第30回 グループシンクの罠に注意せよ!
今月は私の誕生月。11月の最後の日なので晩秋から初冬の足音が聞こえてくる時期だ。この頃になれば食べたくなるのは鍋料理。父は秋田の出身だったので、父が亡くなる前はよく、「きりたんぽ」も食べた。「これは特別な地鶏なんだ。」と言いながら、自慢げに素材を鍋に入れていた父を思い出す。
「あの頃の地鶏は本当の地鶏であってほしい」そんな話を例の偽装表示の事件を見ながら母と話していた。今年に入ってから、食品のごまかしが次々と明るみになってきた。肉、老舗の和菓子、「銘菓」、有名店とあとを絶たない。おそらく、明らかにされているのは氷山の一角で、マスコミに取り上げられていない闇は相当根深いものだろう。
発覚したケースに共通しているのは、「他社もやっているから、いいだろう。」という思考の依存だ。そして、典型的な「グループシンク(集団思考)の罠」が見られることだ。
集団思考の問題の兆候をアービン・ジャニスは次のように指摘している。
1)集団の力に幻想を抱き、リスクを楽観視する
2)集団のモラルは最初からあって当たり前という思いから、メンバーの意思決定について、モラルの側面を無視する傾向がある
3)自分たちの前提に疑問を投げかけるような情報や警告を軽視するように、つじつまあわせを集団的に行う
4)「敵」に対して、交渉をするには邪悪であるとか、とりあうには無能であるなどとステレオタイプ化する
5)疑念を表明したり、反論をすることは意味がないという感覚を醸成させる
6)「満場一致」に対する幻想を抱く
7)集団の行動に疑問を投げかけるメンバーに圧力をかけ、忠誠心の高いメンバーとは明白に違うことを示す
8)集団の合意決定事項の効果やモラルについての自己満足を打破するような情報に対して押さえ込んだり、検閲するメンバーがあらわれる
今から5年前、拙著「ビジネススクールで身につける思考力と対人力」の中でも「グループシンク」については紹介していたが、企業研修などでその箇所を読み上げて参加者と共有すると、「うちもまずいっすよー」とか「結構当てはまる」と言っていた企業もあった。さらには、あまりにも当てはまるせいか、空気が凍りついてしまったグループもあった。特に上記の3)の要件は、経営陣が指示をしていた不正事件では必ず見受けられる。
私が気になるのは、テレビのコメンテーターの中にこれら不正事件を「やはり、この厳しい時代なので、コストカットをせざるをえない」などと擁護したり、他責にして論点をすりかえる発言だ。つまり、メディア自体も集団思考の罠にとらわれていることがある。
確かに、競争は厳しくなり、コスト削減は常に求められる。また、賞味期限を過ぎても食べられるし、食べても問題ないものが多いのだろう。
しかし、それでも「看板に偽りあり」では違法行為であるし、ビジネスを行う資格はない。「グループシンクの罠」に注意しながら、他社やあやしげな経営陣に依存しないで、自分の頭で理を考えることが、今やどの企業、組織にも求められている。今月は私の誕生月。11月の最後の日なので晩秋から初冬の足音が聞こえてくる時期だ。この頃になれば食べたくなるのは鍋料理。父は秋田の出身だったので、父が亡くなる前はよく、「きりたんぽ」も食べた。「これは特別な地鶏なんだ。」と言いながら、自慢げに素材を鍋に入れていた父を思い出す。
「あの頃の地鶏は本当の地鶏であってほしい」そんな話を例の偽装表示の事件を見ながら母と話していた。今年に入ってから、食品のごまかしが次々と明るみになってきた。肉、老舗の和菓子、「銘菓」、有名店とあとを絶たない。おそらく、明らかにされているのは氷山の一角で、マスコミに取り上げられていない闇は相当根深いものだろう。
発覚したケースに共通しているのは、「他社もやっているから、いいだろう。」という思考の依存だ。そして、典型的な「グループシンク(集団思考)の罠」が見られることだ。
集団思考の問題の兆候をアービン・ジャニスは次のように指摘している。
1)集団の力に幻想を抱き、リスクを楽観視する
2)集団のモラルは最初からあって当たり前という思いから、メンバーの意思決定について、モラルの側面を無視する傾向がある
3)自分たちの前提に疑問を投げかけるような情報や警告を軽視するように、つじつまあわせを集団的に行う
4)「敵」に対して、交渉をするには邪悪であるとか、とりあうには無能であるなどとステレオタイプ化する
5)疑念を表明したり、反論をすることは意味がないという感覚を醸成させる
6)「満場一致」に対する幻想を抱く
7)集団の行動に疑問を投げかけるメンバーに圧力をかけ、忠誠心の高いメンバーとは明白に違うことを示す
8)集団の合意決定事項の効果やモラルについての自己満足を打破するような情報に対して押さえ込んだり、検閲するメンバーがあらわれる
今から5年前、拙著「ビジネススクールで身につける思考力と対人力」の中でも「グループシンク」については紹介していたが、企業研修などでその箇所を読み上げて参加者と共有すると、「うちもまずいっすよー」とか「結構当てはまる」と言っていた企業もあった。さらには、あまりにも当てはまるせいか、空気が凍りついてしまったグループもあった。特に上記の3)の要件は、経営陣が指示をしていた不正事件では必ず見受けられる。
私が気になるのは、テレビのコメンテーターの中にこれら不正事件を「やはり、この厳しい時代なので、コストカットをせざるをえない」などと擁護したり、他責にして論点をすりかえる発言だ。つまり、メディア自体も集団思考の罠にとらわれていることがある。
確かに、競争は厳しくなり、コスト削減は常に求められる。また、賞味期限を過ぎても食べられるし、食べても問題ないものが多いのだろう。
しかし、それでも「看板に偽りあり」では違法行為であるし、ビジネスを行う資格はない。「グループシンクの罠」に注意しながら、他社やあやしげな経営陣に依存しないで、自分の頭で理を考えることが、今やどの企業、組織にも求められている。