第64回 社内英語公用語論への決着:NHKで私が言いたかったこと(その1)
今月、9月3日、NHK総合TV、特報首都圏「社内公用語 英語になってもこわくない?」という番組で私のコメントが紹介された。実は、前々回、「グローバルなんて、一部のエリートのことなのですから、公共放送の我々としてはダメです。」という7年前のNHKと私のやりとりを記載していたが、その7月の終わりに取材依頼が来た。
もちろん、NHKのプロデューサーがその原稿を読んだ?というような話ではない。(読んでいません。ねんのため)理由は「楽天&ユニクロショック」、つまり、社内公用語を英語にするというこの二社の宣言がマスメディアの注目を集めたからだ。この後、「遅ればせながらわが社も」という会社、ビジネス特性上、「わが社は日本語が公用語」を宣言した会社、「一体うちはどうすればいいの?」と戸惑う社員と確かに、様々な波紋を呼んだのは皆さんも十分ご存知だろう。
さてこの番組では、世界で使われている英語は、英語は英語でもグローバルイングリッシュ、実はその「ネイティヴ・スピーカー」は我々であり、故に、気後れせず、発言すべし、という趣旨が紹介された。最も、この話も過去15年間、いろいろな所で言い続け、書き続けてきたことではあるが、興味のある方は是非、NHKオンデマンドで見て頂きたい。
さて、私の映像コメントでは放映されていなかったが、今回の取材に限らす、別の媒体や講演でも「英語が社内公用語についてどう思いますか?」という質問が増えてきたのでコメントしておこう。
「社内公用語は英語」とは(日本企業を前提に)「一人でも日本語がわからない人がいたら、他の誰もが英語を使い、日本語がわからない人が一人もいなかったら、日本語を使う」― この定義をおすすめしたい。
当たり前のことではあるが、「他の誰もが英語を使う」というのが鍵だ。今までは、国際ビジネスに従事し、英語が出来る人がいるような環境でも、いざ実際の会議やプロジェクトの中では「誰もが英語」ではなく「誰か(上手い人)が英語」であった。それを「誰もが英語」となると、日本人同士の会話も英語で「自然に」行うという意味だ。ここで言う、「自然に」とは英語のネイティヴスピーカーではない我々日本人でも気おくれすることなく、英語はあくまでもコミュニケーション・ツールであるという自覚のもとに会話が行われる状態だ。お互いの英語の発音の巧拙を競いあったり、いつの間にやら結局、一番上手い人が話してしまっている、という状況の話ではない。
前回紹介した、スイスのコーでのセッション参加した日本人受講者が「英語公用語」の環境のエピソードを語ってくれた。食事の時間、フランス語で話していたあるグループに、彼がそのテーブルに着いたところ、すぐに全員が自然にフランス語から英語に切り替えてくれた。彼はそのことに大変感銘を受けたと話してくれた。もちろん、多言語の世界に慣れ親しんできたヨーロッパ人だからこそ出来ることは否めないし、日本人から見たら、彼我の差を感じざるを得ないのも致し方ない。
ただ、「英語公用語」というチャレンジに今から真剣に取り組まなければならない時期にきたのも事実だ。その第一歩は、受験英語で培ってきた「正しい英語」の呪縛から自らを解放することだ。そうすると、本来のコミュニケーション・ツールとしての英語が見えてくる。そうすれば、「他の日本人が居ると英語が話しにくい。なんだかチェックされているみたいだから・・」というプレッシャーからも解放されるであろう。
それと、もう一つ。「英語ヒステリー」からの決別だ!これは次回に譲ろう。