第29回 「対人思考力」という考え方

ワークショップ型のセッションを年間100回以上行い、2000人以上の意見のやりとり(インタラクション)を見ながらさまざまな発見があり、それをこれまで少なからずモデル化してきた。

「対人思考力のスキルマップ」もそうしてできたモデルの一つだ。私は以前から「思考力」と「対人力」は車の両輪同様、「どちらか一方」ではなく、両方なければ仕事はできないと主張してきた。

しかし、根強く残るのは「思考力が高ければ対人力は不要」、「いや、対人力があれば、思考力は不要」という、お互い相容れないスタンスだ。

そこで、両者を統合して「対人思考力」という概念をつくってみた。そのスキルマップが次の4ステップだ。

【ステップ1】自分の頭の中でものごとを組み立てることができる

「思考力」とは「自分の頭の中で組み立てる力」である。つまりステップ1は個人の思考力を発揮することを意味する。この中には論理思考(クリティカル思考)も創造思考(クリエィティブ思考)も包含される。

また「ものごと」を「ビジョン」、「戦略」、そして「問題の構造」に置き換えてみると明らかなように、構想力、戦略立案能力や、問題解決能力も求められているのだ。来週のスケジュールを組み立てることは用意だが、その先がどこまでできるかが課題だ。

【ステップ2】自分の頭の中で組み立てたことを相手にわかりやすく伝えることができる

これは対人力の中核とも言えるコミュニケーション能力のことだ。ステップ1で組み立てたことを、わかりやすく伝えること。これも「相手」を、上司、部下から、事業部全員という具合に増やしていくと困難になる。

また、数だけではなく、外国人、あるいは「ステップ1で組み立てたプランに反対している人」と置きかえるとハードルは高くなる。多様な相手に「わかりやすく」伝えることは決して容易なことではない。

【ステップ3】相手の話を聞きながら、相手の頭の中で組み立てことを理解することができる

コミュニケーション能力は発信と受信の双方向の作業である。それにもかかわらず、ステップ2で満足してしまう人がいる。

ステップ2ができていても、相手の考えをしっかり理解できるとは保障できない。相手がわかりやすく話してくれるとは限らないからだ。また、こちらに相手の話を理解するために必要な知識ない場合がある。つまり、相手の考えを論理的に汲み取るロジカルリスニングが必要なのだ。

【ステップ4】複数の人間とそれぞれの考えを交換、共有しながら、問題解決や新たな考えの共創することができる。

普段の会議やタスクフォースの作業を考えてみれば、わかりやすいだろう。ステップ4ができて初めて、ビジネスの知的付加価値が生まれるのだ。

それがコラボレーションのステージだ。それは個人の対人思考力だけではなく、チームの対人思考力が求められる。

対人思考力については、このメールマガジンが届くころあたりから書店に並ぶ予定の「図解 ビジネスの現場で活きる思考力と対人力」(日本経済新聞社)をご覧下さい。(※)

※「図解 ビジネスの現場で活きる思考力と対人力」(日本経済新聞社)は2004年11月に発行されております!