第79回 若田光一さんに感動!
2003年の1月、私はある企業向けのリーダー研修のため、つくば市にいた。翌日からはじまるセッションに備えて、中華料理屋で腹ごしらえをしていた時のことだ。私の席の背後で快活な声で外国人と英語で流暢に会話をする声が聞こえてきた。その力強い声の持ち主の方へ目をやった時に、「若田さんでは?」と思った。
実は、若田さんとはヒューストンのNASAで1993年にお会いしていた。当時、私の居たコンサルティング会社がNASAと宇宙開発事業団のチーム開発を手伝っており、私もなんどかヒューストンに行き、若田さんもセッションの一部を体験して頂いたことがあった。もしかすると人違いかなと思ったが、場所柄、ほぼ間違いないだろうと、声をかけてみた。するとやはり、若田さんだった。10年前のことを思い出して頂き、その後、メールでご挨拶もさせてもらった。
ただ、その直後、2003年2月1日、地球に帰還するスペース・シャトル、コロンビア号の空中分解という事故が起こり、若田さんも急きょヒューストンに戻られた。
その後、若田さんの活躍ぶりは2009年の宇宙での長期滞在など読者の皆さんもよくご存知だろう。
その若田さんが、国際宇宙ステーションで他の乗組員を束ねる"船長"に就任、2013年、再び宇宙ステーションに長期滞在して、任務に着くという。欧米の宇宙飛行士以外では初めての快挙だ。先日12月5日、NHKで放映された「プロフェッショナル仕事の流儀」では若田さんに数カ月にわたる密着取材をおこなっただけあって、見応えがあった。
言うまでもなく、常に死と隣り合わせの宇宙。若田さんが日々の訓練で、常に肝に銘じているのが、危険やリスクがどこにあるのかを絶対に見逃さず、リスクと向きあいながら一歩一歩前に進むということだった。「宇宙飛行だけがミッションではなく、毎日がミッション」という若田さんのことばは心にささった。
番組の中で紹介されていたが、ランニングマシンやウエートトレーニングを行い、ロシアのトレーニングセンターでも特訓を積む若田さんの姿勢に画面に吸い込まれてしまった。しかも屈託のない笑顔。まだ見ていない方は是非、オンデマンドなどで視聴されることをすすめたい。
若田さんの表情、熱い語り口調、遠くを常に見続ける視線をテレビの画面で見ながら、私は、これは以前お会いした誰かに似ているな、と思った。柔道の山下泰裕さんだ。自分の夢を追いながら、世界で本当に活躍できるつきぬけた日本人のロールモデルの共通点を確認した思いがした。
「人の価値は、努力の量で決まる」若田さんのこのことばは忘れることはできない。