第99回 30名の高校生から学ぶグローバル人材育成のヒント - 「ヤング天城会議」から

日本IBMが、社会貢献活動の一環として提供している有識者会議の中の一つとして有名な「天城会議」。その高校生版とも言える「ヤング天城会議」に講師およびファシリテーターとして招かれた。緑に包まれた天城高原の標高820mの地点にある宿泊型研修所に集まったのは全国から選ばれた高校生30名。今回は彼等彼女達に「多様性のある世界で活躍するために必要な力とは何か」を考えてもらう、というのが趣旨だ。

2泊3日のプログラムの二日目を担当した私は、最初にその前日から彼等彼女達が準備していたグループ・プレゼンテーションをオブザーブする機会を得た。世界の中の日本の課題について、様々な角度から自分達の見解を発表する参加メンバーと的確な質問を投げかける聞き手側のやりとりを見ながら、そのレベルの高さに私は早くも感心させられた。

その後、私の担当するワークショップ、グローバルビジネス経験を持つIBMのスタッフメンバーとのパネルディスカッションと進めるにつれて、彼等彼女達から私は多くの学びと気づきをもらっていた。「そうだ!これだっ!」と何度も心の中で呟いていた。

全球化時代のグローバルビジネスでは、いつでも、どこでも、どんな人とでも仕事ができることが求められる。言い換えれば、外国人だろうが、日本人だろうが、初対面の相手と、必要に応じていち早くチームを立ち上げ、結果をださなければならない、ということだ。そのためには、専門知識やスキルも必要であるが、何にもまして、「相手と壁を作らない」意識、つまり、オープンマインドであることが必須だ。

ところが、構成員の均質性の高い日本企業の中で、取引先も固定化してくると多様性とは無縁の環境になる。その中で経験を積めば積むほど、グローバルビジネスに重要なこのオープンマインドの素養が育たない状況を生んでしまう。

しかし、ヤング天城会議に集まった高校生は、個人個人がどんどん自分の心の壁を乗り越えて短期間で何とも言えぬ素敵な一体感を作っていった。もちろん、周りの積極的なメンバーに圧倒されたり、躊躇している高校生もいた。それでも、確実に他のメンバーから刺激を受け、30名が確実に一つになりながら前に進んでいる実感を得た。5名ずつ、合計6チームに分け、IBMのスタッフメンバーがそのメンター役を行うなど細やかな対応があることも見逃せない。

自分を率直に表現することを押さえられてしまったり、変わる必要性を強く感じていても周りが変わらないので、どうしたらいいのだろうかと真剣に悩む高校生達の様子は、企業の中で変革を進めようとする大人たちと重なって見えた。ここに来るまでは、心が折れそうになっていたのが、他にも同じ問題意識を持っている仲間と語りながら勇気づけられていた。

「教育は未来をかえる」 あるチームが用意していたフリップチャートのメッセージが心にささった。

学校教育の様々な問題から国が直面している課題。でも、最後は個人が変わらなければなにも出来ない。高校生自身が「自分達が変わらなければ、何も変わらない!」と力強く宣言しながら励まし合っている姿に感動した。