Column 現場力を高めるには、 現場は実行だけすればいいという 考え方を変える意識変革が必要である
日本企業の現場は急速に空洞化・弱体化している
激化する企業間競争に勝ち続けるには、企業は常に生産性向上と革新に取り組まなければならない。しかし、そのために、いわゆる「2・6・2の法則」の下位2割の人材を切り捨てるという考え方は、きわめて短絡的で意味がない。実際、あるベンチャー企業が実験をしたところ、残った8割に再び「2・6・2の法則」が表れたという笑えない現実がある。
この法則、実は蟻の世界でも証明されている。働き蟻にも1~ 2割程度の割合で、ろくな働きをしない蟻が存在する。この研究をしている北海道大学の長谷川英祐助手らによると、「優秀な個体だけでは、集団の生産性は最大にならないことがわかってきている。仕事をしない蟻にも何らかの役割があるかもしれない」とみられている。人間も蟻も、どうも生物には同じような性質があるらしい。要は、安易に下位の人材を切り捨てたところで、業績向上は望めないということである。
企業存続のためにビジネスリーダー候補といわれる先頭集団を鍛えることは確かに必要だが、先頭集団といったところで彼らが非常に優秀なのかというと、どうであろうか。人材に注目して考えると、そもそも会社とは、平凡な人材を集めて1人ではできない非凡なことを実現するための社会的な仕組みである。企業人でありながらノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんは天才だが、彼が語った通り、彼1人ではあの発明はできなかったはず。企業経営は、下位の2割の人材も含めて、いかに全体の生産性を高めるかが重要である。
いま、日本企業の現場は急速に空洞化・弱体化している。中国を筆頭にして、低コスト地域に現場が移転するという空間的な空洞化・弱体化に加え、時間的な空洞化・弱体化も指摘したい。リストラと称して中高年のベテラン社員が大量に現場から抜けるという現実は、ベテラン社員が現場で積み上げてきたノウハウや、コツ、スキルといった優れた暗黙知は継承されないまま消えてしまうことを意味する。

