第6回 理系と文系のバカの壁をのりこえろ!

前回、「アタマのいい人」ブームに隠れた「文部科学省の21世紀の罪」について述べた。今回もう一つの問題、「理系と文系のバカの壁」について触れたい。

海外で自己紹介をすると「What is your major?」(専攻はなんですか?)と聞かれることがある。そこで経済、法律、生物学、社会学、コンピューターサイエンス、電子工学など専攻領域の会話が始まる。

日本では、専攻よりもむしろ「理系ですか?文系ですか?」と聞かれる場合が多い。あるいは、専攻を答えた後で「あー、文系なんですね。理系の方かと思いました」と言われることもある。つまり、専攻よりも、理系か文系かという区分が重要な意味合いを持つわけだ。実際、企業も事務系、技術系枠によって採用時に学生を二分している。

分けること自体は悪くないのだが、この二分法がもたらす負の意味合いがある。「理系です」と言うと、「論理思考は出来るが、コミュニケーションは苦手でも仕方がない」、一方「文系です」というと「話術には長けているが、データー分析は出来なくてもよい」というステレオタイプに基づいた居直りだ。

これが放置されたままであると、思考の偏りが増長される。その結果、国語読解力が低いために、顧客ニーズを捉えられないSEや、論理思考が弱い営業社員、数字の読めない人事スタッフなどなど自ら仕事の機会を狭めたり、スキルを伸ばせない社員が生まれてしまうのだ。

私自身も、文系出身、しかも全く勉強していなかった者として、かつてこのバカの壁の中で居直っていた時期もあった。発想を変えたのは15年前ビジネススクールに行ったころからだ。特に大学を出て10年以上たってから学んだ統計学はおもしろいと思った。また、コンサルタントになってからはクライアントも含めて理系の人と一緒に仕事をする機会が増えた。そこで、彼らからいろいろな話を聞きながら、「理系思考」の発想を学んだ。原理原則、再現性、一貫性、検証可能性を意識的に考えることは多少は身についてくるものだ。

逆に理系出身の読者の方にはおすすめしたい本がある。私も懇意にさせていただいている大滝令嗣氏の近著「理系思考 エンジニアだからできること」だ。この本は私のような文系出身者も大変参考になるし、理系出身の方には大きな励みになる。

「文系だから」「理系だから」と言って、居直ることもあきらめることはない。理系と文系のバカの壁を乗り越えると様々な可能性を広げることができるのだ。