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月刊 人材教育 2017年11月号

人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第61回 「私の、息子」川西玲子氏 時事・映画評論家

「私の、息子」
2013年 ルーマニア 監督:カリン・ぺーター・ネッツァー

川西玲子(かわにし れいこ)氏
1954年生まれ、メディア・エンタメ時評。中央大学大学院法学研究科修士課程修了(政治学修士)。シンクタンク勤務後、企業や自治体などで研修講師を務めつつ、コメンテーターとして活動。著書に『映画が語る昭和史』(武田ランダムハウスジャパン)、『戦前外地の高校野球 台湾・朝鮮・満州に花開いた球児たちの夢』(彩流社)等。


『私の、息子』
発売・販売元:オデッサ・エンタテインメント
価格:DVD 3800 円+税 好評発売中
コルネリアの悩みは、30 歳を過ぎても自立しない一人息子バルブのこと。ある日バルブが交通事故を起こし、子どもを死なせてしまった。コルネリアは息子を救いたい一心で、あらゆる手段に出る。第63 回ベルリン国際映画祭金熊賞・国際映画批評家連盟賞、第8回ルーマニア・アカデミー賞主要8部門受賞。
©Parada Film in co-production with Hai-Hui Entertainment All rights reserved

よほどの映画通でない限り、ルーマニア映画に関心を持つ人は少ないだろう。ルーマニアに関する日本人の認識はおそらく、チャウシェスク政権崩壊で止まっているのではないか。あれから四半世紀、ニュースやヨーロッパ映画などに出てくるルーマニアは、常に犯罪集団や人身売買絡みの話題と結びついている。あまり良い描かれ方はしていない。

だがルーマニア映画は今や、ヨーロッパ映画界で注目の的である。その理由は、三大映画祭でいくつも賞を取っているからだ。困難な状況にあって描くべき題材が多く、それが関心を集めているという面もあり、監督たちの志も高い。

2007 年には『4ヶ月、3週と2日』がカンヌ国際映画祭最高賞、『汚れなき祈り』が2012年の同じくカンヌ国際で脚本賞に、そして本作が2013年にベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した。以後も『エリザのために』が、2016年のカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞している。

○有能が故に抱かせてしまう不満

この映画は始まるとすぐ、母と息子の険悪な関係が明らかになる。母親のコルネリアは知的な専門職で、社会的に成功した女性。首都ブカレストで、自分と同じような友人たちに囲まれて暮らしている。しかし一人息子のバルブは、名士が集まるコルネリアの誕生パーティーにも来ない。顔を合わせれば口論になる。

コルネリアは息子を溺愛していて、住居を与え生活の面倒も見ている。有能なので、何でも先回りしてやってしまう。一方バルブは30歳を過ぎても自立できず、親が用意してくれた家で恋人と暮らしている。母親に苛立ちながらも、結局は依存しているのである。父親は言い争う2人の脇で、おろおろしているだけだ。

そんなバルブが交通事故を起こし、少年を死なせてしまった。コルネリアはすぐに警察上層部に電話をかけて善処を依頼し、証人に会いに行って証言を変えてもらうよう頼む。息子バルブは母親の、そうしたいつものやり方に不満を爆発させるが、自分ではどうすることもできない。

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