J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年11月号

巻頭インタビュー 私の人材教育論 学びによって変わり続けることこそ 商売の鉄則

イオングループCEOの岡田元也氏からイオン九州の立て直しを託され、2014 年5月、同社社長に就任した柴田祐司氏。
グループ内でも業績堅調だったイオン北海道の社長を務めていた柴田氏が、九州改革のために力を注いだのは、現場の意識を変えることだった。
トップの思いを伝えるコミュニケーションに尽力し、「自分で考え・自分で動き・自分を変える」大切さを語り続ける。
その背景には、常に転機をチャンスに変えてきた、柴田氏ならではの人生観があった。


柴田祐司(Yuji Shibata)氏
イオン九州
代表取締役 社長執行役員
生年月日 1956年8月4日

主な経歴
1979年3月 ジャスコ(現イオン)入社
2002年9月 同社 川口前川店長
2003年9月 同社 マリンピア店長
2006年9月 同社 埼玉事業部長
2008年5月 同社GMS事業戦略チームリーダー
2010年3月 イオンリテール 事業創造政策チームリーダー
2010年5月 イオン北海道 取締役
2011年5月 同社 代表取締役社長
2014年3月 イオン九州 顧問
2014年5月 同社 代表取締役社長
現在に至る

企業プロフィール
イオン九州
設立は1972年。福岡市に本店を置く福岡大丸と旧ジャスコとの業務提携契約により、前身である福岡ジャスコが誕生。2003 年より商号を「イオン九州株式会社」に変更。
資本金:31億5500万円(2017年2月28日現在)、営業収益:2364億1000万円(2017年2月期)、社員数:1万829名(2017年2月28日現在)

インタビュー・文/竹林篤実
写真/大島拓也

就任3年目に増益、黒字転換へ

―2017年2月期は黒字決算となりました。

柴田

社長就任以来、丸3年かけて、ようやく少し明かりが見えてきたというのが、正直なところです。同じデフレといっても九州には九州の状況があり、他の地方とは傾向が異なります。3年前こちらに来て、最初に気づいたのがこの地域差でした。

九州はディスカウンター(格安量販店)発祥の地だけあって、安売り店がひしめき合っています。そうした中で、当社はGMS(総合スーパー)の本来あるべき姿を見失っていました。ディスカウントショップに対抗して価格を下げることばかりに意識が集中してしまい、GMSに期待される品揃えが実現できていなかったのです。しかし、自分たちの本来の役割を考えれば、ディスカウンターとは違う土俵で戦うべき。この反省から、経営方針の転換に踏み切りました。初年度は大きな赤字になるであろうことは覚悟のうえでした。

―2018年2月期も増益を見込まれています。

柴田

3年目にしてようやくプラスになりましたが、決して楽観視はしていません。例えば酒税法改正で酒類の値上げが行われるなど、逆風は依然として強い。また、既に九州には大型店の出店余地はほとんど残っていません。

今後はスクラップ・アンド・ビルドに力を入れると共に、小型店に注力していきます。コンビニとの差別化が課題です。さらに、社会の変化に対応すべく、新しいフォーマットづくりに力を入れる必要があります。その意味で、公園やヨガ教室なども併設するイオン乙金(おとがな)ショッピングセンター(福岡県大野城市)に期待しています。「子育て」「地域コミュニティ」「利便性」をキーワードに、新しいコミュニティのかたちを具現化した施設で、2017年7月にグランドオープンしました。

―イオングループでは「グランド・ジェネレーション」をコンセプトに高齢者対応を強化されていますね。

柴田

高齢者についても地域性を踏まえて考える必要があります。1店当たりの商圏人口の少ない九州で、シニアに的を絞り込むと商売は成り立たない。それより利便性を重視し、1カ所で必要なものが全て揃う店にすべき。シニアだからといって、若い人が好む肉を食べないかといえば、そんなことはないでしょう。今後必要なのは、シニアも含めて増え続ける単身世帯のニーズ対応です。

求められる意識の変革

―就任後の3年間で、最も強く訴えたことは何だったのでしょうか。

柴田

何より求めてきたのは、一人ひとりが自分で考える姿勢です。例えば、競合店が安売りすると、反射的に安さを競おうとする。本部からの指示に何も考えずに従う。いずれも受け身の対応で、お客様にどう応えるべきか自発的に考える姿勢に欠けています。もちろん本部の指示を無視してはなりません。けれども、ここは九州なのです。まず、九州のお客様ニーズを起点に考えた品揃えや接客を考えなければ、私たちの存在意義はなくなってしまいます。お客様が何を求めているのかを常に読み取り、実践する姿勢こそ原点です。

―自ら考えることを妨げている“壁”とは。

柴田

従来のGMSの考え方にどっぷり浸かり、思考停止している人は少なくありません。先日ある主任に、今後、小型店を展開していく際、SKU(Stock Keeping Unit:在庫保管単位)のシステムはどうするのかと尋ねました。すると彼は「今のGMSの仕組みを使うつもりですが」と答えた。

GMSのシステムは、3万から5万ぐらいのアイテムを扱う前提で構築されています。一方、小型店で扱うアイテム数はせいぜい5000ぐらい。小型店にGMSのシステムを導入するのは明らかにオーバースペックで、費用対効果からいっても不適切です。

在庫管理はGMSのシステムで行うもの、という固定観念にとらわれているため、他のシステムを検討するという発想が持てないのでしょう。既成概念を崩し、既存の枠組みを取っ払って考えられる人材をいかに育成するか。これが今後の大きな課題です。

成功体験を積み重ね、自信と勇気を

―既成概念を変えるために、どのような取り組みをしていますか。

柴田

自分で考え、自分で行動し、結果を出させることです。私たちは『九州でNo.1の信頼される企業へ。“ずっと”を大切に、“もっと”を創造する』をビジョンに掲げています。社員には、このビジョンを具体化するためにどう行動すべきか、考えてほしいと思っています。

例えば、2015年より四半期に一度、九州大感謝祭を開催しています。全てのお客様への感謝の気持ちを込めた企画で、期間中は普段とは全く違う売り場をつくってお客様をお迎えします。各店の店長には、地域の中で何ができるかを考え、思いきった企画を展開するよう指示してきました。

ある店長は地域のお菓子屋さんを10 社ぐらい集めてフェスティバルを開きましたが、これが評判を呼び、大盛況となりました。成功体験の積み重ねは、何より自信につながります。やればできると考えるようになるし、自分で考えたことを積極的に展開する勇気を持てます。

―社員を動かすにはコミュニケーションが不可欠ですね。

柴田

自分の思いを伝えるために、コミュニケーションは重視しています。こちらに着任してすぐにやったのは、社長室を撤廃することでした。私もみんなと机を並べ、お互いいつでも話しかけられるように、席を配置替えしました。

最近は、入社3年次の若手社員や、新任の販売課長との対話にも注力しています。

入社3年次の社員にはセミナー形式で私の思いを語り、みんなから質問を募ります。質問に丁寧に答えることで、私の考えを少しでも深く理解してもらおうという狙いです。

新任課長に対しても、1 ~ 2時間ほど時間をかけて自分の思いを伝えています。なかなか活発なやり取りが展開されていて、中期ビジョンを語ったりしても、問題意識を持つ人は具体的な施策まで突っ込んで聞いてきます。手応えを感じますね。

―自分なりの考えが生まれるためには、問題意識ありきだと。

柴田

その通りです。日頃、社員に口を酸っぱくして言っているのが、「店の空気に染まるな」ということ。毎日、同じ店に通い、そこで1日を過ごしていると、周りの環境が空気のようになってしまいます。すると何もかもが当たり前に思えてきて、一切の疑問を感じなくなる。例えば、既に終了したセールのポスターが貼りっぱなしになっていても、気づかなかったりするのです。これは大変危険なことです。常にお客様目線で売り場を見て、お客様から見ておかしなところはないか、と自らに問いかける意識を徹底すべきでしょう。

外の世界で刺激を受けることも大切です。競合店に積極的に出向き、良いところを見つけるなどです。常に自分たちより優れた点を見つけて学び、真似ぶ姿勢を持つべきです。

―学びによる変化を重視されているのですね。

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