第59回 中高年こそ学びなおせ

アルビン・トフラーは「21世紀の文盲とは、字の読み書きが出来ないことではない。 学び、学んだことをすて、そしてまた学ぶことが出来ない、つまり学習できないことである。」と述べている。 

(The illiterate of the 21st century will not be those who cannot read and write, but those who cannot learn, unlearn, and relearn.)

今、人材開発者の悩みのタネの一つは「社内の不良債権と化しつつある中高年対策」だ。つまり、「多異変な時代」の今、必要とされる知識、スキル、仕事のやり方を学んでこなかった中高年の再教育をどうするか、という問題だ。敢えて言うと、年齢は、40代半ばから50代前半、性別は男性。バブル期を含む高度成長期の最後の時期を経験した世代だ。彼らは先輩の団塊の世代とは違って、あと10年、15年は会社で働かなければならないのだ。団塊の世代は、21世紀ビジネススキルを身に付けなくとも、自分達の退職金はなんとか維持しながら現役を去っていける「逃げ切り世代」だ。ところが、今の中高年社員は逃げきれないのだ。

右肩上がりの成長期であれば、中高年社員は新たに学ばなくても、それまでに構築した社内ネットワークと長年の職務経験で、「巡航速度」で仕事をやっていればなんら支障は起きなかった。ところが、右肩上がりから右肩不透明な時代の中、多様性の高い環境の中で、知的付加価値を出さなければならない状況ではそうはいかない。自分が学んだ専門知識の壁を乗り越えて、技術革新や発見に目をむけながら、新興国も含む全球化のうねりの中で新たなパートナーとの共同作業を進めなければならない。そのためには、常にオープンマインドで、新たなものを学ぶ力が必須なのだ。ピラミッド組織の中であったら中間管理職は調整と報・連・相を繰り返していればよかったが、フラットな組織ではお互いのコミュニケーションの質が問われてくる。ロジカルスピーキングもダイアローグも必要だ。まさに、アルビン・トフラーが予見したように、今や我々は絶えず学習し続けなければならない。「多異変な時代」は工業化社会から知識社会、学習社会への移行期でもある。

ところが、「学びながら成長していく中高年」よりも「学べない中高年」があまりにも多い。「ロジカルに話せない。人の話を聞けない。上司から指示は部下へ丸投げ、あるいは思いつきで行動するためその火消しに奔走する若手社員。なまじ中途半端な経験があるため、自分のやり方に固執し、変革を受け入れない・・・」こんな話が後をたたない。

では、彼らに対してどうすべきか。まず最初に必要なのは、本メルマガでも再三指摘したように、時代の前提の大転換、つまりパラダイムシフトをしっかり理解してもらうことだ。その理解がしっかりできれば、さびついた感性、知性のアンテナをもう一度高めてもらい、そして自らのスキルアップに励んでもらうことが可能となる。「逃げ切れない」ではなく、「あきらめるにはまだ早い」というマインドシフトしてもらおう。「学ぶ」ことはその気になれば、何歳からでも可能なのだから。