IC インタビュー①事務スタッフ系 元祖フリーターとして培った経験をもとに、 ICとしてクライアントのビジネスをデザインしていく

「フリーター」という言葉は、最近は「ニート」とセットで使われ、「対策」を考えなければならない存在として認識されている。しかし「フリーター」が登場した当時は、「やりたいこと、実現したい夢のためにアルバイトをしている人たち」という定義があった。それが、その後のバブル経済の崩壊や長引く不況のなかで、いつの間にか“負け組”のレッテルが貼られるようになっている。
「フリーター」の名付け親である道下裕史氏は、2000 年に独立し、自らをエグゼクティブ・フリーターと名乗る。その道下氏に、「フリーター」としての現在の働き方と、「定職」を持たないという点では限りなく「フリーター」に近いIC の今後について話を伺った。
“棚卸し”と改名でICをスタート
道下さんは自らを「エグゼクティブ・フリーター」と名乗っておられますが、この名称はどのような経緯でお決めになったのですか。
道下
リクルートを退職する際、引き続きリクルートとは契約して仕事をすることになり、そのとき、どのような名刺をつくればいいのか迷いました。「契約社員」と名乗るのも変だし、「アドバイザー」というのも新しさを感じない。そこで、「フリーター」を世に送り出した者として自ら「フリーター」を名乗り、あとは若くはないこともあって「エグゼクティブ」としました(笑)。
それは半分冗談ですが、独立したときに、「会社を辞めるならウチの仕事を手伝ってよ」と言ってくださるお客様がいて、その方たちの多くが企業の経営者でした。なので、そういう方たちとお付き合いするためにも、「エグゼクティブ」という言葉を付けて、「エグゼクティブ・フリーター」と名乗ることにしたんです。
会社を辞めて独立しようと思ったそもそものきっかけは何だったのでしょうか?
道下
2000年というちょうどキリのよい年だったのと、かなり長い間組織に居て、これ以上居続けると若い人たちの邪魔になると思ったからです。本当はもう5 年早く辞める予定だったのですが、新規事業などを含め、当時手掛けていた案件が多かったので、時期を逸してしまいました。
独立すると決心したとき、独立のための準備としてはどのようなことをしましたか。
道下
まずは自分自身を見直してみました。会社の名前や会社内での肩書きを取ったときに、一体自分は何ができるのだろうかと。そして、できるものが何もないことに気づいて愕然としたんです。
いわゆる「スキルの棚卸し」のようなことをされたのですか。
道下
例えば、「原稿を書く」という仕事について、自分がどこまでできるかを考えてみました。多少は書けるけれど、それでメシが食えるか?
と自問してみると、そこまでではないとわかる。じゃあ、プランナーとしてなら食っていけるか?
いやそれでも食っていけない…と考えていって、残ったのが「プロデューサー」。これはとても便利な言葉で、これなら自分の強みやこれまでの経験を活かして食べていけるのではないかと思ったのです。
また、これまでお付き合いのあった方々をお1人ずつ思い浮かべて、この方は自分が「リクルートの道下」でなくなってもお付き合いしてくれるかどうかを考えてみました。また、その方々から社名や肩書きを外したとき、その方々とICの自分とがどうお付き合いできるかについても考えました。