第70回 「研修講師」諸兄よ、猛省せよ!(その2)
人材育成に携わる者が考えるほどは、一般社員は勉強しようとしないし、教えたものは覚えていないし、身についていない、アンテナも高くしていない、という現実を直視せよ!
今年はじめからのテーマ。その原因はまず「ぬるい」研修講師にあり、というのは前回述べた。今回はその続きだ。ある人材開発担当者は「船川さんの言ってることも、もっともですが、うちがお願している●●先生からは、『しかし、学ぶ気のない人間まで相手をする必要があるんですか?』と言われていましたけど・・・」と述べた。同様に、研修を提供している側や講師が、「しっかりした受講者を選べない企業側の問題ではないですか?」とか「学ぶように参加者を動機づけるのは人材開発部門の仕事じゃないですか?」というようなコメントを言っているのを聞いたことがある。
これでは、研修講師や研修提供会社の言い訳になってしまう。確かに、モチベーションの高い人達だけを教えてたくなる気持ちはわからないことはない。私もかつて、客員教授もやったし、今でもMBAの授業を受け持っている。そこに来る受講生たちは、ほとんど会社派遣ではなく、自分のお金で学びに来ているのでモチベーションは高い。普段からよく勉強している人達と、サンデル教授と同じような熱い議論を行うのは楽しいものである。
私は民間のビジネススクールの先鞭をつけたグロービスがベンチャー企業として立ちあがって3年目に参画した。ちょうど、夜間のビジネススクールだけではなく、企業研修が増えてきた次期であり、多くの企業研修の営業、アテンド、そして講師といろいろな立場を経験した。中でも、他の外部講師が行う研修アテンドを経験できたことは多くのことを学んだ。
特に、痛感したのは、自ら進んで夜間のビジネススクールに来る人達と人事や人材開発部門が提供した企業研修に来る参加者のスタンスの違いだ。当たり前のことだが、夜間のビジネススクールの「人気講師」が、企業研修でそのまま高い評価を得るとは限らない。企業研修で評価が下がった時、あるいは受講者から厳しいコメントをもらった時に、「参加者のレベルが低い」と言った外部講師、契約講師も何人かいた。プロセスコンサルタントとして企業でのワークショップをシリコンバレーで散々やってきた私は、その頃から「講師の言い訳」と責任転嫁には厳しい目を向けていた。
企業研修、ワークショップに参加する方の中にも、学ぶ目的意識を明確に持ってくる人は確かにいる。しかし、残念ながらそうした参加者は少数派だ。長い残業が続く中、あるいは忙しい仕事のスケジュールをやりくりしながら参加する人達が、一体どれだけ人材開発担当者の想いを理解できるだろうか?ましてや、セミナー事務局の人が実は研修プログラムの内容をよく理解できていない、前任者からの引き継ぎをしっかり受けていない、というような状況だったら、どうなってしまうだのだろうか。
以上をふまえた上で、各企業に赴き、研修を行う講師は責任転嫁をすることなく、言い訳もすることもなく、受講者の学びを最大化することに取り組むべきだ。(つづく)