第117回 バカな体と堅いアタマ、対話力の欠如が喧嘩を呼ぶ
「へえ、東京ってそんなに駅で喧嘩が多いんだ」
「まあ、もちろん路線によって少ないところもありますけどね。でも、夜酔っている連中だけじゃなくて、朝でもありますよ。肩が触れたり、なんだりで結構サラリーマンがやっていますよ。大体、中途半端な人達がいきがってやっていますけど。
格闘技や武道やっている人はやっぱりそんなことはやらないですね。怖さ知っているから。もっとも例外はありましたね、一度。私が目撃したのは新橋。明らかになんかやっているガタイのいい30代の兄さんがサラリーマンにフロントチョーク(立位のまま、相手の体を前屈みにさせ上から首を極める危険な技)をやっていたんで、『もう、そのぐらいでいいだろう』って両者の肩をポンと叩いてとめましたけど。
そう言えば、女性も多いですね。手は出していないけれど口論になるのは。」
「なんで、そんなになるの?こっち(京都・奈良)では電車でそんな人はあまり見ないなあ?」
「一つ確実に言えるのは、人の気配を読むのが下手になったことがあるでしょうね。これは老若男女問わず。スマホ見ているというのも、あるけど、ただボンヤリと歩いている人が本当に増えてきたし。あー、そう言えば、企業研修で体操じゃなくて、グループの机を動かしたり、場所替えの指示を出したときでさえ、体がスムーズに動かない人が目立ちますよ。
10年前に日経から出した本で対談した古武術家の甲野善紀さん(元巨人軍桑田投手のフォームを変えるアドバイスで有名。なんば走りや古武術の動きを介護に活かす活動などで知られる)がよく『日本人の体がバカになった』って言われてたけど、ホントですよ。」
「でも、ぶつかったりしただけだったらすぐに謝ればいいのに。」
「そうそう、そこなんですよ。咄嗟のことばが出ない。この前、企業の人事の人が『間違って足とかふんじゃった時に、謝ろうかどうか、一瞬考えちゃうんですよね。もし違ったらって』。だから思わずその人に言ったんです。『誤ってお詫びしても、なにも失わないでしょう?』って。その位、変な警戒心というかなんというか、人との距離の取り方が下手になっていますよ。」
「関西って、関東の人から聞くとよくことばが喧嘩しているみたいだって、言われるけど手は出さないですよ。『簀巻きにして川に放り込んでやる』とか言っても、本気でそう思う人はいないし。」
「その意味じゃ、野暮なんですよ。そして根深い悪循環なんですよ。自分の事しか考えない。視野狭窄に加えて、体が対応しない。雑談力も含めたソーシャルスキルが欠けているから言葉も咄嗟に出ない。だから、手が出る。しかも哀しいのは、その喧嘩を止めない。別に直接止めなくてもいいけど、誰かが大声で駅員さえ呼べばいいのに。かかわりあいたくない、というオーラ出して、見て見ぬふりをする人が多すぎます。」
以上、先月末に久しぶりに会えた京都方面在住の親戚との会話。どっちが私だって?それを聞いちゃ野暮でしょ。まあ、高度成長期が終わって、今や高度疑心暗鬼社会、しかも思考停止の相互不信社会が進展している。無論、傍観はしないよ。皆さんと止めてみせよう!