J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年11月号

CASE 1 アサヒグループホールディングス 大チャレンジ! 次世代経営者育成に活用 幹部社員のキャリアパスや育成を AIと共に考える時代到来

アサヒグループホールディングスは、2017年5月より、AIからの提案をキー人材(次世代経営者候補)のキャリアパスや育成、タレントマネジメントに活かすという、世界でもまだ珍しいチャレンジを始めた。
同社は9月1日に行われたイベント「CONVERGE TOKYO 2017」で、「まだ緒に就いたばかり」と謙遜しながら概要を説明。
その発表内容から、AIをどのように活用しているのかについて、エッセンスを紹介する。


柴田 勝氏 
人事部門 プロジェクトシニアマネジャー

アサヒグループホールディングス
設立は1949 年。吸収分割を行ったアサヒビールが2011 年に商号変更。酒類を中核とする総合飲料食品グループとして、日本発の「強み」を活かすグローバルプレイヤーとして独自のポジションの確立をめざす。
資本金:1825 億3100 万円(2016 年12 月31日現在)、連結売上収益:1 兆7069 億円(2016 年12月期)、単体従業員数:285 名(2016 年12月31日現在)

[取材・文・写真]=編集部

●背景① 人材把握と育成の必要性

アサヒグループホールディングスは、アサヒビール・アサヒ飲料・アサヒグループ食品などを傘下に置く持ち株会社である。グループで酒類・飲料・食品・国際・その他の大きく5つの事業を展開しており、昨年は1兆7 千億円を売り上げた。国内の酒類事業がその55.7%を占めるが、近年、海外も含めた他事業が伸びているという。2000 年代後半までの酒類以外の拡大策や、それ以降の飲料や酒類のグローバル化が実を結んできているようだ。

そうした中、酒税法の改正や、グローバルな業界再編等々の環境変化に伴い、人事の役割も変化してきているが、ホールディングス人事部門の役割は主に以下の4つであると、人事部門プロジェクトシニアマネジャーの柴田勝氏は語る。
①人的生産性の向上……ITの活用などを通した、働き方改革や健康経営の推進
②人事のグローバル化……海外会社の人事面でのガバナンスや、人事部門を含めたダイバーシティ推進等
③人事制度改革……上司と部下のコミュニケーションを密にする仕組みの構築等
④人材育成……次世代経営人材の育成支援や新しい人材マネジメントの仕組み構築

中でも4つめの次世代経営人材育成は、「グループの共通資産として、ホールディングスが事業会社に直接関与していく必要がある」(柴田氏、以下同)。今回の取り組みは、ここにAI を活用しようというものである。

●背景② キー人材の育成上の課題

AIシステムの導入には、以下のキー人材育成上の課題解決や、人材パイプラインのロングリスト化への期待がかかっている。

キー人材の育成上の課題の1つめは、定性情報を含めた人事情報の管理である。必要な人事情報がグループ各社にバラバラに保管されており、一元管理ができていなかった。

2番目は、人事情報の分析・可視化だ。情報を集めるだけではなくそれらを分析し、どういったところに課題があるのかを経営と人事で共有する必要があった。

3番目は、サクセッションプラン(後継者育成計画)の選択肢・精度の向上である。人事情報を分析・可視化したうえで、具体的に誰をどのように育てていくかを検討しなくてはならないが、そこまでには至っていなかったのである。

■キー人材育成の全体像

そもそも、同社ではキー人材を、図1の右側のOJTとOff-JT(日常業務、異動・配置、階層別選抜型研修)で育成している。「OJTのところの日常業務はマネジメントや目標達成力を鍛える場であり、異動・配置は、視座・視野を大きく成長させて、突然変異を促す場。そしてOff-JTの選抜型研修では他社と伍せる知識・能力をつけ、必要な気づきを得る場と捉えており、階層別にOJT、Off-JTをリンクさせながら育成していく必要性を感じています」

図1の左側は、人材プールのイメージである。

「このようなイメージで、各階層で幹部人材候補者を確保・育成し、『ロングリスト化』していくためには、各社に散らばっている人事情報を集め、それぞれ誰がどのような人で、何人がどのように育っており、どういった段階にいるのかなどを可視化しながら、右側の育成施策に効果的につなげていく必要があります。そのためには人事情報のIT 管理が不可欠でした」

また、AIをタレントマネジメントに活用することが世界的に先進的なチャレンジであること、そうしたトライアルのため少人数から始められたこと。世界各国に導入実績のある企業のシステムであったことも、グローバルレベルでの人材把握を検討している同社の背中を押した。

●取り組み 具体的な活用方法

現在、システムに登録されているユーザーは、アサヒグループの幹部(理事職以上)で約300 名。前述の通り、トライアルとしてこの規模で始めた。

「役職名、生年月日、経歴などのベーシックな人事情報をはじめ、研修履歴や研修の中でのさまざまな定性的情報も入れられるようになっています。海外を含め、こうしたベーシックな情報の一元管理ができていなかったので、これだけでも一定の意義を感じています」

AIを使用した機能としては主に次の3つだ。いずれも過去の経歴・評価情報を機械が学習して、ふさわしい候補者やキャリアプランを提案してくるという。
①キャリアモビリティ

これは、一つひとつのポストに対し、今後たどる可能性の高いキャリアパターンにはどんなものがあるのかを例示するものだ。同社以外での例を挙げれば、「ITマネジャー」は、「ネットワークコーポレーションマネジャー」を経由して、最終的には「ITセキュリティーディレクター」になるパターンがこれまで多かった、などである。

キャリアパスには優先順位がつけられ、複数掲示される。

幹部ポストのメジャーなキャリアが可視化されたり、類型化することができ、育成プランを考えるのに役立つと同社では考えている。

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