連載 起業するイノペーターたち 第22回 社員の自主性を重視する知識集約型企業
補修・修理などのサービス業は特許とは無縁。そんな常識を破り、特許戦略を強めているのがプレス機械の補修・メンテナンス専業会社、しのはらプレスサービスである。補修・修理はもちろん、古い機械を新晶同様につくり替えたり、戦略上のアドバイスも行うなど、顧客に対して高付加価値サービスを提供する。必要とあれば、特許を取得して技術移転を行うビジネスは、それまでの修理業とは大きく異なる。そのベースとなっているのが、「社員の自主性を重視した、やる気を生む経営」であるO
旧態依然の修理業に新風を吹き込む
最近、サービス業のなかでも、特許などの知的財産権(知財権)の取得・活用に積極的に乗り出す企業が増えている。ビジネスモデル特許(ビジネスの仕組み特許)の取得を目指すIT (情報技術)サービス系企業の台頭などがその典型的な例だが、伝統産業のなかにも、知財権戦略で他社との差別化を図る企業が現れている。しのはらプレスサービスもその1 社である。
機械メンテナンス業界の特徴は、小規模企業の集まりであることだ。プレス機械の場合、法令点検代行の資格を持つ業者は全国で300 数社あるが、アウトサイダーのようなところを含めると、500社くらいにのぼると推定される。企業規模はきわめて小さく、平均社員数は4~5人で、一人親方でやっているような会社もたくさんある。そして、常に分裂を繰り返している。
設備がいらず、腕一本でできる仕事なので、独立することが多くなる。「継承というのは日々の集積によってなされるわけですが、知識や経験の集積がなされない、悲しい業界であった」と社長の篠原敬治氏は言う。
篠原氏はかつて、プレス機械メーカーに勤めていたが、冂乎来、日本の産業は知識集約型が主流になる。機械のメンテナンスを専業とする会社でも、やり方さえ変えれば立派な企業として成り立つのではないか」と考え、1973年に同社を設立した。以来、知識集約型メンテナンス業を標榜し、旧来の“修理業” とはひと昧違う、高付加価値サービスの提供に努めているO
この方針が奏効し、現在の社員数は系列2社を含めて約170 人。業界最大手の企業にまで育った。
帰属意識・満足度ともゼロの前提に立つ
篠原氏は「本当は機械をつくるよりも、修理の方が難しいのではないかと思っている」と言う。機械は、いまでは精度の高い工作機械によって生産されるので、組み立てていくだけになる。そして、それぞれの事業者がその一部分を担当している。

