J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2014年09月号

CASE.1 キヤノンマーケティングジャパン  熱さは、風呂でいえば「45℃」 何度も厳しくフィードバックし基本行動を染み込ませる

キヤノン製品や関連ソリューションのマーケティングを行うキヤノンマーケティングジャパンでは、新入社員に対し、身だしなみ・ビジネスマナー・報連相などの基本行動とロジカルシンキングを重点的に身につける研修を行っている。
その特徴は、何度も繰り返し、厳しく指導するという点だ。
「風呂の湯でいえば45℃」という“ 熱い”研修とは、どんな様子なのだろうか。


額田 泰介 氏 人事本部 人事企画部 課長

キヤノンマーケティングジャパン
1968年設立。キヤノン製品や関連ソリューションのマーケティングを行う。
“Beyond CANON, Beyond JAPAN”を旗印に、新規事業の創出や商社機能を強化することで、グループのさらなる「成長と変革」を推進中。
資本金:733億300万円、連結売上高: 6572億1500万円、連結従業員数:1万8409名(全て2013年12月31日現在)

[取材・文]=木村 美幸 [写真]=キヤノンマーケティングジャパン提供、本誌編集部

●基本方針 基本行動を徹底的に叩き込む

キヤノンマーケティングジャパンでは、今年も例年通り2カ月間の新入社員研修が行われたが、その内容は大きく様変わりしたという。理由は、昨年の研修後に新人たちの配属先の上司に対して行ったヒアリングで“ビジネスマナーを中心とした基本的なスキルが身についていない”という意見が寄せられたことに起因する。

「研修中は身だしなみも挨拶も全員しっかりできていたので、最初は耳を疑いましたが、彼らは我々の前でビジネスマナーを“演じて”いただけで、身につけてはいなかったのだと気づきました」(額田氏、以下同)

そこで2014年の研修は、徹底的に基本を身につけさせることにこだわった。ポイントは“何度も繰り返させる”ことと“厳しく指導する”ことの2点。繰り返しの回数を増やすために、研修メニューは極力絞ったという。

「身だしなみ・ビジネスマナー・報連相、PDCAを回すといった基本行動、そしてロジカルシンキングに焦点を絞りました。グローバルでのスタンダードな考え方は、論理的な思考。“とにかく一生懸命頑張りますので、なんとかお願いします!”という情緒的な考え方では今後ますます通用しなくなりますから、早い時期から身につけるべきだと考えました。例えば、口頭でもメールでも結論を先に述べ、“今日お伝えしたいことは3つあります。1つめは○○で、2つめは……”というふうに話を組み立てる、といった“クセ”をつける。それには、基本行動と同様に何度も何度も繰り返して定着させるのが一番です」

2カ月間のカリキュラムの特徴の1つは、いわゆる座学が非常に少ないこと。基本行動やロジカルシンキングについての知識を得た後は、実践スタイルの研修でそれを実際に数多く使わせるのだ。中心的なカリキュラムは以下の通りである。

〈基本行動トレーニング〉

講師が上司役を務め、挨拶、名刺交換、電話対応、初歩的な業務の遂行とそれらに関する報連相、クライアント先への訪問、企画の立案と提案といった内容を、ビジネスの現場さながらの緊迫感の中で繰り返し体験。仕事の型を体に叩き込む。

〈ビジネス演習〉

「基本編」では、社内での資料作成を指示され、ロジカルシンキングを用いて資料を整理・作成する演習を行う。研修の仕上げである「応用編」では、旅行業の営業という設定で、お客様への訪問、電話やメール、上司との報連相を通してお客様の課題に対して仮説を立て、お客様への提案を行う。ほとんどの研修は4~5人のグループで進めるが、「応用編」では1人で全てをこなさなければならず、その過程で“知識として学んだ基本行動”を繰り返し実践することで使えるレベルにしていく。

〈グループワーク〉

1グループ4~5名で、“2021年のキヤノンマーケティングジャパンと私たち”をテーマに、会社の将来に対しての提言を行う。準備期間は1カ月半ほど。そのプロセスでも、ロジカルシンキングやビジネスマナーを使い続けることとなる。

「英語研修もあるのですが、これも単なる英語力を向上させるのではなくディベート形式にすることで“自分の意見をロジカルに整理する”という要素を加えています」

“この日の研修は報連相”“ロジカルシンキングはこの2日間でマスターする”といったカリキュラムの作り方をするのではなく、厳選した基本事項を研修期間中ずっと使い続ける(使い続けなければいけない)状況を戦略的に用意する。まさに一本筋の通った新人研修といえる。

●研修の具体例 実際の現場以上の厳しさを体験

ビジネスの基本を叩き込むための2つのポイント、“何度も繰り返させる”“厳しく指導する”が最も顕著なのが、3日間にわたって行われる基本行動研修だ。ここでは、いくつかの基本行動を身につけるが、その中の“電話対応”を例に、具体的なトレーニング方法を紹介しよう。

今年の新入社員64名を二十数名のクラスに分け、それぞれが4~5名で1グループとなる。各グループのデスクには、回線の通った携帯電話が1台ずつ渡され、研修ルームの外から電話がかかってくる。一般の研修のように、用意された電話マナーの台本に従って練習するのではなく、電話での会話は全てアドリブ。しかも相手はとても早口な人、こちらの話をきちんと聞かない人、クレーマーなど、バリエーションが非常に幅広い。さらには英語でかかってくることもある。それらの電話に対応しながらメモを取り、内容を上司に報告しなければならない。

「しかも研修が進み、課題に必死で取り組んでいる状況でも、容赦なく電話がかかってきます。電話対応だけに専念できる状態であれば、きちんとメモを取ることができた人も、演習で混乱している最中だと意識が作業のほうにいっているので、メモが疎かになったりします」

すると、上司に正確な情報を報告できないので、厳しく指導される。この研修中は、いかなるシチュエーションにおいても上司役の外部講師の対応がとことん厳格だ。その場の空気がピンと張りつめ、新人全員も大変な緊張状態にある。

「どの課題も時間厳守なのですが、締め切りを過ぎて提出された成果物を“見る価値がない”と言って目の前で破り捨てた講師までいました。そこまで厳しくするのは、ビジネスの世界では、ちょっとタイミングが遅れただけで大きな商機を逃してしまうことが珍しくないからです。そのような、学生時代には許された“少しくらいなら”ということも、社会に出たら通用しないのだと、この時期に痛感することは重要だと思っています」

また、新人研修の意味について、額田氏はこう続ける。

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