J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年10月号

巻頭インタビュー 私の人材教育論 基本の徹底と、ブレないDNAが 組織の成長と変化を支える

今年創業90 周年を迎えたスーパーマーケット、成城石井。
おいしさや品質にこだわった品揃えが、消費者の高い支持を集め、店舗数を着実に増やしている。
そのこだわりを実現するのが、調達から製造、物流まで、ほぼ自前で行う独自の仕組みであり、それを支える人材だ。
同社の人材育成方針について、原社長に聞いた。


原 昭彦(Akihiko Hara)氏
成城石井 代表取締役社長
生年月日 1967年9月23日
出身校 駒澤大学経営学部

主な経歴
1990年4月 成城石井 入社
2006年7月 営業本部商品部 部長
2007年1月 執行役員 営業本部
本部長 兼 商品部部長
2008年2月 執行役員 営業本部
本部長 兼 店舗運営部部長
2010年5月 取締役執行役員 営業本部 本部長
2010年9月 代表取締役社長
現在に至る

企業プロフィール
成城石井
1927年、東京都世田谷区成城にて食料品店として創業。1976 年、スーパーマーケットとして営業開始。「商品が生み出される全てのプロセスにこだわり、その結果開発された商品を提供することでお客様に喜んでいただくこと」を基本戦略とし、世の中の低価格路線とは一線を画す。近年は毎年10店舗のペースで出店しており、店舗数は150を超える。2014 年、ローソンの100%子会社となった。
資本金: 1億円、従業員数:5221名(内、社員955 名)(2016年12月現在)

インタビュー・文/増田忠英
写真/小林 淳

豊かな食生活を提案できる集団に

―貴社の経営理念と、理念を実現する人材の育成について、お考えをお聞かせください。

「食にこだわり、豊かな社会を創造する。」、これが成城石井の経営理念です。おいしさや品質にこだわった本物の味をお客様に提案するために、日本全国や世界中を歩き回り、独自に商品を開発し、お求めやすい価格で提供していくための努力を続けています。

そうした理念を実現する人材像を一言でいえば、「プライドとホスピタリティを持って、お客様のためにチームで仕事をし成果を上げられる人」です。もちろん、スーパーマーケットですから、お客様志向を持った人材が不可欠です。お客様に成城石井の価値を伝えると共に、豊かな食生活を提案できる集団をつくっていきたいと考えています。

そうした集団であり続けるために、2009年から、当社の経営理念や信条をまとめた「成城石井BASIC」という小冊子をパート・アルバイトも含めた全ての従業員に配布しています。常に携行し、日々の業務で判断に迷った時などに読み返し、会社の進む方向とベクトルを合わせてほしいと考えています。また、店舗での会議や朝礼・夕礼の際には、「成城石井BASIC」の内容に照らして、各自が取り組んでいることを発表するといった活用もしています。

現場では、日々予想外の出来事が起こります。マニュアルだけで全てを解決することはできません。その時々で自分で考え、判断するための基準となるのが「成城石井BASIC」なのです。

株主が変わっても軸はブラさない

─貴社の歴史を振り返ると、オーナー企業からスタートの後、4回株主が変わっています。

お客様からは、「大きな変化の中で、スタイルを変えずに成長できたのが不思議だ」とよく言われます。もともと私たちは、お客様の目線に立ち、ご要望に応えながら成長してきた会社です。しかし、株主がオーナー経営者から企業に交替した時に経営方針が大きく変わり、急激な多店舗展開を行うことになりました。人の育成が追いつかず、一時的に離職率も高まりました。商品へのこだわりも後回しになっていたかもしれません。結果としてお客様も離れてしまい、業績を著しく落とすという経験をしました。

その時に強く感じたのが、私たちにとって最も大切なのは、お客様に喜んでいただくことであり、何があってもそれを軸に据えていかなければならない、ということでした。株主が変わるたびに経営の方向性が変わるようでは、社員は不安を感じますし、お客様にも当然ご迷惑をおかけします。そこで、成城石井にとって大切な軸をブラさないために、2008年に作成したのが、「成城石井BASIC」だったのです。それ以来、株主が変わっても、方針は変わらずにやってきています。

当時は非常に厳しい時期でしたが、あの経験があったからこそ、組織として強くなることができたと思います。

─全国の店舗数は既に150店舗を突破しました。従業員数も増え続けています。

活気や勢いがあっていいのですが、一方で当社のルーツや、ここまで成長できた理由を知らない人も増えています。そこで私は今、できるだけ研修で話をしたり、社内報にメッセージを載せたりして、成城石井のDNAを伝えるように努めています。

小売業を取り巻く環境や、お客様の期待するサービスは刻々と変化しています。ずっと同じことをやり続けているだけでは、お客様の期待に応えることはできません。

しかし、だからといって私たちの大切にしている軸まで変えてしまったら、成城石井ではなくなってしまいます。私たちのDNAを正しく理解したうえで、変えていくこと、変えてはいけないことをしっかり見極め、イノベーションにチャレンジできる人材や組織風土をつくることが重要だと考えています。

強みは基本を徹底する実行力

─改めて、貴社の人材の強みは、どこにあるのでしょうか。

一番に挙げられるのは、現場での実行力です。どんなに優れた商品や商品知識、販売計画があっても、現場がきちんと動いていなかったら、意味がありません。

実行力の中でも、当社が最も重視しているのが、「挨拶」「欠品防止」「クリンリネス(いつも清潔に保たれていること)」「鮮度管理」の4つの基本の徹底です。これらを365日やり続けることが、お客様にリピートしていただき、成城石井のファンになっていただくための土台になります。

当たり前のことに思えるかもしれませんが、基本ができていなければ、どんな施策を打っても成功しません。そのため4つの基本は、店舗評価の中で大きなウエートを占めています。

一方、前年対比での業績評価はほとんどしていません。近隣の競合の出店・閉店など、現場の努力とは無関係な要素も反映されてしまうからです。

また、基本の徹底のために、「CSモニター調査」という覆面調査を定期的に行い、点数が低い場合は店舗会議を開いて原因を分析し、現場で対策を考えて実行します。その際にも「成城石井BASIC」が役立ちます。ただ、「挨拶をしなさい」と言われても、できるようにはなりません。なぜお客様に挨拶をしなければいけないのかを理解することが大切です。「成城石井BASIC」を開けば、その意味がしっかりと記載されています。

基本をコツコツとやり続ける実行力こそが、当社の人材の強みであり、それが成城石井の強みそのものにつながっているのだと思います。

―めまぐるしく変化する顧客ニーズに対応するには、どのような能力が必要と思われますか。

基本の徹底だけでなく、スピーディーな実行力が備わっていなければなりません。実践し、結果を素早く見て、すぐ次の行動に移る。このスピード感を重視しています。

そのために、経営会議は毎週開きます。まず、1週間でやるべきことを経営課題として打ち出し、優先順位をつける。これを受け、各現場は具体策を考えて実行。次の経営会議でその成果を検証します。一連のサイクルを52週、つまり年間を通して繰り返しています。高い成果が出た店舗は大いに賞賛し、現場のやる気を引き出すと共に、店舗間の競争意識も高めています。

以前は月次で行っていましたが、それでは世の中の変化のスピードに対応できません。正確な実績は月末にならないと出ませんが、週間単位で着地できる見込みの数値を出せば、ズレが出た時点で課題を見つけ、対策を立てることができます。

会社や部門を超えた交流を重視

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