第54回 企業研修提供者を精査せよ!

「サブプライムショックのおかげで研修バブルがはじけたことは、よかったのではないだろうか?」数ヶ月前、コンサルティングや企業研修を提供している仲間と話しをしている時に、私は敢えてそう述べた。「そんなことを言っていられる船川さんはいいかもしれないけれど大変ですよ。案件が激減したところも相当あるんですよっ!」と友人の一人は反応した。

「まさに、その通り!これから研修会社も淘汰されるべきでしょうね!」企業の人材開発責任者の方の発言だ。同様のコメントを複数企業で何度も聞いた。たしかに、この3-4年、研修バブルと言ってもいいような状況ではなかっただろうか?聞きなれないカタカナや英語略語のコンテンツを売り文句とする企業研修が増え、講師の質がどうも薄まってきているのではないだろうか、と述べる人材開発部門スタッフは少なくない。もちろん、本当に企業のニーズにこたえているプログラムもあるだろうが、自戒を込めて言うと、企業研修を提供する側は常に襟を正すべきだろう。

さて、この二週間で私が通常行っている企業研修以外に、「グローバル人材について語ってほしい」という講演が2回あった。このMLで何度かのべてきたように、「グローバル人材育成」に対する認識は今高まりを見せ、それに伴い、提供する側でも「グローバル人材育成」を全面に打ち出してきているところが増えてきている。「グローバル」のすそ野が広がってきたことは歓迎したいのだが、懸念もある。

「研修バブル」がはじけた後に、「グローバル研修バブル」が起きないだろうか?ということだ。提供側の実績、コンテンツの妥当性、講師の実績と実力は常にチェックしなければならないのだが、こと「グローバル」については「英語の煙幕」で誤魔化されやすいのも事実だ。そもそも、日本企業はコンサルタントや講師を甘やかしすぎる、ということは10年前からいろいろなところで述べてきた。「先生扱い」をして素朴な質問、疑問があっても聞かない、あるいは、参加者からの厳しいフィードバックを伝えない風土がいまだに残っている。そんな中で提供者側が外国人である場合は言うまでもなく、日本人でも多少の英語を使うと、研修を企画した側が感心したり、ただうなずいて聞いているだけ、という構図になりやすいのだ。

英語であれ、日本語であれ、提供側や講師に対しては遠慮なく質問を投げかけるべきだ。

具体的には、次の質問が効果的だ。

提供するコンテンツで明示されていなければ、講師に対して「出所」を聞く。

オリジナルでなければ、出所を明示しなければならないのは最低のマナー。

出所を明らかにできないような講師はintegrityを疑われても文句は言えないだろう。

「最近、読んだ本でおすすめできる本を3冊あげてください」と聞く。

その講師のアンテナの高さをチェックする

「最近、●●社が■■で成功したようですが、どうしてなんでしょうか?」というように、講師の思考力をチェックする

「あなたご自身が受講したセミナーで何かいいものありますか?」と聞いて、相手の学習態度をチェックする

提供する相手なら知っていなければならない人名を出して、感想を聞いてみる。

但し、ドラッカー、ポーターなどはダメ。リーダー論を語る講師なら、コッターではなく、例えば、ウォレン・ベニス、ラム・チャラン、ロザ・ベス・モスカンターあたりを聞いてみる。

以上、並べてみたが、ようするに企業研修を提供する側も受ける側も、「多異変な時代」は切磋琢磨を怠ってはいけない、それが私のメッセージだ。