Part 2 ケース 群馬県職員労働組合 「自治研」活動を通した政策力の強化で 「知識集約型労働運動」への転換を図る
労働組合の主要な役割は、組合員の処遇を改善し働きがいのある職場環境をつくることにある。しかし、組合員が多様化した現在、画一的な要求実現運動だけでは、十分な成果を得ることが難しくなっている。今回は、自治体職場で新たな労働組合運動のスタイルを模索している群馬県職員労働組合の事例を取り上げ、政策力をテーマにした労働組合運動の可能性を探ってみた。
「労働集約型運動」から「知識集約型運動」への転換
労働組合運動というと、賃金や労働条件を主要課題に据えながら組合員の要求を取りまとめ、当局(使用者サイド)と交渉し成果を得るというスタイルを連想することが多い。しかし、右肩上がりの経済成長が終焉し処遇向上という成果を得にくくなった時代となり、また組合員の要求が多様化し、労働組合に対するニーズそのものが変化している今日においては、従来型の運動からの脱皮を図ろうとする労働組合が増えているのが実情だ。
自治労の傘下で群馬県庁・地域機関で働く職員で構成される群馬県庁職員労働組合と、県の病院局・県立病院で働く職員で構成される群馬県病院局職員労働組合の連合体、群馬県職員労働組合(以下、群馬県職)もそうした労働組合の一つ。「自治研」活動を活用しながら、次代を見据えた新たな労働組合運動づくりに取り組んでいる。
「これまでの労働組合は、多くの組合員を動員し、数の力を背景に自らの要求を実現しようとしてきました。しかし、若い組合員が増えるにつれて、アンケートなどを取っても『処遇改善よりももっと働きがいを重視した活動をすべきだ』、『地域づくりという大切な仕事をしているのだから、当局に負けないくらいの政策立案能力を高め、むしろ当局に政策を提言していくような活動スタイルに変えていくべきだ』という意見が強く出されるようになりました。
自治研活動は、そうした組合員の二- ズに応える運動で、従来型の運動を『労働集約型運動』と位置づけるなら、知識や知恵をベースにした運動、『知識集約型運動』と位置づけられると考えます] と語るのは、群馬県庁職員労働組合賃金調査部長の後藤克己氏。
自治研運動とは、自治労が取り組む組合員の主体的な研究活動で、基本的には地方自治のさまざまな課題や行政のあり方について、組合員自らが研究活動を実践し、その内容を広く提言として取りまとめることを柱にしている。活動そのものは、群馬県職以外にも多くの単組で取り組まれており、その成果は自治研の全国集会などの場で発表され共有化が図られているが、群馬県職は自治研活動を積極的に行うだけでなく、組合活動そのもののあり方を転換させる一つの要素として位置づけているところに、発想のユニークさがあるといえるだろう。

