発展に貢献できる。こうしたグローリーの考え方を理解し、世界規模で実行できる人財こそ、当社の言う「グローバル人財」です。

──そうした人財を育てるために、設けられている仕組みは。

尾上

教育制度には、階層別教育、キャリア教育、専門教育、選抜教育などいろいろありますが、最終的にはやはりOJTです。実際に若い人にチャンスを与えて体験させる。それが学んだことを最もよく身につけられる方法だと思います。

仕事を通じて海外のビジネスを体験できる施策には、「トレーニー制度」があります。これは、25歳から30歳未満の若手社員を対象に2003年から始めた研修制度で、米国の事業所に1年間派遣し、語学研修と、現地で仕事をしながらの実地研修を受けさせるというものです。現地で仕事を通じて英語を学ぶことで、座学よりもずっと使える英語が身につきます。

しかも、身につくのは語学力だけではありません。米国では、自己を主張しない限り認めてはもらえないので、自然と自己主張できるようになります。国内ではあまり意見も言わなかった人が、研修後は、自分の意見をはっきり言うようになります。また、何事にも意欲的になり、周囲の人とのコミュニケーションも積極的にとるようになります。

この他、若手の挑戦を促すものとして「E-CAP制度」※もあります。

これは、勤続7年以上、かつ35歳までの層を対象にしたリフレッシュ休暇制度です。しかし、ただの休暇ではなく、会社が費用と期間を与えるので、自分が挑戦したいことに取り組むというものです。

ニューヨークでジャズを聴いた人、登山に挑んだ人、ホノルルマラソンに挑戦した人など、この制度を使っていろいろな経験をする人が増えており、気分転換と共に、自分を見つめ直すよい機会になっています。

部下育成への意識の醸成

── 若手が伸びるためには、何が重要だとお考えですか。

尾上

上司の存在が何と言っても重要でしょう。

最近は、自分の仕事に追われて部下の育成やOJTが手薄になっている管理職も少なくありません。そこで、2013年から、管理職を対象に「ブラッシュアップ研修」を始めました。360度評価を行い、上司だけでなく部下が自分をどう見ているかもわかるようにしたのです。これまでに約250名の管理職が研修を終えたところで、今後も順次、新任管理職を対象に実施していく計画です。

ちなみに管理職研修は、管理職同士のコミュニケーション促進にもつながっています。管理職は、日頃、全国各地の支店に散らばっているため、顔を合わせることはほとんどありません。そんな人たちが一堂に集まり一緒に部下の育成について考えることで、組織全体に部下育成の意識が育つことを期待しています。

── グローバルに事業を展開するためには、従業員のベクトル合わせも課題となります。どのような形で一体感を醸成していますか。

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