第26回 グローバルリーダーに求められるもの(その2)
グローバルビジネスリーダーが直面するビジネス課題は決してたやすいものではない。例えば、日本本社にいながらも、アジアパシフィック十数カ国のマーケティングを担当し、新製品の同時発売を推進するブランドマネジャー。米国本社と欧州にある開発拠点と調整を取りながら、日本のR&D部門の変革をすすめるチームリーダー。製品サイクルの短いハイテク業界のなかで、買収した米国企業の統合を進めるインテグレーションマネジャー。恐らく読者の周りにも、このようなアサインメントを持つ人はいることだろう。
そのなかで与えられたミッションを全うし、より困難なアサインメントに挑戦する人と、責務の重さにつぶされてしまう人がいる。彼らを分ける要因は何か?そんなことを考えながら、日本、欧米、そしてアジアで多くのビジネスパーソンを観察しながら、グローバルリーダーの7つの要件(Global Leader’s 7 Competencies)をまとめた。
1.グローバルマインドセットを持ちえるか
2.ビジョンを描き、明確にコミュニケーションを取れるか
3.経験則を超えた概念を身につけられるか
4.異なるバックグランドを持つメンバーを動機づけ、チームとしてまとめられるか
5.自分の持っているフィルター(思考の枠)を自覚できるか
6.木を見ながら森を見れるか(システム思考を持っているか)
7.自分と組織に学習サイクル(Reflecting-Thinking-Deciding-Doing)を組み込めるか
これをまとめたのは98年ごろだ。6年たった今見ると、個々の要件は目新しいものでもなく、当たり前に写るだろう。しかし、鍵はこれらをどこまで自分のなかで深め、実践し得るかである。
前回、グローバルビジネスリーダー(GBL)になるためには、社内で実務経験を積み、英語力やビジネススキルを磨くだけでは届かない、何かが存在すると述べた。GBLのプログラムを参加者とともに進めながら気がついたのは、グローバルリーダーの要件を知識やスキルとして身につけることだけではまだまだ不十分だということだ。
その先にあるのはWisdom-based、つまり知恵のレベルまで各自のなかで内在化し、昇華されたステージであると考える。本連載の2回目で、「知識の有効寿命はいまや、どんどん短くなっているが、知恵は長生きする」と述べた。知識、スキルは伝えることが可能であるが、知恵はそうはいかない。知恵は醸成させながら、身についていくものであるからだ。
今回のGBLプログラムでさまざまな人との対話を行い、そのなかで、グローバルリーダーの知識とスキルをWisdom-basedで感じさせる人たちと出会うことができた。
彼らに共通しているのは、もう一つ、自らの確固たるアイデンティティだ。グローバルマインドセットとは、日本人にとっては日本人としての意識の枠組み、つまりジャパニーズマインドセットを拡大することである。多様性を受け入れられるように、意識の地平線を広げていくわけだ。そのためには、自分がしっかり立っていなければならない。それが自らの軸、アイデンティティであることに気がついた。
では、どうしたらアイデンティティを深め、知識から知恵レベルまで高めることができるのだろうか? これは次回、考察したい。