第13回 ロジカルリスニング実践のコツ・その2 前提を聞き出すには

発言者はいつも、論理的にわかりやすく話しているとは限らない。むしろ、前提は隠れたまま、論理が飛躍することは日常茶飯事。そのような環境の中でも発言の論旨、そして発言者の意図を聞き取るスキルをロジカルリスニングと名づけた。不毛な議論を避けて、かみ合う議論を展開するためのコアスキルだ。

今回はロジカルリスニングの実践のコツとして、相手の発言の前提を聞きだすヒントを紹介しよう。一言で言えば、相手のコンテンツ(発言内容)とコンテクスト(場、雰囲気、関係)の両方をよみとることだ。難易度が高くなるのは、相手がコミュニケーションをとることに協力的ではない場合だ。私の経験したケースで見てみよう。

コンサルタントがロジカルリスニングを発揮する場面の一つにインタビューがある。案件に関連する社員をスポンサー(経営トップ、企画、人事など)が選出し、一人40分前後話をしてもらうというセッティングだ。通常は小会議室をとってもらい、こちら側は二人で聞く(一人は書記)スタイルが一般的である。

さて、ある外資系企業でのインタビューでのことだ。その社員はぶっきらぼうに部屋に入ってきた。当然こちらは、立ち上がって挨拶をし、名刺を渡した。着席してから自己紹介、趣旨、守秘義務、協力依頼をするというイントロの話しをしている間、彼は終始、目を合わせることなく、文字通り「斜め」に座っていた。私が行う、プロセスコンサルティングの案件では珍しくない反応だ。ボディランゲージが全てを物語っている。「協力したくない!」。そんな彼の気持ちが態度にありありと現れていた。しかし、ここで熱くなってはいけない。私は冷静にイントロを終えて、最後にこう述べた。

「ということで、●●さんから是非、忌憚のないお話をお願いしたいわけです。」

私のセンテンスが終了してから、沈黙が続いた。恐らく10秒ほどだと思うが、こちらからすると、それ以上に長く感じた。まだ、こちらを見てくれていない。ようやく、彼は息をゆっくり吸い、その息を吐きながら述べた。

「一言だけ、言っておきたいんだけど、・・・・・・・・・・・・・コンサルって大嫌いなんだ。」

それ以上は何も述べなかった。

さて、あなたならこの後、どういう対応を取るだろうか?

A: 率直に「なぜですか?」と聞く

B: 「わかりました。ご協力いただけなければ結構です。」と断ってスポンサーに他の人を頼む

C: 「実は私もこんなことやりたくないんですよ。」と言って共感を得る

D: 「他のコンサルタントはともかく、私はあなたに不利益になるようなことはしません」と述べて協力してもらう

E: 以上のどれでもない

さて、いかがだろうか?相手がコンサルタントに対して不信感を持っていることは明らかだ。もちろん、その原因を探らなければならない。しかし場を読むとするなら、Aのように直接的には聞いてはいけない場面であることも理解できよう。実は新人コンサルタントの最も犯しがちな間違いがこれ。もし、「なぜですか?」と聞けば、「お前がいるからだろう!」とか、「まだわからんのか!」などと一括されて終わりだ。それを突破口にと考えられないこともないが、下手すると言い合いになってしまう。「なぜ?」を率直に聞ける場合とそうでない場合があるが、この場合は率直には聞けない状況だといえる。

Bは論外。インタビューはスポンサー好みの「良い子」の社員では意味がない。Cでは卑屈になっているとか、おもねるような印象を与えて、信頼は得られない。信頼されない点ではDも同様だ。では、どうしたらよいだろうか?答えは、次回。ぜひじっくり考えてほしい。