J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2014年09月号

CASE.1 ロート製薬 生のコミュニケーションを通じて一人ひとりを見る採用を実現

2010 年から就活サイトを通じた一括エントリー方式を取りやめ、 電話での応募に切り替えたロート製薬(本社:大阪市生野区)。 その背景にあった問題意識と、 応募方法変更後の成果や課題について聞いた。

矢倉 芳夫 氏 人事総務部 人事2グループ マネージャー

ロート製薬
1899年大阪で創業。現在は、世界約110カ国以上にネットワークを構築し、目薬、胃腸薬、外皮用薬をはじめ、ヘルスケアにかかわる広範な商品の開発と新市場の開拓に注力している。資本金:64億1100万円(2014年3月末現在)、連結売上高1438億2200万円(2014年3月期)、単体従業員数:1498名(2014年3月末現在)

[取材・文]=赤堀 たか子 [写真]=ロート製薬提供、赤堀 たか子

●背景 “とりあえず”への疑問

きっかけは、採用業務に携わるスタッフからの疑問だった。

新卒採用にあたり、かつては同社も大手就職支援サイトからネットエントリーしてもらう方法をとっており、30名の募集に対し3万人近くが申し込んできていた。そのため、説明会に呼ぶ2000人程度にまでどうやって絞り込むかが課題で、ウェブテスト、SPI、自己PRを全て読んで選ぶなど、さまざまな方法を試していた。丁寧に選びたくとも、母数が大きいだけに、どうしても“さばく”作業になりがちで、一人ひとりのことをよく知ったうえで選ぶことは不可能だ。これでは、そもそもよい素質を持ち、入社後に伸びそうな人材を見極めるのも無理だ。

そうした中、1人の担当者が、「いい人材を採用するために労を惜しむつもりはない。でも私たちは本当に適切なところに労力をかけられているのだろうか」と疑問を抱いた。

「とりあえずエントリーしておこう」と考える学生、「とりあえず大勢集めたい」と考える企業。その結果、応募者が膨大な数になり、本当に自社に興味を持った人たちを集めることができなくなる。ならば、この“とりあえず”をやめ、最初から自社に関心を持つ人たちだけを集め、生のコミュニケーション(生コミ)を通じて、自社と相性がよい人を採用する方法に変えるべきではないか。

そう考えた結果、同社は、ネットエントリーをやめ、電話での対話を通じて応募する“生コミ採用”に切り替えた。

●新しい募集方法 HPを見たうえで電話応募

人事総務部人事2グループマネージャーの矢倉芳夫氏は、応募の手段を電話にした理由をこう語る。

「電話をして応募の意思を表明するとなると、ウェブ上で気軽にボタンを押す場合と異なり、“この企業は、自分にとって本当に就職したい企業の一候補か”と考えるでしょう。そうすれば、応募者もぐっと絞られると考えたわけです」

矢倉氏のこの判断は正しかったようで、電話での応募に切り替えた2010年、応募者は800人にまで減った。

“生コミ採用”を始めるにあたり同社では、経営方針と求める人材像についてのメッセージをHP上に表示し、このメッセージに賛同した学生のみ、電話で応募するよう呼び掛けた。そして、応募してきた学生には、自社のメッセージをどれだけ理解しているか、電話での対話を通して確認したうえで説明会を案内した。

その際、メッセージをよく理解していない、あるいはHPを見ていない学生に対しては、メッセージをよく読み、主旨に賛同したら再度電話してくるように伝えた。

あらかじめこうしたやり取りをすると、説明会の“ドタキャン”もなくなったという。しかも、他社が出席率50~60%だった震災の年でさえ、100%に近い参加者となった。

●説明会の特徴 厳しさを伝え、覚悟を促す

説明会では、自社の魅力を説明する企業が多いが、同社ではあえて「厳しい話をする」と矢倉氏。

「事業内容や福利厚生などについて話す代わりに、当社では、仕事をするうえで重視する姿勢を説明します。例えば、“協調性はいらない”というとみんな驚きますが、それは、“本当に重要だと思うことを実行するには、1人でもやり抜く覚悟が必要だ”という意味なのです。

当社は、お客様の期待を超えた『驚き』と『喜び』のある商品やサービスの発信源になることをめざした“よろこビックリ誓約会社”というスローガンを掲げていますが、常識にとらわれていては、期待以上のものはできません。10人中9人が反対しても、潜在的なニーズがそこにあると確信すれば、自分の意思を貫く覚悟が求められます。説明会では、それができる人が当社の求める人材だということを伝えているのです」

こうした話を受けて、“自分にはこの会社は合わない”と感じる人も出てくるため、応募者はさらに絞り込まれる。説明会の後にエントリーシートを配付するが、提出率は、初年度こそ90%と高めだったが、翌年以降は70~80%程度に低下した。

エントリーを取りやめる人の中には有名校の学生が含まれる可能性もあるが、矢倉氏は、「それでも構わない」という。重要なのは、有名大学を出たかではなく、“ロート製薬で活躍できる人材であるかどうか”だからだ。

●見極めのポイント リーダーシップの有無を評価

説明会の後は面接を3~4回行い、最終的な採用者を決定する(図)。面接では、エントリーシートをもとに質疑応答をするが、時にシートから外れた質問もする。

「シートにないことや、突っ込んだ話を聞いたりすると、圧迫面接だとネットに書かれてしまうこともまれにあるのですが(苦笑)、シートは事前に読み込んでいるため、よりその人のパーソナリティを知りたいと思うと自然とそうなります」

グループワークも行うが、表面的なリーダーシップではなく、困難な状況の時に、どういった力を発揮するかを多面的に見ているそうだ。

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