第14回 ロジカルリスニング実践のコツ・その3場を読み、コンテンツを理解する
「一言だけ、言っておきたいんだけど、・・・・・・・・・・・・・コンサルって大嫌いなんだ。」
インタビューを依頼して、部屋に入ってきたクライアントのある社員は、こちら側の説明の後でこう述べた。それ以上は何も述べなかった。
さて、あなたならこの後、どういう対応をとるだろうか?前回はここで終ったところだ。
この場面をロールプレイで私のセミナー参加者に依頼すると、案外率直に「なぜですか?」と聞く人がいる。また、いきなり「とおっしゃいますと?」と、「『なぜ』と言わずになぜを聞くフレーズ」を使う人もいる。
文字での表現は伝わりにくいが、相手は「口をききたくない!」というボディランゲージを示しているのだ。この段階では「なぜ?」と聞くにはまだ早いのだ。
また、ときおり、「私も実は嫌いなんですよ」と答える人もいた。これでは表面的に相手に調子を合わせているように伝わり、この場面に登場するような方には余計に白々しく聞こえてしまうだろう。
答えはもちろん、ひとつではない。ご参考までにその時の私の対応を紹介する。まず相手の発言を受け止めることが基本だ。そして、あくまでも中立なスタンスが求められる。
私はちょっと間をおいて、
「いやーっ、……たしかに、そういわれる方って、……いらっしゃいますねー」と述べた。
まず、相手の発言を認めながらも、実は「コンサルアレルギーは決してあなただけではない」ということをほのめかしたわけだ。人間、同じような境遇にいる人がいる、つまり自分だけの「悲劇」ではないことがわかると、多少冷静に考えられるものだ。当然、普段セミナーや講演で話しているようなスピードでは話しさない。相手に合わせて、ゆったり、なおかつ静かなトーンで述べた。
そして、このセンテンスを終えてから、またゆっくりと
「ただ、今回私どもがこちらにお邪魔しましたのは……」
ともう一度イントロの自己紹介、インタビューの趣旨、インタビューで頂いた情報の扱いと位置づけを伝えた。すると、彼はやや身を乗り出して
「ん? そうするとおたくは■■社じゃないんだ?」と尋ねてきました。
もうおよそのストーリーは想像できるだろう。彼のコンサルタント・アレルギーを作った過去のトラウマ体験の一端が伺えたのだ。ただし、あくまでも相手に語ってもらわなければならない。ここもセミナーの中でロールプレイで行なうことがあるが、相手の発言に喜び勇んで「うちは違いますよ!」とか、中には「あの会社はひどいですよね!」とかこたえてしまった人もいた。これでは、相手の信頼は得られない。
私はたった一言、「ええ・・・」とだけ述べて相手の反応を待った。すると、
「あ、そうか。俺はまた■■社と思った。……だってあんたも知っているだろう、二年前に新しい社長が来てさ」
「二年前?」
「そう、それであの社長がリストラ始めて」
「リストラ」
「それで、うちの部なんかは……」
という具合に語り出してくれたのだ。
もちろん、ほかの対応方法も十分考えられる。ただ、こちらが場を読み、相手のことばをそのまま繰り返すリフレージングという相槌を使いながら共感を醸成したことで、当初非協力的だった方から次第に本音の情報を引き出すことができたのだ。実は彼はこのインタビューの後、発足されたタスクフォースのサブリーダーに立候補してくれた。コンサルアレルギーを持つということは自身の仕事に対する思い入れや問題意識もあるということだ。
このように、ロジカルリスニングは場を読みながらも、コンテンツを理解し、コンテンツを追いながら、場の流れをつくることが求められる。次回はロジカルリスニングの難易度について述べよう。