第24回 評論家三職種に要注意

前回、渡辺淳一氏の「鈍感力」についての辛口コメントは、多くの方から「スッキリしました!」、「ほんとにアレはひどいですよね」、「よくぞ言ってくれました」等など支持と賛同のフィードバックを頂いた。特に「ドメインエラー」については、「鈍感力」だけではなく、社会的な問題ではないかと懸念と憤りを示した人は少なくなかった。

そこで、今回は「ドメインエラー」を起こしやすい「ジャーナリスト」、「エコノミスト」、そして「コンサルタント」という「評論家三職種」へのクリティカルな目を向けたい。

この三業種に共通していることがある、それは誰でも名乗ることができる点だ。医者や弁護士とは大きくことなる。つまり、規制、資格が問われないために参入障壁がかぎりなく低いことだ。その中でもコンサルタントは最も低いといっていいだろう。定年退職した人がとりあえず「経営コンサルタント」になってしまう。「自称コンサルタント」という「評論家」が跋扈しやすい理由も理解できよう。

私はかなり前、日経産業新聞の紙面で「コンサルタントはいかがわしい商売であると思われても仕方がない」と述べた。真意は、「初期投資は少なく、規制や資格もいらないし、始めるための技術は口が動けばはじめられるという、参入障壁三点セットが限りなく低い業界であることを自覚せよ!よって、自分の専門分野を磨いて差別化せよ!反対にクライアント企業はコンサルタントを甘やかすな!」というのが趣旨であった。

今、また繰り返したい。コンサルタントと自ら名乗ることは誰にでもできるのだ。自戒をこめて言うなら、問うべきはそのコンサルタントが何を専門とし、どのような実績を残し、そして今提供できる付加価値は何かということだ。

さて、「ジャーナリスト」と「エコノミスト」はおそらく、コンサルタントより参入障壁は高いはずだ。「ジャーナリスト」なら文章を書けなければならないし(コンサルタントには不要という意味ではなく)、「エコノミスト」なら経済学に関する知識は当然求められるからだ。

ところが、前から不思議で仕方がないのは、「この人って、どうしてジャーナリストやエコノミストって名乗っていいの?」、と思う人があまりにも多すぎるのだ。ちょっと活字を書いている程度で、あるいはちょっとテレビに出ているとすぐに「ジャーナリスト」になってしまう。「エコノミスト」もしかり。金融機関に勤務していただけで「エコノミスト」になれると限らない。それでも、「評論家」としてお気楽なコメントをしている人が多すぎやしないか?ということを言いたい。これでは、「日本にはプロがいない」とか「お子チャマ社会」と言われても仕方がないだろう。

その根本的な原因は学問とくに、社会科学の分野の専攻については、あまりにも注意が払われない土壌があるのではないだろか。欧米では少なくとも「ジャーナリズム」を専攻していなければジャーナリストの道は歩めない。エコノミストなら経済学部出身、シンクタンク勤務経験がまず必要になる。もちろん、学歴だけで思考を止めてはいけない。

ところが日本では、上記のように、その人の専門分野に注意を払われることなく、誰でもなれるということだ。なかには、ちょっと前までの肩書きは「ジャーナリスト」だったのに、今度は「エコノミスト」や「コンサルタント」という具合に、この「評論家:三大職種」で都合のいいように成り代わっている人もいるくらいだ。

そのため、N=1、せいぜいN=2で全体を結論づけたり、直近バイアス、ハロー効果満載の文章やコメントを繰り返すのだ。せめて統計のイロハと論理思考ぐらいは最低学んでほしい、と思うのは私だけだろうか。

是非、この三大職種にはクリティカルな目を向けたい!再度、自戒をこめて・・・