J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2009年08月号

連載インストラクショナルデザイナーがゆく第27回 3 つの“E”で切り取る 私的ASTDナビ

寺田 佳子(てらだ・よしこ)氏
ジェイ・キャスト常務取締役、ID コンサルティング代表取締役、日本イーラーニングコンソーシアム執行役員、eLP(e ラーニングプロフェッショナル)研修委員会委員長、JICA 情報通信技術分野課題支援委員、JICANETInstructional Design Seminar 講師、ASTD(米国人材開発機構)会員。著書に『IT 時代の教育プロ養成戦略』(共著、東信堂)など。
http://instructionaldesign.blog97.fc2.com/

共に学び心を通わせた友人が得られた4日間

今年もASTDの季節がやってきた。5月31日~6月3日という日程で初夏の爽やかな海外出張になるはずだったが、未曽有の不況と新型インフルエンザというダブルショックの真っ只中。日本を発つ前、周囲からは「本当に行くんですか?」とくどいくらい尋ねられ、やや悲壮な心持ちで米国の首都ワシントンD.C.に乗り込んだ。マスクをつけ、アルコール消毒ティッシュを握りしめて足を踏み入れたウオルター・E・コンベンションセンター。ミーティングルームの片隅にそっと座ると、みんなが一斉にこちらを見る。「えへっ」と目だけで笑って親愛の情を見せたつもりが、それが余計に不気味だったのか、遠巻きにチラリ、チラリ。迷惑そうな顔を無視して1人に近寄り挨拶すると、「そっ、その恰好じゃ、あなたが保菌者みたいよ」と言われ、慌ててマスクをとった。

というわけで個人的に波乱の幕開けとなった今年のASTD。主催者側の発表では、参加者は例年並みということだが、空席の数や満員御礼の表示がないことから、2~3割は少ない感じがした。その分、ゆったり情報交換ができたのは不幸中の幸いというべきか。

ASTD のプレジデント、トニー・ビンガムは、「この不況下でも、ASTD調査対象企業の38%が人材教育に今まで以上に投資している。なぜなら従業員の80%以上が5年後にはスキル不足になることがわかっているからだ。経済が好転した時、人材に投資した企業とそうでない企業の致命的な差が歴然となる」とハッパをかけていたが、私はASTD2009に参加して「3つのE」が頭に浮かんだ。

●Engagement ―エンゲージメント―

今年のスローガン“ラーニングエンゲージメント”にも含まれた言葉。「関与、約束、一体感」などの意味があり、一言では翻訳しづらい単語だ。ASTDでは学びがもたらす、「個人と組織」「人材育成とビジネス」「学習成果と業績」などの結びつきの強さを示すキーワードとして、さまざまな場面で使われていた。

たとえば、英国ウエールズ・マネジメント・カウンシルのクリストファー・ウォードの場合。「仕事の価値を決めるのがエンゲージメントのレベル。しかしギャラップ社の調査によれば、確かなエンゲージメントを感じているのは従業員のわずか29%に過ぎない。エンゲージメントを強化するには、企業の達成目標を中心に据えた伝統的意識構造から、個人の価値観、感性を基盤とした啓蒙的意識構造に変える必要がある。仕事場で、『ターゲット、業績、効率』といったワークワードより、『喜び、信頼、誇り』といったリビング・ワードのほうが良く使われるようになれば、エンゲージメントレベルは自然に上がる」

また、『Never Eat Alone(ひとりで飯を食うな)』などの著書で有名なキース・フェラッジは、「1人のスーパーマンが組織を救う時代は終わった。真のエンゲージメント、つまり確かな『ライフラインリレーションシップ(命綱となる深い信頼関係)』が組織を支える」と語った。

●Evolving ―エボルビング―

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