J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年10月号

TOPIC HR-Solution Contestレポート 働き方改革×テクノロジーの アイデア最前線

経済産業省及びIoT推進ラボが主催する「HR-Solution Contest」は、
最新テクノロジーを活用して、人事・労務上にまつわる課題を解決する優れたアイデアを競うもので、2017年5~6月に募集。
103件の応募の中から書類審査及び非公開プレゼンテーション審査を経て8件のファイナリストが選ばれた。
本稿では、7月25日に行われた最終審査のプレゼン内容と審査結果を報告する。
現在、どのようなテクノロジーが人事・人材育成や働き方改革の分野に活用されているかが概観できる。

開催日:2017 年7 月25 日
会 場:ベルサール東京日本橋
共 催:経済産業省、IoT 推進ラボ、HR テクノロジーコンソーシアム(LeBAC)、NEDO

[取材・文]=瀧川美里  [写真]=取材者撮影

【プレゼンテーション1】 デジタル面接システム HireVue

【発表者】

タレンタ株式会社 SVP,CFO 中村 究氏

最初の面接までの調整をゼロに

従来の採用業務では、面接までの日程調整や候補者の資質の把握等々に時間がかかり、人事部を多忙にしている。そこで薦めたいのがHireVue(ハイヤービュー)である。

これは、録画面接機能に人工知能を合わせた、いつでもどこでも候補者が面接に参加できるソリューションだ。候補者がエントリーをすると面接への招待状が届き、用意された質問に自分のスマートフォンから動画を録画して回答する。主な特徴は以下の4点である。

①選考のスピードを4倍に、工数を70%削減することによって候補者の離脱を防止し、安定的な人材確保を低コストで実現

②動画という豊富な情報によって、早期に人物像の把握ができ、主要な候補者にだけ質の高い選考を行うことが可能になる

③さまざまな候補者の回答の録画を、採用チーム全体で何度も見直すことにより、採用の目線合わせや公平な採否判断ができる

④工数削減によって生まれた時間で、内定者辞退の抑制など、本来業務に集中できる

HireVueには過去に採用・不採用になった人の録画データが蓄積されている。人工知能を使って話の内容や声の張り具合などの情報を2万のデータポイントから抽出することで、候補者と会社とのカルチャーフィットを予測。パーセンテージの高い順にランクづけする機能もついている。これらの機能によって、地方企業の人材採用・就業機会の均等化、さらには日本の人事部の労働時間短縮をめざしたい。

【プレゼンテーション2】AIによるAIに負けない人材育成

【発表者】

広島大学

産学・地域連携センター

新産業創出・教育部門 1st ペンギン倶楽部 主宰

佐々木 宏氏

個別性のあるAIコーチングを実現

我々は、言われたことを右から左へ流すような受動的な人材を、コーチングによって能動的に変えていこうと考え、「AIコーチング」を開発した。現在はビジネスの領域に先駆け、中高生向けのキャリア教育用としてAIコーチングの提供に着手している。アバターにAIが搭載されており、クライアントの1週間前の行動計画を把握しているため、個別性のある対話ができる。

【会話例】

AI:前回は、進路について理科の先生に相談する行動計画だったよね。どうだった?

クライアント:先生に相談したら、広島大学に○○先生という方がいるそうなんだ。

AI:そうなんだ。それでどういう気づきがあったの?

このような形である。これまでのAIの言語処理はクライアントの問いに対して答えを提示するのみだったが、このサービスではAIの問いにクライアントが答え、それに対してさらにAIが問いを発し続ける。これを続けると人間の思考力は向上し、AIによってAIに負けない人材育成をすることが可能になる。この装置を使って時間や場所の制限なく、全ての人がAIコーチングを受けられる環境を整備したいと考えている。

【プレゼンテーション3】mitsucariを使った定量的面接手法

【発表者】

株式会社ミライセルフ

代表取締役CEO 表 孝憲氏

構造化面接でミスマッチを防ぐ

mitsucari(ミツカリ)は適性検査とAIを使って“構造化面接”を可能にし、面接でのミスマッチをなくすツールである。

構造化面接とは、必要な人材の要素とそれを聞き出すための質問を事前に準備して面接をする手法のこと。社風や価値観とのミスマッチを見極めることができるが、準備が大変なため、あまり広まっていない。しかしmitsucariを使えば、従来の10分の1の工数で構造化面接を行うことができる。特徴は次の2点。

①14項目7段階でチェックすべき人材の資質のポイントを整理できる:パーソナリティテストとキャリアテストで人柄を整理

②マッチ度合いや“ずれ”の範囲を把握できる:分析結果の画面にはマッチ度合いが表示され、マッチ度合いが低かった場合、どのポイントがどのくらいずれているかも確認できるようになっている

これらのテストの結果は面接のみならず、配属や評価、上司と部下の望ましい組み合わせ等、生産性向上にも使える。機械学習を用いることで、それらの組み合わせをシステムに学ばせていっている。我々はこうした価値観や人柄といった人の潜在的な、しかし行動に影響を与えるデータを集めることにより、面接や配属の質を向上したいと考えている。

【プレゼンテーション4】準グランプリ AIビジネスマッチングアプリ yenta

【発表者】

株式会社アトラエ

取締役CTO 岡 利幸氏

ビジネスパーソンマッチング

yentaはビジネスマッチングを促進するモバイルアプリである。登録すると、他のビジネスパーソン10人を人工知能が毎日レコメンドするので、その人に会ってみたければ右に、会いたくなければ左にスワイプすると、マッチング結果が届く。両想いになればメッセージを送り合い、実際に会って情報交換をするという仕組みで、6700社以上の企業に所属・出身の方が利用しており、累積60万件以上のマッチングが生まれている。

その裏側には175万人分のSNSでの行動データ、900万件以上のスワイプのデータ、実際に会った人による1万5000件以上の相互評価データなど、人間関係の縮図になるグラフデータが蓄積されている。それらを人工知能が解析し、人間関係や相性を理解してマッチングの精度を向上していく。実際にyentaで出会った人と一緒に起業した人も多く、上場企業同士の事業提携、出資、採用、独立、コミュニティーづくりが行われるなど、オープンイノベーションを加速させるプラットフォームになっている。

例えば私が「人工知能に詳しくなりたい」と思い、「人工知能」と検索すると、すでにマッチングしている868人の中から「38人が該当」と出る。この38人は私に既に「会いたい」と表明している方々なので連絡を取り、実際にランチなどで人工知能について聞く。すると私はすぐに人工知能に詳しくなり、ビジネスに活用することができる。

つまりyentaは、ほしい知性や経験を持った人材にいつでも会える「弱いつながり」のプラットフォームといえる。

あらゆるビジネスパーソンが知性のネットワークを保有する社会が実現できたら、一緒にプロジェクトを動かしたり、素晴らしい仲間と出会って採用や転職が生まれたり、挫折した時に尊敬する先輩に相談をしたりすることが可能になる。

働き方改革においては、日本全体を1つの会社と捉えて人事を考え、生きた知性をネットワーク化することで、生産性やクリエイティビティを高めることができるはずである。今後はこの「人や人間関係を理解して結びつける」という仕組みを、さまざまな社会問題に活用していきたいと考えている。

【プレゼンテーション5】準グランプリ GROW CERTIFICATION

【発表者】

Institution for a Global Society株式会社

代表取締役社長

福原正大氏

個人の能力と職種を定量化

GROW CERTIFICATION は、AIとビッグデータで労働流動性と人材教育の向上、教育投資の効率的な活性化をめざす、ジョブ能力証明書システムである。

例えば、ある人がデータサイエンティストになりたい場合、GROWCERTIFICATE上でまずその人の能力を可視化。同時にデータサイエンティストが持つ能力を分析した結果と、その人の適性をマッチングさせる。そこでPython言語(プログラミング言語の1つ)に関わる能力が不足していた場合、個人の学び方に合わせて学習方法を提供。スキルが一定段階に上がると、能力を持っていることを示す証明書を提出する、という仕組みである。

具体的には、以下の5つによってこれを実現する。

①個人の能力の徹底的な可視化

潜在的な能力に関しては、東京大学と連携して研究したテストで、デバイス上で回答する際の指の細かい動きのデータから分析する。

②個人のコンピテンシーを測る際は評価者の評価傾向をも分析

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